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ブライアン・スティーヴンソン著『黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』が問いかける、司法の場における正義とは。鈴木洋史が解説!

白人の人妻と関係を持った黒人が、不当な判決を受けるー差別が根強く残る、アメリカの司法の現実を踏まえて展開される、衝撃のノンフィクション。鈴木洋史が解説します。


【書闘倶楽部 この本はココが面白い②】
評者/鈴木洋史(ノンフィクションライター)

『黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』

黒い司法
ブライアン・スティーヴンソン著
宮﨑真紀訳
亜紀書房
本体2600円+税

Bryan Stevenson(ブライアン・スティーヴンソン)アメリカのアラバマ州モンゴメリーを拠点とし、貧困層や冤罪被害者の代理人を務める団体「司法の公正構想Equal Justice Initiative」を創設した弁護士。ニューヨーク大学ロースクール法学教授。受賞歴多数。

白人女性と不倫していた黒人男性は死刑囚にされた

本書は、1980年代から黒人や貧困層などが司法の場で不当な扱いを受けないよう活動してきた黒人弁護士が、自らの体験を書いたノンフィクション。著者は、ノーベル平和賞を受賞した南アフリカのデズモンド・ツツ元大司教から「アメリカの若きマンデラ」と讃えられた著名な弁護士である。
中心になっているのは、80年代後半に南部アラバマ州の小さな町で起き、弁護人となった著者をのちに有名にした冤罪事件(最終的に無罪釈放)。白人女子大生が殺害されると、物的証拠がなく、数十人が証言できる完璧なアリバイがあるにもかかわらず、材木商を営む中年黒人男性が逮捕され、死刑囚に仕立て上げられた。実は黒人男性はある白人女性と不倫関係にあり、それを周囲に知られていた。当時はまだ異人種間の結婚や性交渉を禁じる「ソドミー法」が各州に残っていた。そのため黒人男性は白人社会の反発を買っていたのだ。〈有罪を示す証拠はひとつもなかった彼が異人種間の不倫行為におよんだアフリカ系アメリカ人だということ以外には〉
他にも多くの事件について書かれ、嘘の証言が生まれやすい司法取引、マイノリティに不利な陪審員の選定など、アメリカの司法が抱える病巣が浮き彫りにされる。
本書はさまざまなデータもあげているが、ひとつだけ紹介しておこう。アメリカでは厳罰主義が採られ、収監率の高さは世界一(民営刑務所の存在も要因のひとつ)。なかでも不当に厳しく取り締まられる黒人のそれは高い。そのため、今世紀になってから生まれた黒人男児の、なんと3人に1人が将来、投獄される計算だという。
司法の場における正義はいかにあるべきかを考えさせられる。

(SAPIO 2017年1月号より)

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