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【「2020年」が明らかにしたものとは何か】芦沢 央『カインは言わなかった』/舞台に懸ける人間の「選ばれたい」想い

誰もが変化と向き合った激動の1年を振り返るスペシャル書評。第7作目は、お笑い芸人・山田ルイ53世が選ぶ、1つの舞台にすべてを捧げる男たちを描いたミステリー小説です。

【ポスト・ブック・レビュー この人に訊け! 拡大版スペシャル】
山田ルイ53世(髭男爵)【お笑い芸人】

カインは言わなかった

芦沢 央 著
文藝春秋
1650円+税
装丁/城井文平

「狂おしいほどに、選ばれたい」想いは同じ

 未だ収束せぬコロナ禍。
 その影響で、各方面散々だが、筆者もご多分に漏れず、である。
 一発屋芸人の主戦場たる、お祭りやショッピングモールでのお笑いステージ、企業の○○周年パーティーの余興といった案件は、軒並みキャンセル。正月に徳島県のお寺で、“漫才を披露した後、参拝客に餅を撒く仕事”をこなしたのが最後だったから、かれこれ1年近く“地方営業”から遠ざかっている計算だ。
 いや、愚痴っても仕方がない。
 幸い、こうやって文章を書いたり、ワイドショーのコメンテーターやレギュラーのラジオ番組、ナレーター業など、辛うじて残ったものもある。
 今やどの現場も、アクリル板で間仕切りが施され、『一蘭』でラーメンを啜っているのと大して変わりないが、有難い。
 夏も過ぎ、“ニューノーマル”な日々にも慣れた頃、再び暗澹とした気分に叩き落されたのは、“ボージョレ・ヌーボー”の解禁日。毎年、日本のあちこちで企画される、何かしらのイベントで、
「3・2・1…ボージョレー!!」
 とカウントダウンの音頭を取るのが、この10年来、我々「髭男爵」の恒例行事となっていたが、今シーズンはお声が掛からなかったのである。
 もっとも、“祝・解禁”の催し自体は、オンラインなど様々な形で開かれており、別にコロナのせいでもなかったが、それが余計に不味かった。当方、ワイングラス片手に、「○○やないか〜い!」とツッコむ“乾杯漫才”がトレードマークの芸人。この日にオファーがゼロでは、存在価値を見失うというか……みっともない。
 とりわけ近年、“ひぐちカッター”か“ワインの資格取ったー”としか喋らぬ人と化している相方・樋口にとって、この手の仕事は生命線……メンタルが心配である。
 ……というような、コスプレキャラ芸人の“しょうもない葛藤”は一切描かれておらぬが、「狂おしいほどに、選ばれたい」想いは同じ。
 芦沢央著、『カインは言わなかった』(文藝春秋)をぜひ。

(週刊ポスト 2021年1.1/8号より)

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