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『アメリカは食べる。アメリカ食文化の謎をめぐる旅』

与那原 恵【ノンフィクションライター】

アメリカは食べる。アメリカ食文化の謎をめぐる旅

アメリカは食べる

東 理夫著

作品社

3800円+税

装丁/松田行正+杉本聖士 (マツダオフィス)

料理の普遍性から感じる「アメリカ人」の悲しみと孤独  アメリカの料理といったら何を思い浮かべるだろうか。バーベキュー、ホットドッグ、ハンバーガー、フライドポテトなどかもしれない。画一的ともいえるこれらの料理はアメリカに渡ってきた移民たちの足跡を物語っていた―。

著者は作家・翻訳家であり、アメリカ文化を多面的に描いた多数の著作で知られる。ブルーグラスのミュージシャンでもある彼が、アメリカの「食」とは何か、それを探るためにアメリカ国内各地を車で旅をした。その旅の目的はアメリカ人とは何か、アメリカとは何かを知ることだった。

彼の両親は日系カナダ移民二世である。幼少時から親しんだ母親の作る「洋食」にも両親の人生が刻まれていた。その記憶もよぎりながら、風景も料理も異なる各地を走っていく。田舎町の食堂に立ち寄り、出会った土地の人たちの何気ない姿や言葉を書きとめていて、読む者の胸を打つ。

壮大なロードノベルの趣がある本書は、アメリカの歴史、社会史の多層性を浮かび上がらせる。著者の博識と緻密な取材、深い考察には驚嘆する。その旅の中で響くのが音楽である。それもまた移民たちの旅の痕跡を奏でていた。

初期植民者が土地のインディアンに教えられた食材と調理法が「アメリカ食」の誕生といえる。ヨーロッパ各国、黒人たち、そしてアジアからの移民たちがやって来た。ある者たちは土地を求めて移動し、ある者たちは鉄道工事などに従事し、やがて定住した。多様な民族が集まる広大な国で、土地の食材を使い、祖国の料理を進化させていった。彼らに共通するのは祖国を捨てて「アメリカ人になるためにやってきた」ことだ。公正で公平、機会均等を旨とする国に夢を見たのだ。

そのためアメリカ食は普遍性を目指し、個を失っていく。アメリカ人であることを確認し、その一員としての安心感を求める食になった。そこに「アメリカ人」の悲しみと孤独を感じると著者は言う。アメリカとは、未だどこかに向かって旅を続けている国なのだ。

(週刊ポスト2015年12・11号より)

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