川上弘美『わたしの好きな季語』/季語のとりこになっていく日々のエピソード
「妙な言葉のコレクション」が趣味だった著者が、俳句をつくるようになり、季語のとりことなっていく日々を綴るエッセイ。これから俳句をはじめたい人におすすめの一冊です。
【ポスト・ブック・レビュー この人に訊け!】
嵐山光三郎【作家】
わたしの好きな季語
川上弘美 著
NHK出版
1700円+税
装丁・挿画・本文デザイン/
鈴木千佳子
「季語のとりこ」になった作家の俳句エッセイ
季語は連歌や俳句の季節を示すための言葉で、朝寝は春、
そうやって十数年たったころ、ひょんなことから俳句をつくるようになった。季語のとりことなっていく日々のエピソードをつづった俳句エッセイ集。
朝寝は春の季語で「あらうことか朝寝の妻を踏んづけぬ」(
弘美さん流枝豆のゆで方は、柔らかゆで期↑固ゆで期↑気まぐれ期のサイクルを二週間ほどで繰り返す。「枝豆や三寸飛んで口に入る」(正岡子規)。食べ物の句になるとガゼン色めきたつ。
さて、たくわんの章には「死にし骨は海に捨つべし沢庵
七草は新年で「せり・なずな、以下省略の
季語に関する九十六編のエッセイは、これから俳句を詠んでみようという人におすすめです。十年前に
(週刊ポスト 2021年1.15/22号より)

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