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【『青天を衝け』放送中! 】渋沢栄一を知ることのできる書籍4選

2024年には新一万円札の顔となることでも注目されている、“日本の資本主義の父”、渋沢栄一。その人となりや功績を詳しく知ることのできるおすすめの書籍を、4作品ご紹介します。

2021年2月から放送がスタートした吉沢亮主演のNHK大河ドラマ、『青天を衝け』。その主人公・渋沢栄一は“日本の資本主義の父”と呼ばれ、2024年には新一万円札の顔となることでも注目を浴びています。

しかし、日本初の銀行を設立した人、として歴史の教科書で名前は目にしたけれど、実際に渋沢がどのような人物かはよく知らない──という方は多いのではないでしょうか? 今回は、ドラマと合わせて“資本主義の父”の姿をより詳しく知ることができる、渋沢栄一にまつわる書籍をご紹介します。

『現代語訳 論語と算盤』


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4480065350/

『論語と算盤』は、渋沢栄一本人による講演の口述をまとめ、1916年に刊行された談話集です。生涯のうちに、実業家として第一国立銀行(現・みずほ銀行)や東京海上火災を始めとする約480の企業の設立・運営に携わったほか、日本赤十字社を始めとする、600近くの社会事業にも関わっていた渋沢。彼の信じられないほどのバイタリティの源にあったのは、“論語と算盤”というモットーでした。

「論語」とは道徳・倫理の象徴で、「算盤」とは利潤追求を意味します。つまり、道徳と利潤を調和させ、道義を伴ったビジネスをおこなうべきだ、そうしない限り社会の発展は望めない──と渋沢は考えていたのです。

人というのは往々にして、その仕事が自分の利害には関係のない他人事だったり、儲かっても自分が幸せにならず、損をしても不幸せにならなかったりすれば、その事業に全力で取り組もうとしない。ところが自分の仕事であれば、この事業を発展させたいと思い、実際に成長させていく。

と渋沢は説きます。本書は『論語と算盤』をわかりやすく現代語訳としてまとめた1冊ですが、訳者である守屋淳は、いまの時代にあらためて渋沢の思想を知る意義について、

昨今の日本を考えてみると、その「働き方」や「経営に対する考え方」は、グローバル化の影響もあって実に多様化している。「金で買えないモノはない」「利益至上主義」から「企業の社会的責任を重視せよ」「持続可能性」までさまざまな価値観が錯綜し、マスコミから経営者、一般社員からアルバイトまでその軋轢の中で右往左往せざるを得ない状況がある。そんななかで、われわれ日本人が、「渋沢栄一」という原点に帰ることは、今、大きな意味があると筆者は信じている。

と語っています。企業も個人も社会的責任が問われているいまの時代にこそ、ビジネスの原点に立ち返らせてくれる『論語と算盤』は読まれるべき1冊です。

『雨夜譚 渋沢栄一自伝』


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B08KSYVZ9T/

『雨夜譚 渋沢栄一自伝』は、タイトルの通り、渋沢本人がかつて門弟たちに夜な夜な語ったという半生を筆記した自伝です。攘夷派の志士から徳川家の家臣になり、その後官僚から実業家へと転身した、幕末~明治期に至るまでの渋沢の怒涛の生きざまが、実に活き活きと綴られています。

1840年、埼玉県深谷市で農家を営む裕福な家庭に生まれた渋沢。青年時代から優れた商才を持っていた渋沢は、彼が百姓の身分であるというだけで傲慢な態度を隠そうともしない領主や代官たちに不快感を覚え、そのような人物が高い役職に就いている限り、幕府は早々に衰亡するだろう──と予感するようになります。渋沢は幕府の没落を見越した上で、当時仕えていた一橋家に藩札の発行を始めとするさまざまな政策を提案し、経済的自立を促します。彼が、先見の明と実業家としての手腕を若いときからすでに持ち合わせていたことをよく表したエピソードです。

本書には渋沢の生い立ちから30代半ば頃までのできごとが綴られていますが、その決して長くはない年月のなかでさえ、彼の人生がいかに激動のものであったかがよくわかるはずです。渋沢はさまざまな立場・職業へと転身を重ねましたが、常にその根幹にあったのは、『論語と算盤』にも通じる“真ごころ”でした。

おのれ別に人にすぐれし才芸あるにあらねど、ただこの年月、一つの真ごころをもて、万ずの事にあたりつれば、かの一信万軍に敵すの古諺の如く、何事につけても、さのみ難きを覚えず、何わざをとりても、さばかり破れはとらざりき。そのなし得たる跡につきても、めでたきふしこそなけれ、心に恥じ身に疾しき事とては秋毫の末もあらず。

自分はすぐれた芸は持っていないものの、どの年代においても“真ごころ”を持ちすべての事業に当たってきたことは誇れる──。謙遜に満ちた言葉ですが、渋沢の本心であることは間違いないでしょう。彼の野心に満ちた半生と、ぶれることのない芯を知ることのできる貴重な1冊です。

『小説 渋沢栄一』


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B01LANOSB2/

『小説 渋沢栄一』は、織田信長を題材とした『下天は夢か』など、歴史小説のベストセラーを多数著した津本陽による長編小説です。渋沢の生涯を描いた書籍は数多くありますが、本書は、膨大な資料をもとにその解説を交えつつ話を進めていく津本らしいスタイルで、渋沢の人となりが伝わってくるようなエピソードや彼の功績が克明に描かれています。

作中では、“論語と算盤”や“真ごころ”といった言葉に代表される渋沢の社会貢献意識はもちろんですが、それだけでなく、何事につけても中途半端なことが許せない、彼のやや短気かつ行動的な一面にもスポットが当てられています。

栄一は自分の記憶にはないが、母のえい(栄)に抱かれていたごく幼い頃、まだおむつをあてていた二歳ぐらいのときに、ふしぎなことに物事をきちんと片づけねば気が納まらず、うるさいほどとがめだてたという。
女中、作男などが座敷に出入りして、障子を半分ほど開けたままにしておくのを見ると、まわらぬ口で「あけろ、あけろ」と騒ぎたてる。(中略)
母の乳房にすがり、風車をまわして遊ぶ栄一は、客の出入りするとき、母の膝から眺めていて、
「また障子をしめずにいった」
と叱りつけるようにいう。まえより成長してきたので、よく口がまわる。(中略)
栄一が成人したのち母はいった。
「お前はなんでも中途半端にしておくのが嫌いな子だったねえ。開けるなら、全部開けておく、閉めるなら閉めておくのがよいというのだよ」

思わずくすりと笑ってしまうような、こんな微笑ましいエピソードからも、渋沢の人物像がよく伝わってきます。『青天を衝け』で渋沢のキャラクターの虜になったという方には特におすすめしたい、彼の人間らしい魅力がわかる1冊です。

『雄気堂々』


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B00BIXNKJ6/

『雄気堂々』は、『硫黄島に死す』、『官僚たちの夏』といった経済小説・歴史小説の名作を数多く著した城山三郎による、渋沢栄一を主人公とした長編小説です。1982年には『雄気堂々 若き日の渋沢栄一』として、NHKの時代劇ドラマ化もされています。

本書は、渋沢が妻の千代と婚礼を挙げた日から千代と死別するまでの年月を通じて、彼の半生を描きます。渋沢本人の魅力はもちろん、幕末・明治の激動の時代を渋沢とともに生き抜いた、大久保利通や西郷隆盛、大隈重信、伊藤博文といった人物の人となりもよく伝わってきます。

特に面白いのは、明治維新後、静岡で地域産業の新興のために奔走していた渋沢を、大隈重信が新政府へとスカウトするエピソード。大隈に

新政府のやろうとしていることは、すべて知識も経験もないことばかり。何から手をつけてよいかわからぬのは、きみだけではない。誰もが、わからん。わからん者が智慧を出し合い、これから相談してやって行こうとしている。つまり、われわれみんなが八百万の神々なのだ。君も、その神々の中の一柱として迎えた。

若い八百万の神々が集まって、新しい国をつくっていくのだ

と口説き落とされた渋沢は、「若い八百万の神々」の一員として、政府高官としてのキャリアを新たにスタートするのです。時代が動く瞬間を垣間見られるような、胸の熱くなる一節です。

また、渋沢は幕臣から大蔵省の官僚、やがて実業家へとダイナミックな転身を重ねてきた人物ですが、かつて世話になった人物への恩義は常に忘れないことでも知られていました。

栄一は恩人に対する報恩をいつまでも続けた。徳川慶喜に対してはいうまでもないが、一橋家用人平岡の遺族に対しても、すでに孫子の代になり、過去のことは忘れられて「なぜ渋沢さんに、こんなに親切にされるかわからぬ」と、相手が首をかしげるような年まで続けた。

といった何気ない話からも、彼のキャラクターが伝わってきます。渋沢が青年時代から愛唱した、堂々とした雄気は天をも貫くものだ──という意味の「雄気堂々、斗牛を貫く」という詩を体現しているかのような生き方を知ることのできる、魅力的な1冊です。

おわりに

リーマンショック、そして新型コロナウイルスの世界的な流行を受け、私たちはあらためて立ち止まり、全世界で加速し続けてきた資本主義といよいよ向き合わなければならない時代を迎えています。

渋沢栄一は、名だたる実業家や社会活動家の多くが“原点”としてその名前を挙げる人物です。『青天を衝け』を機に彼の生きざまや理念に興味を抱いたという方はもちろん、そのビジネスマインドの源泉を知りたいという方も、ぜひ今回ご紹介した4冊の本に手を伸ばしてみてください。

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