本との偶然の出会いをWEB上でも

【著者インタビュー】鶴谷香央理『don’t like this』

ソーシャルゲームのキャラクターデザインをしている主人公は、筋金入りのインドア派女子。ふとしたきっかけではじめた釣りを通して、少しずつ日常が変わっていく……。優しく独特な魅力のある世界を描く、著者にインタビュー!

【大切な本に出会う場所 SEVEN’S LIBRARY 話題の著者にインタビュー】

何気ないその一歩が私たちの日常を彩り豊かに変えていく――インドア派の女の子に映った新しい世界は昨日より優しくて楽しい

『don’t like this』
don’t like this 書影
リイド社 821円

〈私の好きなもの ペプシの青くて長いやつ うな重 ピザの出前 フールーでアメリカのドラマを見ること 帰り道で 飛行機が大きく見えること それ以外はそんなに好きじゃない〉―インドア派のイラストレーター・吉田めぐみが、ふとしたきっかけで釣りと出会う。糸を垂らした先に広がっていたのは、表情をコロコロ、キラキラと変える水面や街の光景だった。小さな一歩が日常を変えていく様子を描き出す。

鶴谷香央理
鶴谷香央理
●TSURUTANI KAORI 漫画家。1982年富山県生まれ。ツイッターでは「だいたい、漫画と、しりとりと、俳句の話をしています」と自己紹介。75才の老婦人と17才の書店員がBL(ボーイズラブ)をきっかけに交流を深める作品『メタモルフォーゼの縁側』が「次にくるマンガ大賞2018」「WEBマンガ総選挙2018」などにノミネートされ話題に。本作と同日、第2巻が発売になった。

好きと嫌いははっきり分かれてなくて共存してたりするもの

 好きなもの、ではなく、これが嫌い、がタイトルになっているのが面白い。
「この漫画は、もともと友だちがやっているデザイン会社の『like this』というサイトで連載していたので、単純にその逆にしたら面白いかなと思ったんです。私自身、主人公と同じようにまず否定から入るところがあるんですけど、好きと嫌いははっきり分かれているわけじゃなくて、最初苦手だと思っていたものがだんだん好きになったり、ひとつのものに対しても好きな気持ちと嫌いな気持ちが共存していたりするのが自然な感覚なんですよね」
 ソーシャルゲームのキャラクターデザインをしている主人公は筋金入りのインドア派だが、新たに始めた釣りを通して、それまで苦手だと思っていた世界に少しずつ目をひらかれていく。
「家の近くに釣り場があるので、これを機に釣りを始め、それを漫画に描こうと。実際にやってみると、自分には狩猟本能みたいなのがあんまりないことがわかりました(笑い)。大物を釣ることよりも、釣りをしながら見える景色のほうに興味があるみたいです」
 エサの生きたイソメを手でちぎれずハサミで切ったり、海釣りの途中で雨に降られたり。作品に描かれるできごとはぜんぶ、鶴谷さん自身が経験したものだ。
「ほぼ個人的な感動だけでできている漫画です。雨で波打つ海面は、本当に不思議で、すごくいい景色でした。釣ったハゼやイカも実際にさばいて料理したんですけど、昔、レストランでバイトしていたときにイカのさばきかたを教わったのが役に立ちました」
 人物よりも景色が描きたくて、インドア派の主人公が外に出る漫画にしたと言うが、主人公や、周囲の人物にも飄々とした独特の魅力がある。
「私は漫画の登場人物に周りにいる人を使ってしまうことが多いんです。主人公のモデルはゲームのイラストを描いている友だちで、すごく忙しいのに淡々と仕事をしているのがかっこよく見えたので。喫茶店『たぬき』のマスターは、昔、よく実家に来ていた、元ホテルマンのダンディなおじさんだったりします」

素顔を知りたくて SEVEN’S Question

Q1 最近読んで面白かった本は?
澤江ポンプ『パンダ探偵社』。本が出るのは12月末ですが、連載で読んで。

Q2 新刊が出たら必ず読む作家は?
長嶋有さん。

Q3 好きなテレビ・ラジオ番組は?
ずっとラジオを聴いてて、余裕のないときは「ラジオ深夜便」や「放送大学」を聴きます。

Q4 最近気になるニュースや出来事は?
AI。未知なものすぎて、AIがどこまでできるんだろうってことがすごく気になります。

Q5 最近ハマっていることは?
4才と0才の甥っ子です。

Q6 趣味は何ですか?
俳句です。ツイッター上で長嶋有さんのファンが仲よくしていて、長嶋さんの呼びかけで俳句をやろうということに。最初はツイッター上でやっていて、少し慣れた頃に「アッテスル句会」もやるように。俳句は、漫画を描くうえでもすごく勉強になってます。

Q7 1日のスケジュールは?
妹家族と一緒に暮らしているので、子供と一緒に朝7時半か8時に起きて、昼前には出かけて近所の喫茶店で仕事をします。10店ぐらい「私の店」と思っているところがあって、ハシゴします。謎の勧誘をしていたりする隣で、iPadで下書きまでやります。

●取材・構成/佐久間文子
●撮影/藤岡雅樹

(女性セブン 2018年12.20号より)

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