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【著者インタビュー】宇佐見りん『推し、燃ゆ』/時間とお金を惜しみなく「推し」に注ぐファンの熱量を書きたい

アイドルを推すことに人生をかける高校生の、切実な心情を描いた話題作。現役の大学生であり、デビュー作で文藝賞と三島由紀夫賞をW受賞した注目の著者にインタビュー!

【大切な本に出会う場所 SEVEN’S LIBRARY 話題の著者にインタビュー】

デビュー作『かか』は文藝賞、三島賞の2冠。アイドルを推す高校生のひりひりとした心情を描いた話題の第2作!

し、ゆ』

河出書房新社 1400円

主人公のあかりは高校生。アイドルグループ「まざま座」の上野真幸くんを推している。学校、母、姉との関係がぎくしゃくする中で、コンサートに通い、グッズを買い集め、そのためにアルバイトもがんばっていた。ところが、真幸くんがファンを殴って炎上する。あかりはどうなってしまうのか? 10代、20代の子供を持つ親世代にもおすすめの小説。

宇佐見りん

●USAMI RIN 1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。小学生の頃に小説を書き始め、2019年デビュー作『かか』で文藝賞、三島由紀夫賞をダブル受賞。2作目の本作は「推しファンというテーマと、それをアップテンポではなく、重さをちゃんととらえながら書こうということは決まっていましたが、それ以外の具体的な構成などはグリグリ動かしながら書いていきました」(宇佐見さん)。現在、大学の文学部の2年生。オンライン授業を受ける日々が続いている。

「推し」は趣味の一環ととらえられがちですが、人生をかけた「背骨」と考えている人がいる

 アイドルを追いかけているファンは、こんなにも切実な思いを抱えているのか。時間とお金を惜しみなく「推し」に注ぎ込み、ファンという一点でつながる仲間とSNSで交流する。同じCDを何十枚も買う人たちの必死さを、この小説は一気に身近なものにしてくれる。
「趣味の一環としてとらえられがちで、誰々のファンなんだよね、と気軽に言う人も多いんですけど、部活に人生をかけている人がいるように、推すことを自分の〈背骨〉と考えている人がいる。その熱量を書きたいと思いました」
 と宇佐見りんさんは語る。自身も推している俳優がいるから、ファンの行動や気持ちの細部にリアリティーがこもる。「ファンの人たちへの見方が変わった」と言われるのがうれしい。
 主人公のあかりは推しの情報を集めて人と作品を解釈し、推しの見る世界を見ようとする。ファン同士のSNSでは賢いお姉さんと見られているが、学校や家族との関係はうまくいかない。
「推しのからむことに対しては、あかりは一番心を開いた状態でいられる。それ以外の場面とは描写の仕方を変えてギャップを書きました。いつもは淡々としていて家族とのかかわり方も他人事みたいな態度で母や姉をいらつかせるんですけど、推しに関する場面ではいきなり解像度が上がって、生きることに積極的になるんです」
 宇佐見さんはまだ21歳だが、小説はもう10年以上書き続けている。
「小説に向き合っている時間は、ほかの雑多なものを全部忘れます。今は大学の課題で忙しいので、すき間時間に書いています。書く時間がないと辛いですね。ストレスがたまるかもしれません」
 デビュー作『かか』は文藝賞、三島由紀夫賞をW受賞して脚光を浴びた。書いた作品が出版される環境に変わっても小説と自分との関係は変わらず、書くことを楽しんでいる。将来は専業の小説家に?
「就活はまだしてないんです。小説と生活は両輪だと考えています。生活を回していくことで小説になって、バランスをとっているような気がするので、今はいろいろな経験をしたいと思っています」
 若さと才能がみなぎる、新しい「推し」小説の誕生だ。

素顔を知りたくて SEVEN’S Question-1

Q1 最近読んで面白かった本は?
宮本輝さんの『蛍川』。文体も好みでした。『泥の河』、『道頓堀川』と川三部作を読みました。

Q2 新刊が出たら必ず読む好きな作家は?
いちばん好きな作家は亡くなった中上健次さんなので新刊が出ないんです。梨木香歩さんの本は書店で見るとうれしくなって購入します。

Q3 よく見るテレビ番組は?
最近はテレビより、スマホでYouTubeを見ています。推してる俳優のチャンネルのほかは、魚をさばくチャンネルとか。

Q4 最近気になっている出来事は?
2004年の第2期にやっていた「たまごっち」と同じ柄のものをネットで見つけ、懐かしい気分になって7700円で買っちゃいました。届くのが楽しみでしょうがないんです。

Q5 趣味は何ですか?
寺社巡り。鎌倉によく行きます。私は話すときに人の目を見ないんですけど、仏像は見下ろしてくるから、静かに対峙する時間をもらえる。多忙な瞬間を忘れられます。

Q6 運動はしていますか?
運動は得意ではありませんが、クラシックバレエとか水泳をやっていました。スキーは大好き。唯一できるスポーツかもしれません。

●取材・構成/仲宇佐ゆり

(女性セブン 2020年12.3号より)

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