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【西洋文化も登場】辻邦生のオススメ作品を紹介!

仏文科で学びパリでの生活経験もあった辻邦生は、文学だけでなく美術や演劇、映画にも造詣の深い人物でした。長年複数の大学で教鞭をとり、亡くなる直前まで執筆活動をしていた、熱意と精力あふれる辻邦生。そんな彼の代表作をご紹介します。

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夏の砦

夏の砦_書影

主人公は、1枚のタピスリーに魅入られヨーロッパに留学した織物工芸家の女性。ある夏の日、友人と共にヨットに乗ったまま消息不明になってしまった彼女の手記をもとに、生と死、愛や美といったテーマが深く掘り下げられていきます。手記によってつながる過去と現在、そして日本とヨーロッパ。幻想的な非現実感がありながら、主人公の生きた過酷な現実に徹底的に向き合った作品は、読む者の共感やおののきを呼ぶ一冊になっています。

織物工芸に打ち込み、一枚のタピスリに魅惑されてヨーロッパに留学した支倉冬子は、ある夏の日、北欧の孤島に、ヨット旅行に出かけたまま突然消息を絶ってしまう。彼女が残した手記を辿りながら、荒涼たる孤独の中、日本と西欧、過去と現在、過酷な現実と美的世界を行きつ戻りつ、生と死と愛の不安を極限まで掘り下げた清冽な作品。

廻廊にて

廻廊にて_書影

辻邦生の美術への造詣があふれだす、初期の名作長編です。寡作の画家であった亡命ロシア人のマーシャ。彼女の生涯には、かつて出会った少女との愛情、成就しなかった結婚、芸術の苦しみ、生の孤独といった影が絶えずついて回りました。短命の女流画家の生涯を手紙や手記からたどる伝記風の小説として構成した作品であり、芸術や生死といった辻邦生のテーマを、端正な文章と美しい筆致で掘り下げた傑作です。

異例の才能を持ちながら埋もれていった亡命ロシア人女流作家マリア・ヴァシレウスカヤ(マーシャ)の内的彷徨を描く辻邦生の処女長編作。

安土往還記

安土往還記_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101068011

舞台は戦国時代の日本。宣教師を送り届けるために来日した外国の船員を語り手とし、織田信長の生や栄華を描く大作です。外国人から見る「シニョーレ」織田信長は、純粋にこの世の道理や理想を追求し、自らを律して行動する強い意志をもった人物。異国の目を取り入れることで、これまでの歴史小説とは異なる解釈で信長をとらえています。また手記を翻訳したような文体も、リアリティを感じさせながら日本語としての美しさが輝く名文の連続です。

争乱渦巻く戦国時代、宣教師を送りとどけるために渡来した外国の船員を語り手とし、争乱のさ中にあって、純粋にこの世の道理を求め、自己に課した掟に一貫して忠実であろうとする“尾張の大殿(シニョーレ)”織田信長の心と行動を描く。ゆたかな想像力と抑制のきいたストイックな文体で信長一代の栄華を鮮やかに定着させ、生の高貴さを追究した長編。

十二の肖像画による十二の物語

十二の肖像画による十二の物語_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4569823599

ダ・ヴィンチやレンブラント、デューラーら名画家が残した12枚の肖像画。美しい絵画に秘められた物語を、辻邦生ならではの想像力と洞察力で綴った短編集です。中世ヨーロッパの街の空気をふんだんに含んだ各短編は、辻邦生によるフィクションの物語にも関わらず、登場する人々の息吹を感じさせるものになっています。美術好きはもちろんのこと、ヨーロッパや絵画に詳しくなくても没頭できる、人間ドラマとして完成された作品群です。

肖像画の名品に秘められた人間ドラマを作家ならではの想像力が描き出す。辻邦生の隠れた傑作短篇集。

春の戴冠

春の戴冠_書影
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4122050162

古典学者の主人公が語る、友人ボッティチェリの人生。中世のフィレンツェの情景や変動のもとで、ボッティチェリや周囲の人々が織りなす栄華と文化が濃密に描かれ、永遠の美とは、芸術とは何かという壮大なテーマへと結実していきます。激動する社会情勢と同時に、緻密な心理描写が連なっていくからこそ、単なる歴史物語では終わらず人間の本質そのものを探究する深みが生まれている、辻邦生の代表作です。

メディチ家の恩顧のもと、祭りに賑い、楽しげなはずむような気分に覆われた花の盛りのフィオレンツァ。「私」と幼なじみのサンドロ(のちのボッティチェルリ)は、この日々が過ぎゆく人生の春であることに、まだ気が付いていなかった―壮大にして流麗な歴史絵巻。

最後に

辻邦生のオススメ作品は如何でしたか?
芸術にも造詣の深い辻ならではの作品が多数あります。P+D BOOKSでは今回紹介した『夏の砦』のためし読みを公開しています。ためし読みをチェックし、辻邦生の作品を手にとってみてください。

『夏の砦』のためし読みはこちらから
『廻廊にて』のためし読みはこちらから

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