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【著者インタビュー】酒井順子『センス・オブ・シェイム 恥の感覚』/SNSによって変化した、日本の「恥じらい」

かつてはおおいに恥じらいをもち、「自慢」を恥じていた日本の文化。SNS時代のいま、その感覚が激変していると酒井順子氏は語ります。

【大切な本に出会う場所 SEVEN’S LIBRARY 話題の著者にインタビュー】

母への感謝、夫との セックスから食べ放題、う○こ、死に支度まで SNS登場で激変した恥の感覚を振り返る&覗く 膝打つ傑作エッセイ集!

『センス・オブ・シェイム 恥の感覚』

文藝春秋 1400円+税

満たされぬ自己承認欲求をSNSによって満たした中年たちを酒井さんはこう綴る。〈自分の欲望の趣くままに自慢するので、やたらと連投する人、思いの丈を長文に託す人、イデオロギーを前面に押し出す人、明らかにフェイスブック中毒になっている人など、珍獣がそこここに〉―。人や年齢、時代によって変わりゆく恥と自慢の感覚をユーモアたっぷりに綴ったエッセイ集。噴き出し注意です。

酒井順子

●SAKAI JUNKO 1966年東京都生まれ。高校在学中から雑誌にコラムを発表。立教大学を卒業後、広告代理店勤務を経て執筆専業に。2004年『負け犬の遠吠え』で婦人公論文芸賞、講談社エッセイ賞を受賞。ほかに『女を観る歌舞伎』『ユーミンの罪』『裏が、幸せ。』『子の無い人生』『家族終了』『平安ガールフレンズ』など著書多数。

みんな気軽にSNSをやっていますが、 実は危険な手段であることが忘れられがち

 西欧の「罪の文化」に対して、日本は「恥の文化」だといわれる。そんな私たちの「恥」の感覚(センス・オブ・シェイム)が、SNSの発達によって変わってきていると酒井さんは指摘する。
「前に、編集者さんと話していて、それは『センス・オブ・シェイム』の問題だよね、って話題にしたことがあったんです。雑誌で何か連載を、と言われたとき、ちょうどSNSについて思うところもあったので、そのあたりを書きたい順に書いていきました。自分自身も年をとって恥じらいがすり減っていく。同時に、世の中の恥の感覚も結構、変わってきているんじゃないかな、と思ったんですね」
 面白いのが「自慢」と「恥」の関係だ。古来、日本には「自慢」を恥じ、嫌う文化があった。「すべてのエッセイは自慢話である」と言ったのは井上ひさしさんだが、プロの文筆家は「一見、自慢っぽくないけれど、実は自慢」というテクニックを磨いてきた。
 ところが、フェイスブックなどのSNSでは、アマチュアによるむきだしの「自慢」があふれ出す。そんな状況について書いた連載第2回の「中年とSNS」がオンラインに転載されるや、またたくまにシェアされ大反響を呼んだ。
「『炎上』したのかとびっくりしました。どちらかというと、男性の方が怒っていた印象です。SNS、私自身は書き込むことはしないけれど、見るのは好きで、中にはどんどん壊れていく人もいます。みんな気軽にSNSをやるけど、実は危険な手段であることが忘れられがちだと思います」
 家族や仲間にやたらと「感謝」する若い人や、人前で母親をハグする青年。見ている方が恥ずかしさを感じても、やっている本人は恥ずかしくない。性の意識や善行、読んでいる本。何を恥ずかしく思うかは、人それぞれ違い、時代や世代によっても変化する。
「私が電車でこっそり人を観察するのも客観的には結構、恥ずかしいことで、繊細な人は、そんな恥ずかしさに気づいてひきこもったりするんだと思います。自分がなぜ文章を書く仕事をしているかというと、やっぱり生きていることの恥ずかしさみたいなものを表したいのかも、と思うんです」

素顔を知りたくて SEVEN’S Question-1

Q1 最近読んで面白かった本は?
『アンネの日記』を久しぶりに再読して、面白い人だ、大人にしてあげたかったと思いました。

Q2 新刊が出たら必ず読む作家は?
岸本佐知子さん。

Q3 好きなテレビ・ラジオ番組は?
ふつうですけど、『サラメシ』。『紅白歌合戦』も好きです。『グレーテルのかまど』も。NHKが好きなんですね。

Q4 最近気になるニュースは?
「あおり運転」で逮捕されたカップルは「センス・オブ・シェイム」が共通してたんだろうと思います。ただ、私、あおり運転の映像をニュースで見るのはすごく嫌いで、ゴミ屋敷もすごく苦手なんです。好きなのは猛暑のニュースで、みんなで暑い暑い言ってる、ああいうのが好きですね。

Q5 趣味は何ですか?
卓球と中華料理です。中華料理は作るのも食べるのも。特に好きなのは餃子です。

Q6 卓球はなさっている?
2週間に1度ぐらい。今日も、練習に行ってきました。たまに大会にも出て、「自己評価が高すぎた‥‥」と打ちのめされます。声ですか? あんまり、ふつうの人は出さないですね。あれは相当、うまい人じゃないと。私は腰が低いタイプで、「すいません、すいません」と言いながらプレーしています。

●取材・構成/佐久間文子
●撮影/政川慎治

(女性セブン 2019年9.19号より)

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