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『いつまでも若いと思うなよ』

【今を読み解くSEVEN’S LIBRARY】話題の著者に訊きました!

橋本治さん

OSAMU HASHIMOTO

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1948年生まれ。’77年『桃尻娘』で作家デビュー。小説や古典の現代語訳、評論、エッセイなど多彩な執筆活動を行う。62才の時に血管炎という難病に。近著に『負けない力』『義太夫を聴こう』など。月刊『ちくま』で社会時評「遠い地平、低い視点」を連載中。

 

自らの老いや

幾多の病気、そして

借金と貧乏を軽妙かつ

赤裸々に綴り、年寄りに

ついて考えたエッセイ

『いつまでも若いと思うなよ』

いつまでも若いと思うなよ

新潮新書 799円

自らに起きている「老い」の実相を赤裸々に綴りながら、世の中で言われている他人事としての「老い」や、「老人になること」の意味を軽やかに分析した。『新潮45』の連載「年を取る」に加筆したもの。「返済が終わったら? う〜ん、何も変わらないんじゃないかなぁ。完済前にどうにかなるかもしれないし、わからないなぁ」。

 

40才で組んだ2億円弱

の30年ローンを今も。

「ずっと書くつもりだから

借金したんです(笑い)」

 

「はじめは老い一般の話を書いてて、そうするとお前はいい年をして何言ってんだ、ってことになるだろうから、ちなみに私は‥‥って自分の悲惨な話を書いたんです。他人のじゃなく自分のだからいいでしょ、って、ある種、アリバイみたいなものですね」

 

バブルのピークにマンションを買って、1億8000万円ものローンを背負う。ただでさえ働きすぎなのにそのマンションの理事長を押し付けられ、過労で入院すれば、数万人に1人の難病と診断される。わが身に起きた数々の災難を、橋本さんはじつに淡々と描く‥‥どころか面白がってませんか?

 

「病院って不思議なところで、難病度が高い人ほどエバれるんですよね。若かったら早く治んなきゃって焦るけど、私は年寄りだからしょうがないよな、って思ったし。理事長は、一応作家だから経験しといたほうがいいかな、って。人間あまりにも忙しいと断るということができなくなるんですよ。そういうこともわかるので、やっぱり経験しておいて損はないです(笑い)」

 

命にかかわる大病をして、橋本さんに何か変化はあったのだろうか。

 

「ああ、人間いつ何が起こるかわからないんだな、ってことは体でわかりましたね。足がふらついて、階段で足踏み外してコンクリートで頭打って、明日死んじゃうかもしれない‥‥だからどうだってこともないんですけど」

 

社会のある断面を思いがけない角度で切り取って見せ、時に反転させる。時評やエッセイのキレ味は相変わらず鋭く、いつのまにか入院前と変わらない仕事量をこなしている。

 

「貧しくて病を抱えた老人っていう三重苦の人なんだから仕事できません、って言うと、編集者が『そうは見えません』って。見える見えないの問題じゃないんだってば。社会時評なんて、本当は若い人にやってもらわないと困るんですよ」

 

40才で30年ローンを組んだとき、完済したら自分はもう老人だ、と思った。その70才まであと2年半。書斎にうず高く積まれた手書き原稿の束の、1枚1枚が返済に充てられてきたのかと思うと感慨深かった。ひょっとしたら、この借金があったために、橋本さんの質量ともに超人的な仕事がのこされたのでは?

 

「それは逆です。ずっと書くつもりだから借金したんです。なんでそんなに仕事するんですか、って聞かれたときに、借金返さなきゃいけないからです、って答えると簡単じゃないですか。日本の作家で貧乏経験してないのって問題じゃない?って、結局、何考えてるのかよくわかんない人ですね(笑い)」

 

素顔を知るための

SEVEN’S

Question+1

Q1 最近読んで面白かった本は?

本、読まないんですよ。『学問のすすめ』についての連載しながら『学問のすすめ』を初めて読む人ですから(笑い)。

 

Q2 最近気になる俳優は?

戸田恵梨香。

 

Q3 最近気になる出来事は?

年寄りのめちゃくちゃな運転による事故が続いてるけど、どうして運転する当人はいつも無事なんだろう。

 

Q4 最近老いを感じることは?

不機嫌になること。外出するときはマスクをするんだけど、疲れると、マスクの上から口が動いているのがわかるぐらいの罵り方をします。

 

Q5 最近ハマっていることは?

なんにもないです。

 

Q6 いちばん楽しい瞬間は?

ないです。何もしないでいられたら楽だなと思ってるだけです。

 

Q7 最近、散財したものは?

それもないですよ。夏の日傘、夜は必要ないからうっかり忘れたりして毎年1本買ってるんですけど、1万円が無意味になくなるのって散財ですね。

 

Q+1 次のテーマは?

10年ずつ年の違う6人を主人公に戦後というものを小説で書いてみようかと。

(取材・文/佐久間文子)

(撮影/三島正)

(女性セブン2015年12月3号より)

 

 

 

 

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