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【著者インタビュー】山本美希『かしこくて勇気ある子ども』/子どもを持つという選択の前で立ち止まっていることを形にしたい

生まれてくる子供が賢くて勇気ある子に育ってほしいと、薔薇色の未来を思い描いていた夫婦。ある日、パキスタンの賢くて勇気ある子供が危険な目にあった事件を知り、妻は不安を覚えますが……。意外な展開が待つ長編マンガ!

【大切な本に出会う場所 SEVEN’S LIBRARY 話題の著者にインタビュー】

この世界に生まれてくる子供に、私たちは何を伝えられるのか。主人公の女性とともに考えたい、いま私たちが生きる世の中のありようと未来。

『かしこくて勇気ある子ども』

リイド社 1800円

初めての出産を心待ちにしている夫婦は、賢くて勇気ある子供に育ってほしいと期待をふくらませていた。しかし、臨月に入った頃、ある国で賢くて勇気ある子供が事件に遭ったことを知り、妻は混乱してしまう。この世の中で我が子に何を伝えればいいのか、夫婦は無事に出産を迎えられるのか。意外な展開に胸が熱くなる長編マンガ。

山本美希

●YAMAMOTO MIKI マンガ作家。大学教員(筑波大学芸術系)。卒業制作『爆弾にリボン』がMITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD 審査員特別賞、2013年、『Sunny Sunny Ann!』が第17回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。2015年、『ハウアーユー?』が第19回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選ばれる。2018年にフランスのアングレーム国際漫画祭にノミネートされるなど、国内外の芸術祭に参加。共著に絵本『ねえねえ あーそぼ』など。

もし子供が生まれたら幸せに生きていけるのか。そう考えずにいられない

 生まれてくる我が子にはどんな未来が待っているのか? 山本美希さんが妊娠、出産をテーマにマンガを描いたのは、周りの同世代に子供を持つ人が増える中、自身は子供がほしくないと思っていたからだ。
「いまの日本の女の子は電車で痴漢されたり、医学部の入試で減点されたりとひどい状況です。自分の経験でも、兄は東京の有名私立大学に行ったのに私は地元の公立でいいと言われたこともありました。もし女の子が生まれたら幸せに生きていけるのか、いつかひどい目に遭うのではないか。そう考えずにはいられませんでした」
 子供を持つという選択の前で自分が立ち止まっていることを形にしようと作品を描き始めた。
 妊娠した主人公の沙良は、女性の権利を主張したパキスタンのマララさんがバスで下校中に撃たれたことを知り、ショックを受ける。
「たまたま私がパキスタンに生まれていなくて、そのバスに乗っていなかっただけで、自分にも起きることのように思えたんです」
 生まれてくる子供への期待で薔薇色だった未来は暗転し、沙良は子供を迎えることに不安を覚えるが、物語は意外な方向に展開して明るい未来を予感させる。
 やわらかいタッチの絵は色鉛筆によるもの。沙良の心の動きを色も使って表現している。
「いろいろなメーカーの色鉛筆を試して、油性で発色のいいものを使っています。マンガはページ数が多いから、乾きが速く耐久性があることも作業の上では大事なポイントなんです」
 紙に描き、色鉛筆で塗って編集者に手渡しした。パソコンを使わない、アナログでのマンガ制作はいまではめずらしいという。
 描き終えた山本さんは、子供たちには困難を乗り越える力があると少し思えるようになっていた。
「普段はプライベートな話をしない人からも、自分の出産のときはこうだったと打ち明けるように感想をいただけることが多いんです。それぞれ自分のセンシティブなところに触れながら読んでくださったのかなという感じを受けています。ちょっとシリアスなテーマとか、普段はあまり見たくない難しいことを考えるきっかけになるといいなと思っています」
 うなずきながら読み進み、最後は温かな気持ちに包まれる作品だ。

素顔を知りたくて SEVEN’S Question

Q1 最近読んで面白かった本は?
インゲ・シュテファン『才女の運命 男たちの名声の陰で』。クララ・シューマン、アインシュタインの最初の妻など、有名な男性の業績の一部を担いながら陰に隠されてしまった女性が書かれています。

Q2 新刊が出ると必ず買う好きな作家は?
もう新作は出ないのですが岡崎京子さん。もう1人は多和田葉子さん。

Q3 好きなテレビ番組は?
ネットフリックスで『愛の不時着』を見ています。自分の体験したことのない暮らしを見せてくれるTBSの『クレイジージャーニー』も好きでした。

Q4 最近気になっている出来事は?
幻冬舎の編集者のセクハラ問題にはすごい腹が立ちました。セクハラ、フリーランスへの報酬未払いなどは、ほかの場所でも起きていると思います。みんなが改善しようと思えるように、忘れないでもらいたいです。

Q5 趣味は?
映画を見ること。

Q6 いちばん落ち着く時間は?
家に帰って夕飯を食べるとき。

Q7 運動はしていますか?
何にもしてません!

●取材・構成/仲宇佐ゆり
●撮影/後藤さくら

(女性セブン 2020年9.3号より)

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