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名作広告のキャッチコピーに、“口説き文句”の作法を学ぶ【文学恋愛講座#4】

文学から恋愛を紐解く連載、「文学恋愛講座」。第4回は、1980年代~2010年代の広告の“名作キャッチコピー”を教科書に、“口説き文句”の作法を学んでいきます!

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結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです。

今年の春、結婚情報誌「ゼクシィ」のテレビCMのこんなキャッチコピーが、SNSを中心に話題になりました。

結婚を後押しするはずのゼクシィが、「結婚しなくても幸せになれる」と言いきってしまう潔さ。そして、それでもなお「あなたと結婚したい」と思える人がいる素晴らしさ。独身という選択も決して否定しない、2017年の時代感覚を色濃く反映させたキャッチコピーに、久々にグッときたという人も多いのではないでしょうか。

広告の中のキャッチコピーがただの“宣伝文句”に過ぎなかったのは、50年以上前の話。いまやキャッチコピーは、商品やサービスを魅力的に見せ、「ちょっといいかも」と思わせる、不特定多数に宛てた“ラブレター”のような役割を果たしているのです。

文学から恋愛を紐解く連載、「文学恋愛講座」。第4回のテーマはズバリ、“キャッチコピーに学ぶ口説き文句の作法”。古今東西の魅力的なキャッチコピーをお手本に、とっておきの異性の “口説き方”を教えます!

 
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まずは簡単におさらい。キャッチコピーが“宣伝文句”から“ラブレター”になったのって、いつ?

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本題の前に。冒頭でも述べたとおり、キャッチコピーは本来、単なる商品の“宣伝文句”に過ぎませんでした。それがどのようにして“ラブレター”へと変貌を遂げたのか、まずは時代背景とともに簡単におさらいしてみましょう。

もともとは商品・サービスのメリットや個性を訴えるための文言だったキャッチコピーが、PRの枠を飛び越え、時代の空気感を伝えたり、人々の思いを代弁する役割を担うようになったのは1970年代のこと。

高度経済成長期まっただ中の1960年代、日本企業は舶来品に負けない品質の商品を生み出すことに躍起になり、「大きさ」や「丈夫さ」を前面に打ち出して商品の宣伝を行っていました。
当時を象徴するキャッチフレーズが、従来の商品よりもひと回り大きいサイズをアピールした、エールチョコの「大きいことは いいことだ」(森永製菓/1967年)。このストレートすぎるコピーには、まだまだ“口説き文句”の気配は見られません。

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その後、日本企業の品質競争は激化の一途をたどり、1970年代前半には、どの商品・サービスを利用しても品質にはさほど差がないという状況が生まれます。
人々の価値観も、大量生産・大量消費を美徳としていた時代から一転して、“個性”や“自分らしさ”を重視するように。モノが売れるためには、その商品・サービスならではの“独自性”、言うなればキャラ立ちが必要だったのです。

「いい/悪い」で商品を判断する時代から、「好き/嫌い」で判断する時代へ。キャッチコピーは徐々に、売るモノのメリットだけを語るのではなく、人の心をくすぐり、「好き」と思わせるような表現へと変貌を遂げていきました。
特に1980年代に突入すると、空前のコピーライターブームのもとで、キャッチコピーの歴史に残る印象的なフレーズが次々と生まれるように。

こうして、キャッチコピーは単なる宣伝文句を飛び越え、とっておきの口説き文句を伝える“ラブレター”の役割を果たすようになったのです。
それではここからは実際に、古今東西の名作キャッチコピーをお手本に、“口説き”のテクニックを学んでいきましょう!

【テクニック①】それって好きってことだよね? “行間”を読ませよう!

「好きな人には好きって言わずに会いたいって言うでしょ。会いたい人には会いたいって言わずにごはん行きません? って言うでしょ。(中略)言葉と気持ちは違うの!」

これは、今年の1月からTBS系で放映され話題を呼んだテレビドラマ『カルテット』(脚本:坂元裕二)の中のセリフ。言葉を額面どおりに捉える登場人物に対し、同居人が“行間”を読むべきだと諭すシーンでのひと言です。

肝心なことを言わず、“行間”を読ませることで「もしかしたら私のこと……?」と思わせるのは口説き文句の基礎中の基礎。この“行間”テクニックを使った日本でもっとも有名なキャッチコピーは、

キミが好きだと言うかわりに、シャッターを押した。
(オリンパス商事/福田恭夫/1980年)

でしょう。好きな人を前にすると、ついついカメラのシャッターを何度も押したくなってしまう気持ちには誰しも覚えがあるはず。

気付いて欲しくて髪を切りすぎた。
(マツヤレディス/門田陽/1998年)

一方こちらは、かつて福岡にあったファッションビル「マツヤレディス」のキャッチコピー。「気付いて欲しい」相手は当然、好きな人です。「雰囲気変わった?」というひと言を好きな人に言ってもらいたいがために、「髪を切りすぎ」てしまう乙女心の健気さをコミカルに表現しています。

これと似たテクニックが使われているのが、ファッションビル「ルミネ」のこんなキャッチコピー。

試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。
(ルミネ/尾形真理子/2008年)

服を選ぶときに、好きな人をついつい思い出してしまう女性はきっと多いはず。
このコピーが起用されたのは、ルミネの屋外広告。ルミネは2008年以降、若手コピーライターの尾形真理子と写真家の蜷川実花のコンビでシーズンビジュアル広告を作り続け、若者から絶大な支持を得ています。

また、“好きな人”を別の表現で言い換えるキャッチコピーとしては、こんな、とびきりロマンチックなものも。

目を閉じても見える人。
(1991年/眞木準/伊勢丹)

……こんなコピーを応用して、「服選んでて思い出しちゃった。」「昨日、夢に出てきたよ。」なんて異性に言われたら、ちょっとドキドキしませんか?

【テクニック②】“よくあるフレーズ”に、もうひと工夫してみよう

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続いては、よくあるフレーズにちょっぴりスパイスをきかせて、記憶に残る言葉に仕立て上げるというテクニック。
たとえば、

あなたなんか大好きです。
(西武百貨店/吉田早苗/1988年)

というキャッチコピー。「あなたが大好きです。」ならばなんてことのないフレーズですが、普通ならば「嫌い」に続く「あなたなんか」という言葉を選ぶことで、直後に続く「大好き」をグッと魅力的なものにしています。

この、“よくあるフレーズ”の組み合わせによって新しい言葉を生み出す名手こそ、1980年代のコピーライターブームを牽引した糸井重里
「くうねるあそぶ。」(日産自動車/1988年)「不思議、大好き。」(西武百貨店/1981年)に代表される糸井のキャッチコピーは、どれも平易な言葉同士の組み合わせでありながら、たったひと言で受け手をワクワクさせる魅力を持っています。

そんな糸井が手がけたキャッチフレーズの中でも、イチオシの“口説き文句”がこちら。

僕の君は世界一。
(西武百貨店/1980年)

わたしはあなたを予約したい。
(西武百貨店/1987年)

前者は「君は世界一」というよくあるフレーズに「僕の」というひと言を添えることで、後者は「予約したい」という言葉の目的語を「あなた」にすることで、ドキッとするようなコピーに仕上がっています。

【テクニック③】たまには直球も大事。“どストレート”に愛を伝えよう

行間を読ませて、言葉以上の意味を想像させる。月並みなフレーズをアレンジして意外性で攻める……。そんなテクニックも大人なら隠し持っていたいところですが、いざとなったら結局、ストレートな言葉に惹かれるという方も多いのでは。
広告の世界でも、コピーライターブームが巻き起こった1980年代半ばには、テクニックを駆使した、ひねりにひねった表現が大流行しました。そんな中、

ベンザエースを買ってください。
(武田薬品工業/仲畑貴志/1985年)

というど直球で人々を驚かせたのが、「ベンザエース」テレビCMのキャッチコピー。このコピーを手がけた仲畑貴志はのちに、

日本の広告表現技術が飛躍的に向上する中で、完成度の高い広告表現をうそっぽく感じだしていました。

と語っています。技巧的な表現は格好いいけれど、「なんかうそっぽい」とも思わえてしまう諸刃の剣。時にはやはり、直球を投げる勇気も持っておきたいところです。

さよならしたばかりなのに、また、君に会いたくなりました。
(ファミリーマート/牧野雄一/1986年)

寒いから、二人でいよう。
(サントリー/魚住勉/1982年)

……これらのキャッチコピーは、言うなればどストレート。こんなことを面と向かって言われたら恥ずかしくなってしまいそうですが、それでもちょっと嬉しい、と感じる人は少なくないはず。
極めつけは、プロポーズでも使えそうなこんなフレーズ。

ごめん。もう、本命しか、いらない。
(パルコ/一倉宏/1993年)

ぼくが、一生の間に会える、ひとにぎりの人の中に、あなたがいました。
(サントリー/岩崎俊一/1986年)

たまには思いきり素直に、「きみが本命だよ」と伝えるのも素敵です。

おわりに――キャッチコピーは、口説き文句の宝庫。

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ここまで見てきたキャッチコピーの中には、ちょっとアレンジすればそのままLINEで送れそうな気軽なものから 、一世一代のプロポーズのときに使いたい、という壮大なものまでありました。
時代が移り変われど、広告のキャッチコピーは常に、口説き文句の宝庫です。今回ご紹介したとびきりのキャッチコピーのテクニックを使って、意中の人を口説いてみてはいかがでしょうか?

 
 
※参考文献
『コピーライター、書く語りき。コピーがひもとく日本の50年』

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