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地球は12種類の土から成り立っている!『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』

泥炭土、ポドゾル、黒土、永久凍土……。スコップ片手に、地球上に存在する12種類の土をたずねあるく著者。「100億人を養う土壌」を見つけ出すことはできるのか? 土の可能性を探る良書。

【ポスト・ブック・レビュー この人に訊け!】
池内 紀【ドイツ文学者・エッセイスト】

土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて
土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて 書影
藤井一至 著
光文社新書
920円+税

貧乏研究者による「成り立ち」から「折り合い」のつけ方まで

地味な学問である。土の研究、土そのもの、土の成り立ちに始まる基礎研究。そこから「100億人を養う土壌」を見つけ出すことはできないか。
はじめて知ったのだが、地球は12種類の土から成り立っているという。泥炭土、ポドゾル、チェルノーゼム(黒土)、永久凍土、黒ぼく土……スコップ片手に、その一つ一つを地球上にたずねあるく。
簡単なようだが、スコップを機内に持ちこむことからして大変だ。日本人が何やら掘っているとわかると、地元がほっておかない。警察が目を光らせている。
「タイに寄り道して未熟土に詳しくはなったが、まだ12の土壌のうち、四つしか見ていない」
旅はつづくのだ。研究費は雀の涙ほどで、それもとだえがち。「ポドゾルとは、ロシア語の『灰のような土』を意味し、ロシアの農民が耕起しようと地面に鍬を入れると、灰のように白い砂が出てきたことに由来している」
土は風土、また生活と深く結びついている。森林をはじめとする自然界の真の盟主なのだが、人間の足下にあって、いつも忘れられる。乾燥、酸性雨、腐植、溶解、たえず性質を変えていく。
「残る土壌はいよいよ二つだ」
貧乏研究者の大旅行につき合っていて、ハラハラ、ドキドキする。土と折り合いをつけて暮らしている人々のなんと多いことか。条件の悪い土を、いかにして有効に機能させるか。その点、日本列島は土からして、すこぶる好条件に恵まれている。それを神を恐れぬ所業で放置していないだろうか。
「作物のタネとは違い、土は融通が利かない」
その上で語られる「地球の土の可能性」。終わりちかくの日本の「田んぼの土のふしぎ」のくだり。「私の郷里の富山県立山町は豪雪地帯だ」。立山町の背後には、立山カルデラの大崩落地が口をあけ、年々歳々、膨大な泥を押し出してくる。この研究者は少年のころ、親たちがため息まじりに土壌をとりざたするのを聞いていて、土にめざめたのかもしれない。

(週刊ポスト 2018年9.14号より)

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