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【P+D文学講座#3】う◯こと文学の幸福な関係・前編

「う◯こと文学」……下ネタかと思いきや、この二つにはユニークが繋がりがありました。様々な文学作品に顔を出すう◯この解釈方法について講義で解説します!

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<講座概要>

【P+D文学講座】は、P+D MAGAZINE編集部の加勢 犬(かせい けん)先生が、23年間文学作品にはほとんど馴染みが無いというM野くんでも分かりやすいように、文学作品を楽しく読むアングルを提示するコラムです。

第三回となる今回はなんと、「う◯こと文学」がテーマ!一体、どんな講座になるのでしょうか‥‥‥?

<過去記事から読む>
【P+D文学講座】スポーツと近代詩 #1
【P+D文学講座】スポーツと近代詩 #2

 

犬: 突然ですが、「米」「異なる」と書いてなんと読むでしょうか?

 

答えはもちろん

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どうですか皆さん?「ご飯を食べると、うんこになって出てくる」そんな人体の神秘に対する純粋な驚きが、この漢字一文字に集約されているとは思いませんか?

 

さて、三回目となるP+D文学講座、今回もアシスタントを務めてくれるのは‥‥‥

 

M野:うん野でーす!!

 

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犬:出たな、パーティーグッズ野郎

 

M野: ひどい言いようだな。っていうか、大体なんでこんな屈辱的な格好をさせられなきゃいけないんですか?

 

犬: うんこを巡る文学者たちの飽くなき探究が今回のテーマだからさ。それに、その日サロ顔によく似合ってるよ、その「帽子」。

 

M野: (いつか、ぜったい、殴る‥‥‥)

 

 

うんこをめぐる言葉たち

M野: 先生、高尚なテーマを扱う文学に、「うんこ」なんて下ネタ、本当に関係あるんですか?

 

犬: たしかに、排泄欲は人間としてもっとも低次元な欲求で、文学を可能にするような表現欲はより高次の欲求だと考えられがちだ。しかし、本当にそうだろうか? 考え方によっては言葉もまた排泄物だとは言えないかい?

 

M野: ??

 

犬:インターネットではよく、煽りコメントや誹謗中傷の類を「便所の落書き」と呼んだりするよね? 建設的なコミュニケーションでなく、腹にたまった鬱憤を晴らしたいがために言葉を費やすこと。これを言語を用いたコミュニケーションが排泄化しているようなケースとして捉えるこもできると思う。

 

M野: でもそれって「2ちゃ●ねる」だとか、一部のネットユーザーの間での話ですよね? 文学とは関係ないように思います。

 

犬: ふふふ。ならば、これを読んでみてもらえるかな? ポール・オースターという現代アメリカ文学を代表する作家の『幽霊たち』という小説からの一節なんだけど、アメリカの古典文学を代表する詩人ウォルト・ホイットマンの部屋に排泄物の入った「おまる」が置かれていて、それが「大脳」を連想させるというくだりに続く記述だ。

脳味噌とはらわた、人間の内部。我々はいつも、作品をよりよく理解するにはその作家の内部に入り込まねばならない、とか何とか言っている。だがいざその内部なるものを目のあたりにしてみると、べつに大したものは何もない。

『幽霊たち』柴田元幸訳より

犬: なぜ「大脳」と「うんこ」が重ね合わされるのだろうか。文学者がひねり出したものが「作品」だからか? それとも言葉とはそもそも思考の搾りかすだからか? いやいや、実はこの一節には「文学」を取り囲む時代状況が言い表されているというのが僕の考えでね。

というのも、高度資本主義社会に突入した20世紀末のアメリカでは、「天才作家」という神話化されたイメージも、その作品群も、とっくのとうに消費されつくしていたんだね。「消費する(=consume)」とは、つまり「むさぼり食う」ということでもある。「文学」がペロリとたいらげられた後に、何が残る‥‥‥? それはでっかいでっかい「糞」じゃあないか。

 

M野: (何言ってんだこいつ‥‥‥)
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犬:あらら、あまりピンとこない? それじゃあ、もっとポピュラーな作品として、谷川俊太郎の「うんこ」という詩を読んでみよう。

 

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M野: ははは。一瞬、「うんこ」っていうワードの連発っぷりに「ガキか!」って思いましたけど、リズムがあって楽しい詩ですね。

 

犬: まさに、様々なアングルからうんこを連呼するこの手法によって、「うんこの遍在性」が表現されていると僕は感じるな。

 

M野: へんざいせい?

 

犬: ありとあらゆるうんこが、ありとあらゆる場所にあって、それは自然のサイクルとも繋がりをもっている‥‥‥そんな当たり前のことを、絵本を読むよりも、図鑑を読むよりも、はるかに強いビジュアルイメージを喚起しながら伝えている詩だね。

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M野: 確かに、元気があって健康的な詩ですよね。

 

犬: そう、健康なこと、快活なことが何と言っても一番のポイントだ。排泄をめぐるあれこれは世間一般からは汚いものとして忌み嫌われたり、遠ざけられてしまうけど、「うんこよ きょうも げんきに でてこい」と呼びかけることで、排泄もまたかけがえのない〈生〉のサイクルの一部だよ!って言われた気にならないかい?

 

M野: そういや昨日、こんなにでっかい‥‥

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犬:その話はいいや。

 

(次ページに続く)

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