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【著者インタビュー】宮田珠己『無脊椎水族館』

日々の疲れがたまったとき、人生の路頭に迷ったとき……水族館へ行こう。日本各地の水族館と、不思議な形・動き・生態の生き物を紹介する、話題の脱力エッセイ集!

【大切な本に出会う場所 SEVEN’S LIBRARY 話題の著者にインタビュー】

そうだ、水族館へ行こう。 知らず知らずにたまった日頃の疲労をいやす紀行エッセイスト渾身の脱力エッセイ集!

『無脊椎水族館』
無脊椎水族館 書影
本の雑誌社 1944円

著者は水族館に行くメリットが2つあると書く。〈自力ではなかなか見ることができない変な生きものが間近で見られる〉。そして動物園と比較してよくわかるもう1つのよい点が〈陰気で孤独であっても、ありのままになじめる空間であるということ〉。かくして、おじさんよ、水族館へ行こう。全国19の水族館と150種以上の海の生き物をオールカラーで紹介。読んでニヤニヤ、眺めてニヤニヤの脱力エッセイ集。

宮田珠己
宮田珠己
●MIYATA TAMAKI 1964年兵庫県生まれ。大阪大学工学部卒業後、リクルートに入社。’95年『旅の理不尽~アジア悶絶篇』を自費出版して作家デビュー。以来、旅を中心に「好奇心のおもむくまま」に執筆活動を続けている。『ウはウミウシのウ シュノーケル偏愛旅行記』『日本全国津々うりゃうりゃ』『だいたい四国八十八ヶ所』『ジェットコースターにもほどがある』など著書多数。

水族館に行けば想像できない変な生き物に出会えるし、ほっとできる

 人生の路頭に迷ったら水族館へ行こう。紀行エッセイストの宮田珠己さんはそう呼びかける。
「水族館という薄暗い空間が、ほっとできるんです。ひとりぼっちでいても周りの目を気にせずにいられるし、実際、カメラを持ってひとりで水族館に来ているおじさん、多いですよ」
 なかでも見るべきは、イルカでもペンギンでもなく、クラゲやイカ、イソギンチャクやウミウシなど、館内順路の後ろのほうにある無脊椎むせきつい動物のゾーンだと言う。
「生き物って、イカの系統、カニの系統、というふうにだいたい分けられますけど、時々なんだかわからないものがあるんですよ。ナマコみたいだけど水槽には貝と書いてあって、全然貝に見えない。その肉の棒みたいなのが、イソギンチャクを丸のみしている。『なんだこりゃ!』って驚きますよね」
 各地の水族館の、想像を絶する不思議な形・動き・生態の生き物の数々が本書では紹介される。霜降り肉が立ち上がったようなぶきみな貝(ボウシュウボラ)とか、イルカや熱帯魚に気をとられて素通りするのは確かにもったいない。
 宮田さんは、やはり人生の路頭に迷う友人の営業マン「モレイ氏」を水族館に誘う。「おじさん」ふたりのおかしみのあるかけあいが本書の魅力のひとつ。そのモレイ氏によれば、宮田さんは「夢中になるとなかなか水槽から離れない」「メインアイテムと全然、別のものを見ている」そう。
「それはやっぱり、想像できない生き物に出会いたい気持ちがあるからですね。そして水槽の前でよく、『美味しそう』って言う人がいますけどそうかなあ? イカでもタコでも海にいるから大丈夫なんで、そのへんにいたら気持ち悪くて誰も食べないと思います」
 言われてみれば確かにそうだ。そして、いくら気持ち悪くても、いや気持ち悪いからこそ、海の生き物の謎めいた形と動きには人の心をとらえて離さない魅力がある。
「『へんないきもの』って本がベストセラーになるくらいだから、みんな好きなんですよ。水族館ももっと無脊椎動物を打ち出して、イルカのショーではなく、気持ち悪い泳ぎ方をするウミシダのショーとかをやってほしいですね」

素顔を知りたくて SEVEN’S Question-2

Q1 最近読んで面白かった本は?
アイリアノス『動物奇譚集』。昔のギリシャの、生き物の不思議な生態について書かれた本で、現代の科学的知識からいうとかなり間違っているけどそこが好き。現実に退屈しているところがあるので、世界が広がる感じがします。

Q2 新刊が出たら必ず読む作家は?
伊藤礼さん(『こぐこぐ自転車』など)。ユーモアがあって飄々としていて、心の師と仰いでいます。

Q3 最近気になるニュースは?
年金や生活保護の支給額が減る話は身につまされます。明日はわが身‥‥。

Q4 最近ハマっていることは?
湘南モノレールかな。世界でも珍しい懸垂式で、ある本に面白さを書いたら宣伝のためのウェブマガジンの編集を頼まれました。途中の信号機が面白いとか、変なサボテンがあるとか、マニアックな視点のある路上観察系の書き手を総動員して書いてもらうと、何でもない街がふしぎな面白い場所に見えるんですよ。あとは、自分の老後のためのロト7(笑い)。

Q5 次の本のテーマは?
日本各地の路傍の神仏を訪ねたのを本にするのと、47都道府県の魅力を紹介する自分なりのガイドブック。

●取材・構成/佐久間文子
●撮影/五十嵐美弥

(女性セブン 2018年11.8号より)

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