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【著者インタビュー】三砂ちづる『自分と他人の許し方、あるいは愛し方』/献身できる人がいるのは幸せ

不倫から介護・看取りまで、さまざまなことを優しい言葉で綴る一冊。人に何かしてもらうのを期待するよりも、できることを人にやってあげる方が幸せになれると著者は語ります。

【大切な本に出会う場所 SEVEN’S LIBRARY 話題の著者にインタビュー】

不倫から仕事、体、死まで。がんじがらめの常識がゆるゆると溶けていく幸せな人生を送る処方箋

『自分と他人の許し方、あるいは愛し方』

ミシマ社 1700円

妊娠、出産など母子保健の研究をしている三砂さんが、恋愛、子育て、更年期、生死などについて考えたことを、やさしい言葉でつづっている。「献身できる人間でありたい」「還暦を超えたら楽しい」「叱られると自分の一部が死ぬ」など、自身の経験からつむぎ出された言葉たちは、読む人に生きるための知恵を授け、温かな気持ちにさせてくれる。

三砂ちづる

●MISAGO CHIZURU 1958年、山口県生まれ。兵庫県西宮市で育つ。京都薬科大学卒業。ロンドン大学Ph.D.(疫学)。津田塾大学多文化・国際協力学科教授。専門は母子保健を中心とする国際保健。ザンビア、沖縄、イギリスなどで仕事をしてきたほか、十数年住んだブラジルで子育ても経験。現在も仕事でたびたび開発途上国を訪れている。『女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言』『オニババ化する女たち』『死にゆく人のかたわらで』『少女のための性の話』など著書多数。

戦後は「人に献身したい」という心のありようまで捨ててしまった

 芸能人の不倫が激しく攻撃される昨今の風潮に、三砂ちづるさんは違和感を覚えるという。
「結婚とか一夫一婦制は、私たちの長い歴史の中で、これがいちばんうまくいくシステムだろうと選び取ってきた幻想なんです。だから、現実にはそこに収まらないことをやってしまう。それで悩んだり、苦しんだりするわけです」
 不倫で人を傷つけるのはよくないけれど、人間は自分を含めてみんなだらしないし、いろいろな感情を抱えて生きている。攻撃している人は、自分が人生で間違うことなく生きてきたのか、胸に手を当てて考えてみるといいと話す。
 とはいえ、女子大で教鞭を執る三砂さんは学生から相談を受ける機会も多く、若い女性に手を出す中年男性たちには、「許し方という本だけど、許せない」と憤る。
 本書では介護や看取りについても触れられている。人に何かしてもらうのを期待するより、できることを人にやってあげるほうが幸せになれると三砂さん。
「今は介護も看取りも大変という話しか聞かないけど、献身できる人がいるのが幸せなんですよ。それだけ濃い人間関係を築けたということですから」
 介護する人、看取る人は、その人や家族、親戚などから選ばれた人なのだ。戦前の日本では、お嫁さんが家族の介護や看取りをするのが当たり前だった。戦後はそんな家父長制の考え方が否定された。
「それはいいのですが、封建的なものを捨てるとき、人に献身したいという心のありようまで捨ててしまった気がするんです」
 三砂さんはこの本で、戦後にまとめて捨ててしまったものの中から、やはり大事なものや人間が長年培ってきた知恵を拾い上げ、その輝きを教えてくれる。人は誰でも間違える。どうせ私が悪い、私なんかダメと思わずに、今の自分を許していい状態にすることが大切とアドバイスする。
「赤ちゃんが、生まれてきてよかったと思える母親をつくりたいから妊娠、出産にこだわるんです。受け止めてもらえた感覚がある人は、自分の存在を否定しない心の根っこを与えられます。人間は何かやったからでられるものではなく、生きているだけで素晴らしくて、愛でられるものなんですよ」

素顔を知りたくて SEVEN’S Question-1

Q1 最近読んで面白かった本は?
『鬼滅の刃』。息子から連載が終わったと聞き、20巻を大人買いして「週刊少年ジャンプ」の最終回まで全部読みました。すてきな着物がいっぱい出てきて楽しかった。着物を着たいと思う人が増えてほしい。

Q2 新刊が出たら必ず買う作家は?
村上春樹さん。翻訳ものも含めて全作品を読んでいます。彼がいなかったら物を書いていなかったと思います。一に足腰、二に文体という言葉にも影響を受けて努力しています。

Q3 好きなテレビ番組や映画は?
マーベルの「アベンジャーズ」シリーズ。昨年は新作を見る前に旧作の復習をしようと、1か月で20本見ました。

Q4 最近気になるニュースは?
イギリスのコロナ対策で有名になった疫学者がタブロイド紙に、若い女性とのダブル不倫を暴露されたこと。普段は地味な商売だから話題にならないのに。

Q5 最近ハマっていることは?
長男が子犬、次男は子猫がいいというので、両方飼い始めました。かわいいですね。子犬のしつけで頭がいっぱいです。

Q6 運動はしていますか?
ゆる体操の創始者、高岡英夫さんに20年近く指導を受けています。私もゆる体操の指導員なので、時々教えています。

●取材・構成/仲宇佐ゆり

(女性セブン 2020年7.9号より)

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