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五七五七七に萌えをぶっこめ!「#BL短歌」が広げる腐女子の世界。

腐女子×短歌=BL短歌!Twitterを中心に花開いた「萌え」の新ジャンル、BL短歌について、短歌誌『共有結晶』同人でもある文学研究者・岩川ありささんにお話を伺いました。

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ハッシュタグは、「舞台」や「装置」

— ボーイズラブの世界もまた、オーソドックスな「ショタ萌え」(※1)から、近頃ですと「お坊さん萌え」にいたるまで、ジャンル自体が細分化されていますよね。BL短歌の題材として、人気のゲームやアニメ作品が取り込まれていくという過程は初期からあった流れでしょうか?

岩川: 当初からそのようにして詠んでいた人は少なからずいたと思うんですよね。「○○と××」といったように、好きなキャラクターや人物の組み合わせをあげて、それに対して「詞書(ことばがき)」(※2)的に設定を当てたうえで、二人の関係を詠むみたいな。

(※1)「ショタ萌え」‥‥少年キャラクターに対する萌えの感情のこと。
(※2)「詞書(ことばがき)」‥‥短歌そのものの冒頭に付記することにより、短歌の理解の橋渡しとなるような文のこと。

— そういう意味では、「#BL短歌」というハッシュタグの存在も、詞書に相当するようなものだと感じています。

岩川: まさに、「#BL短歌」というハッシュタグは、短歌で詠われている情景にたいする「舞台」や「装置」のようなもので、「このタグの上に乗っているものは、すべてボーイズラブとして解釈できるのか!」という気づきを与えてくれるものだと思っています。それが付いているだけで、前提をすべて説明できているというのがすごいところだと。

さらにBL短歌のサブジャンルとして、「#刀剣短歌」や「#黒バス短歌」、「#おそ松短歌」といったようなハッシュタグが派生していて、それが詞書のように設定を読み込む補助線の役割を果たしています。

 

規範から逸れる表現

— たしかに、BL短歌には「独特の距離感」という特徴がありつつ、状況説明がなければボーイズラブのことを歌っているとは気づかない読者も多いかもしれませんね。

岩川: それは、短歌というジャンルの制約でもありますが、同時にキャラクター同士の関係性を解釈する際に生じるバイアスや先入観のせいでもあると思っています。これは『共有結晶』同人の穂崎円さんが、「たとえば、「アイ」について」(「つきのこども/あぶく。」)という文章の中で書いていることなのですが、翻訳において、「I」と「you」という言葉をどれくらいのバリエーションで訳せるかということを考えたときに、日本語だとどうしても男女の恋愛関係に想像力が限定されてしまいがちだと。

つまり、何もいわなければ、「ああ、これって(異性愛の)男女についての表現なのね」というような規範的な理解をされてしまう現状があるけれども、言葉のバリエーションをフルに稼働させれば、今よりもはるかに解釈や創作の幅を広げていくことができるんだよ、というメッセージですね。穂崎さんの指摘は、言葉を用いたに創作物一般にまであてはめることができる、重要な指摘だと思います。

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岩川: また、「#BL短歌」というハッシュタグの話に戻れば、このタグはこれまでの「やおい・BL」(※)の歴史をすべて負っているといってよいかもしれません。これは『共有結晶』第2号に参加されている照井セイさんが書いておられることなのですが、竹宮惠子、萩尾望都、山岸凉子ら、少女マンガの黄金時代を築いた「24年組」の表現には、女性たちの欲望を少年に託して描くという側面がありましたが、腐女子の欲望をボーイズラブに託したBL短歌もまた、「わたし」と「彼ら」が出会う場所をつくっているのです。
(※)「やおい」‥‥男性同性愛を題材にした漫画や小説、またはそれらを愛好する人たちの俗称。

Twitterでは、ハッシュタグを通じて、このキャラクターにはこういう萌えパターンがあるとか、このキャラクター同士の関係はどうなのだろうかということを想像する腐女子のコミュニティーが、それぞれの解釈を通じて集まることができる。これは非常に大きいと思います。

— 例えばどんなことを想像するのでしょうか?

岩川: これは私のエピソードになりますが、とにかく「黒子のバスケ」が好きで、なかでも伊月さん・森山さん・黛さんという三人を中心としたカップリングにきゅんきゅんするんです。

その黛さんが京都に住んでいるので、2015年には聖地巡礼を兼ねて京都までいって、成人式の人混みでごった返す京都市勧業館の姿をこっそりと遠くから見てきたんです。黛さんと赤司さま(※)がその式に出ているという設定で、想像力を働かせながら見届けたんです。それで、その後やむにやまれぬ気持ちから短歌を詠みました。
(※)「黛さんと赤司さま」‥‥‥漫画「黒子のバスケ」の人気キャラクター。この二人のカップリングは「黛赤」と呼ばれる。

— すごい(笑)原作者も、自分のキャラクターがそこまで愛されていると知れば本望でしょうね。

 

(次ページに続く)

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