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【澁澤龍彦のオススメ作品】エロスや幻想…人間の本質に迫る

澁澤龍彦(1928年-1987年)は、西洋の文化、歴史について深い見識を持ち、フランス文学の翻訳や教科書に載らない歴史の裏側を描いたエッセイなどで名を馳せました。晩年にはエロスや幻想、倒錯といった人間の本質的な一面を美しい文体で描いた小説群も発表し、幻想的な独特の世界観で現在も人気の高い作家です。今回は澁澤龍彦のオススメ作品5選をご紹介します。

shibusawa

サド裁判

サド裁判_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4329020564

渋澤龍彦関連作品の中でも特に有名なのが『悪徳の栄え・続』です。悪徳の栄えは、父の破産を機に水商売の道に落ちた少女が、性欲と悪逆の限りを尽くした人生を描いた、18世紀のフランス人思想家マルキ・ド・サドの著作で、サド研究で有名な澁澤龍彦が翻訳を手がけました。この作品は作中で描かれている性的表現や可虐性が大きな問題になり、渋澤龍彦と出版社はわいせつ物陳列罪などの罪で裁判にかけられます。法廷では芸術性とわいせつ性の境界について興味深い議論が交わされ、その裁判の様子を克明に描いたのが『サド裁判』です。澁澤作品全体に通じる思想を感じさせる一冊です。

サド裁判は、ワイセツか芸術かといった低次の論争のレベルを超えて、思想の根源的自由の擁護として闘われた

快楽主義の哲学

快楽主義の哲学_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4167140039

「曖昧な幸福論におぼれることなく快楽主義であれ」と澁澤龍彦が持論を展開するエッセイ集です。小説や翻訳作品で見られるような、重厚で荘厳な雰囲気の文体とはかけ離れ、軽い読み物としてやわらかめの言葉でつづられています。この作品では、幸福を求めるよりも快楽を求めるべき、快楽を得るためにはどうすればよいか、快楽主義を貫きとおした過去の偉人達についてなど、快楽主義とは何かということから、快楽主義に至るまでの具体的な方法論にまで及んでいます。澁澤作品の世界観を補完する意味でも一読の価値ありです。

人生に目的などありはしない―すべてはここから始まる。曖昧な幸福に期待をつないで自分を騙すべからず。求むべきは、今、この一瞬の確かな快楽のみ。流行を追わず、一匹狼も辞さず、世間の誤解も恐れず、精神の貴族たれ。人並みの凡庸でなく孤高の異端たれ。時を隔ててますます新しい渋沢龍彦の煽動的人生論。

高丘親王航海記

高丘親王航海記_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4167140020

『高丘親王航海記』は、幻想的な世界観で描かれた澁澤龍彦の小説作品です。主人公である高丘親王は平安時代に実在したとされる僧侶で、史実においては晩年仏教修行のため中国へ渡り、天竺を目指して旅立ち消息を絶ったとされます。作中では、幼年期から天竺への憧れを親から吹き込まれた高岳親王がエクゾティシズム(異国趣味)に没頭します。天竺への旅の中、現実にはあり得ない犬頭人の国や鳥の下半身をした女などが現れる幻想に耽るうち、病床に伏せて親王が考えたこととは…。澁澤龍彦の遺作となった、人の持つ好奇心を深く描いた作品です。

貞観七(865)年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ向った。幼時から父平城帝の寵姫藤原薬子に天竺への夢を吹きこまれた親王は、エクゾティシズムの徒と化していたのだ。鳥の下半身をした女、犬頭人の国など、怪奇と幻想の世界を遍歴した親王が、旅に病んで考えたことは…。遺作となった読売文学賞受賞作。

マルジナリア

マルジナリア_書影

「マルジナリア」とは本の余白を表す言葉ですが、澁澤龍彦がまとめたのは余白に記された書き込みについてです。博識で知られる澁澤龍彦は、読書の際に欄外の余白にメモを残していました。作品に対して鋭く思考する澁澤龍彦の一言は、物事への本質へと深く切り込んできます。作中には著名な映画に対する考察やほかの作家についての言及など多岐に渡った「マルジナリア」が収録されています。本当のインテリジェンスとは何かを感じさせるエッセイ集です。

強靭な思考力と該博の知識による、マルジナリア(欄外の余白に嵌め込まれた書き込み)の絢爛たる鏤刻の小宇宙・―エドガー・ポーのひそみにならい書き継がれた多彩な断章の集積が、いま異色の読書ノートとして顕現する卓抜なエッセイ集。

サド復活

サド復活_書影

マルキ・ド・サド研究の第一人者として、サドの思想を様々な角度から紹介していき、他の著名な科学者、思想家、哲学者などが記した著作などを通して、美しさや自由、テロや暴力などへの独自の解釈を書き記したエッセイ集です。サドの生涯をまとめた小論やサドの文学論なども、澁澤龍彦らしい独特な表現で描かれています。自身のエッセイ集として初めて出版した本作は、1959年という時代に対して思想の現在性を問うた、実に過激な一冊です。

マルキ・ド・サドの思想を縦横に紹介しつつ、フーリエ、マルクス、トロツキー、ブルトン、バタイユなどの精読を通して、テロル、暴力、自由、美、ユートピアなどについて独自の考察を開示し、自らの文学的位相を確然と宣言した記念碑的なエッセイ8篇。

最後に

澁澤龍彦のオススメ作品は如何でしたか?
エロスとサディズムの世界を日本に紹介し、高い評価を得た澁澤。彼の独特な世界を是非堪能してみてください。
今回紹介した『マルジナリア』『サド復活』に加え、物と観念が交錯するアラベスクの世界を綴った『玩物草紙』はP+D BOOKSにて紙と電子の書籍で発売されています。
ためし読みも公開されていますので、是非チェックしてみてください。

『マルジナリア』のためし読みはこちらから
『サド復活』のためし読みはこちらから

玩物草子_書影
『玩物草紙』のためし読みはこちらから

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