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【著者インタビュー】鳥飼茜『漫画みたいな恋ください』

男女の性差から生じる衝突や感情を生々しく表現する、人気漫画家・鳥飼茜さんの日記が書籍化。同じく人気漫画家の浅野いにおさんとの恋愛をはじめ、元夫との間にいる息子や仕事のことなど、日常の葛藤が濃密に綴られています。

【大切な本に出会う場所 SEVEN’S LIBRARY 話題の著者にインタビュー】

人気漫画家が赤裸々に綴った、仕事、恋愛、息子とのままならない日常。迷い悩みながら前進する4か月の濃密で激しい軌跡。

『漫画みたいな恋ください』
漫画みたいな恋ください 書影
筑摩書房 1620円

鳥飼さんは「あとがき」にこう綴る。〈恋愛は、甘いお菓子ではなくいつも闘いだった。それは人から見て羨ましがられるようなものではなかったと思う〉。本書には、2018年4月から7月に書いた日記が収録されている。〈彼氏〉とのこと、元夫との間にいる小学4年生の〈息子〉とのこと、仕事のこと‥‥どれもこれもただ順調ではなく、忙しい生活の中、自分の奥底の気持ちを抉り出し、苦しみ、悲しみ、迷い、怒りなど、真摯に言葉にしている。

鳥飼茜
差-鳥飼茜
●TORIKAI AKANE 1981年大阪府生まれ。漫画家。2004年デビュー。作品に、『先生の白い嘘』『おんなのいえ』『地獄のガールフレンド』など。最新刊は思春期を描く短編を8編収録した漫画『前略、前進の君』。全ページ鉛筆で描かれ、『漫画みたいな恋ください』で鳥飼さんはこう綴っていた。〈画力が試される楽しい仕事だったが、鉛筆のタッチで表情、景色、すべてのディテールを埋めていくので、必要な労力が相当なものだった〉。登場人物たちが今にも動き出しそうなほど瑞々しいタッチで描かれ、思春期の焦燥が胸に迫る。

ここまで恋愛中心で等身大の喧嘩や心のすれ違いを書いた内容になるとは

 9月25日、鳥飼さんは結婚を発表した。相手は『ソラニン』『おやすみプンプン』などで知られる人気漫画家の浅野いにおさんだ。本書には、彼氏(浅野さん)との恋愛を中心に、元夫との間にいる息子や仕事の話題など、私生活の葛藤や苦闘が日記形式で描かれている。
「きっかけは、彼と喧嘩して悩んでいたときに、書籍の編集さんに日記を書くといいんじゃないかとすすめられたからです。パソコンを持たない私は、その日からスマホで日記をつけ始めました。当時は結婚するとは思っていなかったし、日常生活で気づいたことを記していきました」
 これまで漫画で、男女の性差から生じる衝突や感情を、目を背けたくなるほど生々しく表現してきた。その作風は文章でも変わらない。文中では「これまでに、結婚生活を含め男性と2年以上つきあえたことがない」と告白。つきあって1年2か月になる彼と喧嘩し、別れを意識するところから日記は始まる。夜明けまで続いた喧嘩や、漫画家として才能あふれる彼への嫉妬心などが、内省的かつ赤裸々に吐露されている。
「これまでずっと、自身の思いを言葉にして、漫画という形で人目に触れさせてきました。その意味では漫画も日記も同じ。私生活を表現することに抵抗はありませんでした。ただ、ここまで恋愛中心で等身大の喧嘩や心のすれ違いを書いた、恥ずかしい内容になるとは思ってなかったですね」
 描くのは、少女漫画のようなさわやかな恋ではない。自分自身をとことん突き詰め、相手との関係を掘り下げる筆力に、読み手もぐいと引き込まれ、心が痛くなる。
「私は過剰なくらい、一生懸命に生きているんです。彼や子供との関係がうまくいかないとき、自分のどこが駄目で何が伝わらなかったのか、相手の気持ちはどうだったのかを、突き詰めて考える癖があります。言葉にする過程は苦しかったですが、脳から快楽物質も出ていましたね。私に起きる出来事をどう乗り越えるかを読者に読んでほしいと思うと、楽しくもありました」
 この「日記」は生き方指南書ではない。だが、人間関係に疲弊した現代人の生きるヒントが散りばめられている。

素顔を知りたくて SEVEN’S Question-3

Q1 最近読んで面白かった本は?
(武田)砂鉄さんが選んだ『ナンシー関の耳大全77』は読み始めると止まらない面白さでした。それと次回作のために読んだ、哲学者の須原一秀さんの『自死という生き方』も、重いテーマですが興味深い内容でしたね。人間は尊厳と自由があるうちに自死を選ぶべきだという死生観が語られていて、須原さんは実際に自死をされているんです。

Q2 新刊が出たら必ず読む作家は?
吉田修一さんと村上春樹さん。

Q3 好きなテレビ番組は?
NHK Eテレの『ねほりんぱほりん』。YOUさんが大好きなんです。元極道やホストに貢ぎまくる人など、訳ありゲストとのトークも生々しくて面白いです。

Q4 最近気になるニュースは?
ミスター慶応候補が準強制性交容疑で逮捕された事件。世間の多くの人は「子育て0点だった人の子供が起こした事件」と「一見、子育て100点だった人の子供が起こした事件」の両方が好きで、なぜこうなったかを知りたがります。でも、一生懸命に育てていても何かの間違いでこんな結果が起こりうると想像すると、もう地獄ですね。自身の子育てについて深く考えさせられました。

●取材・構成/戸田梨恵
●撮影/菅井淳子

(女性セブン 2018年11.15号より)

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