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エミン・ユルマズ『エブリシング・バブルの崩壊』/現在バブル状態にある米国株が暴落したら、日本株が上昇する?

現在、米国株価の売上倍率は3倍と適正の範囲を大きく超えており、バブル状態にあると主張する著者が、米国株価の崩壊後に上昇するのは日本株だと予言する書。資産運用をしている人は必読!

【ポスト・ブック・レビュー この人に訊け!】
森永卓郎【経済アナリスト】

エブリシング・バブルの崩壊

エミン・ユルマズ 著
集英社 1760円
装丁/宮坂 淳(Snowfall)

米国株価が大暴落した後の日本株は買いか?

 1年半ほど前から、私は米国株がバブル状態にあることを警告し続けてきた。しかし、その後も順調に上がる株価に、私はオオカミ少年の扱いになった。ところが最近になって、米国株価の崩壊を予言する本が、何冊も出されるようになった。なかでも、本書の現状認識は、私の見方と非常に近い。
 まず、いまの米国株の株価売上倍率は3倍で、適正とされる1倍と比べて極端な高値だと著者は言う。バフェット指数やシラーPERといった他の割高指標で見ても同じことが言えるので、米国株が異常に高いことは間違いない。しかも、本書のタイトルでもある「エブリシング・バブル」が生じている。株式だけでなく、石油や小麦や木材など、あらゆる商品が大きく値上がりしているのだ。
 そうしたことの原因は、リーマンショック以降、世界に広がった金融緩和で低金利の資金が大量に供給されたことだ。その資金が投機に向かっているのだ。また、著者の指摘で重要なのは、借金をして投機をする、あるいは借金をして自社株を買うといった「てこの原理」を使った手法がまん延していることだ。そうやって生じたバブルは、いずれ大崩落を起こす。
 しかも、崩壊は間近だと著者は主張する。高インフレに耐えかねたアメリカが、急速な金融引き締めに舵を切ったからだ。
 ここまでは、著者の見方に全面的に賛成なのだが、一番驚いたのは、バブル崩壊への対処法だ。著者は、日本株を推奨しているのだ。米国株の下落で、日本株も一時的に下落するが、その後日本株は上昇するだろうと言うのだ。確かに、米国株と比べて日本株は割安だ。また、ここのところの円安で、海外投資家にとっては、もっと割安になっている。習近平政権の共同富裕政策を嫌って、中国富裕層のマネーが流入してくる可能性もある。私自身は、米国株の暴落後は、世界恐慌になると考えているのだが、著者はインフレ継続の可能性があるとみている。いずれにせよ、資産運用をしている人は必読の書だ。

(週刊ポスト 2022年5.27号より)

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