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【社会派推理小説作家】水上勉のオススメ作品を紹介

貧困から寺に預けられ、様々な職業を転々としたのち作家デビューしたという経歴を持つ水上勉。その生い立ちと、推理小説への傾倒から、社会派推理小説家として確固たる地位を築きました。晩年まで実に多くの作品を発表した水上勉の、代表作をご紹介します。

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飢餓海峡

飢餓海峡_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/410114124X

戦後の混乱期、貧困から脱却するため殺しまで行いながら、社会的地位を築いていった主人公。地位を達成したとき再会した、殺人犯の過去を知る酌婦の存在により、捨てたはずの過去のしがらみが彼に迫り始めます。戦後の日本人が味わった苦悩、悲哀を劇的な作品として描き出し、高い評価を得ました。ミステリーとしても人間ドラマとしても重厚であり、映画化や舞台化もされた代表作です。

樽見京一郎は京都の僻村に生まれた。父と早く死に別れて母と二人、貧困のどん底であえぎながら必死で這い上がってきた男だ。その彼が、食品会社の社長となり、教育委員まで務める社会的名士に成り上がるためには、いくつかの残虐な殺人を犯さねばならなかった……。

五番町夕霧楼

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売春防止法まで日本に存在した遊廓の1つ、五番町遊廓。家族を養うため五番町遊廓に勤める少女と、幼なじみである青年僧との悲恋を描いた傑作が本作品です。この作品も数回にわたり映画化、テレビドラマ化され、広く人気を得ました。水上勉自身の体験と、金閣寺放火事件という実在の事件を組み合わせた本作品は、三島由紀夫『金閣寺』のアンサー作品とも言われており、フィクションでありながら胸に迫るリアリティを持ちあわせており、寺院の世界の実態や、貧困にあえぐ人々の生活を肌で感じることができます。

夕子の夕霧楼での生活ぶりがあわれであればあるほど、その恋ははかなく美しい。静かな京都の町に、その悲恋に終りを告げるかのごとく国宝金閣寺は燃える。水上文学はここに見事開花。

雁の寺・越前竹人形

雁の寺・越前竹人形_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101141037

第45回直木賞を受賞した『雁の寺』では、禅寺の住職と内妻、小坊主の3人の人間関係を通して、小坊主である少年が抱く情念や孤独を鮮烈に描き出しました。住職や内妻への秘められた感情、鬱屈とした社会情勢の中で、小坊主は衝撃的なラストへと行動を移します。また『越前竹人形』では、竹細工師とその妻のはかない関係が描写され、悲哀を一身に背負った水上勉独特の女性像を確立しました。いずれの作品も、人間の孤独や寂しさを巧みに表現した傑作です。

少年僧の孤独と凄惨な情念のたぎりを描いて、直木賞に輝く「雁の寺」、哀しみを全身に秘めた独特の女性像をうちたてた「越前竹人形」。

櫻守

櫻守_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101141096

植木職人である男性の生涯を綴った、叙情的な作品です。戦前から戦後を生きた純朴な職人の姿を、詩的で情感豊かな文章で表す本作品は、人間の優しさや厳しさを真摯に伝える名作です。生命を感じさせる桜の木の描写からは、水上勉の桜に対する敬意や熱意がひしひしと伝わり、日本的な美を体現する作品でもあります。ノスタルジックでありながら、語られる人間の徳は一切古びることなく、現代人の私たちの教えになります。

丹波の山奥に大工の倅として生れ、若くして京の植木屋に奉公、以来、四十八歳でその生涯を終えるまで、ひたむきに桜を愛し、桜を守り育てることに情熱を傾けつくした庭師弥吉。その真情と面目を、滅びゆく自然への深い哀惜の念とともに、なつかしく美しい言葉で綴り上げた感動の名作『櫻守』

秋夜

秋夜_書影

水上勉の自伝的小説で、世田谷区松原を舞台に交錯する男女の人生が描かれます。20代で同棲した女性、失踪した妻、消息が分からなくなった長男。捨てたはずの過去が、同じ空間に押し寄せ主人公にまとわりつく様が、まるで亡霊のように語られます。他に収録されている作品も水上勉の故郷である福井を題材にしているものが多く、円熟した私小説、エッセイとして読める作品集です。

或る日、生き別れた長男から、彼が経営するホールの祝賀会の案内状が届く。会場は世田谷区松原という。この地には、地縁という不分明な力で、度々磁石のように吸い寄せられてきた。

最後に

水上勉のおすすめ小説5選は如何でしたか?
今回紹介した『秋夜』はP+D BOOKSで紙と電子の書籍で発売中です。
ためし読みもこちらからチェックできますので、是非水上勉の作品を手にとってみてください。

2016年11月11日発行!

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