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宮田珠己『ニッポン脱力神さま図鑑』/よくぞここまで! 323体の脱力系神さまを収録

優雅な田の神、ピンク色の石仏、白パンツ鬼コ、皺だらけの狛犬……日本各地の路傍から、四年かけて探し出した脱力系神さまを集めた力作カラー本! 

【ポスト・ブック・レビュー この人に訊け!】
嵐山光三郎【作家】

ニッポン脱力神さま図鑑

宮田珠己 著
廣済堂出版
1600円+税
ブックデザイン/藤田泰実

旅へいざなう「ミヤタの旅」四年間の集大成

 日本各地の路傍から石仏、かん、赤鬼、仁王、道祖神、狛犬などを捜し出す「ミヤタの旅」に注目している。よくぞここまで捜しまわった。優雅な田の神、ピンク色の石仏、おっさん風、銀座マダム系、石柱をくりぬいた大黒天、木の葉に覆れた精霊がずらり。
 白パンツ鬼コ、赤鬼、青鬼、ピンク鬼、緑鬼などが青森県の神社に揃いぶみ。国東半島には石造の仁王像が多く、短足で挙手する仁王が愉快。この地は私も歩いて多くの磨崖仏を拝した。国東半島には、断崖に彫られた古代石仏や修験道に由来する仏さまが多い。秋田の道祖神、肥前狛犬に至るまで、三二三体の脱力系神さまが収録されている。
 なかでも注目されるのは佐賀県や長崎県に多い小さな狛犬で、狛犬四兄弟、皺だらけ狛犬、図形狛犬、コンパクト狛犬、ひとめぼれ狛犬、磨耗狛犬、こんにちは狛犬、大口狛犬、アニメ顔狛犬、宇宙人狛犬、ぺったんこ狛犬、バットマン狛犬、ガマ狛犬群、狛犬なのかどうなのか(磨耗しすぎ)、狛犬ブル、哀愁狛犬(私に似ています)、猫背狛犬、ワラビ鼻狛犬、レモン目狛犬、円柱狛犬、ふんばり狛犬、デレ狛犬、牙狛犬、恐竜狛犬、など、いるわいるわ、デフォルメされた簡素な造形で、狛犬のネーミングはすべて筆者が名づけた。天正年間から江戸時代中期までに作られた像で、ほとんどが安山岩を彫ったものだ。時代が下ると砂岩や蛇紋岩が使われたという。
 小型でかわいいため盗難にあったので、寺や神社名が記されていない。狛犬だけでなく、石像神さまは人気があるので古美術商や道具屋で売られ、さる有名俳人の庭に置いてあるのを見たことがある。ひと昔前はタンボのあぜ道や、山寺の小道に石仏小仏が置いてあった。やはり田に置け道祖神、と念じつつこの力作カラー本をすみからすみまで読んだ。
 四年間かけて全国を廻り、調査撮影した宮田氏の努力に敬意を表しつつ、脱力系神さまに逢う旅をしたいと思った。旅へいざなってくれる図鑑です。

(週刊ポスト 2020年7.24号より)

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