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【茨城県民マンガ】だっぺ帝国の逆襲 〈第3回〉まさか!! 県民の夢「常総新幹線」が実現!? 漫画/佐藤ダイン 監修/青木智也

ご老公・水戸慶国の指示で県内の交通事情を調べに行く3人。根っからのオタクであるハチは「歩く時刻表」として五月たちに貢献。路線図を眺めていたダイゴは画期的(?)なアイデアを出すが……。寄せ集め3人組の漫遊記第3弾! [隔週掲載]

茨城の電車は最新式!?

だどなぁ。
みんな、「ほしいも」食ってっけ?
冬はコダヅん中さ入って
「ほしいも」と「みがん」食うのが当だりめだっぺよな。
そうそう、こないだ常磐線に乗ってだらよ
東京モンが「電車が着いたのにトビラが開かない!」って
パニックになってたんだわ。
土浦以北じゃ、電車のトビラはボタンで開げんだってごど知らねーんだよ。
まったぐ東京モンはごじゃっぺだなやぁ。
とくにこっつぁみー(※)季節は、この方式がホントありがてーどな。
やっぱし茨城は、東京よっか進んでんなぁ
え、東京の青梅線や八高線もそうだって?
群馬や栃木では当たり前だって?
フンっ、チグ抜いでんじゃねーよ、このカッペが!

※こっつぁみー――「こっ」は強調の言葉。それに「さみー(寒い)」が付くと、「クソ寒い」という意味に。
※チグ抜く――「チグ」は「ウソ」。「チグを抜く」で「ウソをつく」という意味に。

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マンガ中の記号(※1)などは、マンガのあとに出てくる“県民も知らない茨城の秘密”「だっペディア」の番号と対応しています。

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だっペディア 第3回

マンガに登場するローカルな用語などを、徹底解説!
これであなたもイバラキアン(茨城人)の仲間入りだ!

 

■(※1)ほしいも【名詞】

図1 全国シェア9割を誇る茨城のソウルフード。サツマイモを収穫したあとに加工するため、製品化されるのは冬。シーズンになると地元のスーパーマーケットなどで、さまざまな商品が山積みされる。コタツにあたりながら、「ほしいも」をあぶって食べるのが県民の正しい冬の過ごし方だ。サツマイモを板状にスライスして天日干しにする「平干し」が一般的だが、ツウは、細めのイモをそのまま干す「丸干し」を好む。ちょっと高いけど。
 地元では昔から「かんそういも」「かんそいも」と呼ばれていて、ほしいも最大の生産地ひたちなか市で行われる「勝田マラソン」では、「完走」すると「かんそういも」がもらえる。シビれるようなセンスだ。
 とはいえ、発祥は茨城ではなく、じつは明治時代に静岡から伝わったもので、あるときを境に静岡を抜き去り、トップへ駆け上がっていったのである。茨城が本気を出せば、このほしいもや納豆のように圧倒的なナンバーワンを生み出していくことも大いに可能だっぺよな!

 

■(※2)アピール下手【感嘆詞】

図2 東京という最大の消費地に近く、温暖な気候と平坦な土地に恵まれた茨城は、なんでも作れて、作っただけ売れてしまうので、長いあいだ農産物などを「おいしいですよ、買ってください」などとアピールする必要性を感じることがなかった。ところが、時代はとっくに変わっており、「なぜこれを買うべきなのか」をきちんと説明できなければ、見向きもされなくなってきている。前項の「ほしいも」だって、安い中国産が伸してきているのだ。
「だっぺ帝国」茨城県が「逆襲」に出るためには、まずアピール上手にならないといけない。けっして道のりは平坦ではないが、なんの、がんばっぺ!

 

■(※3)水郡線【固有名詞】

図3 水戸から郡山(福島県)までを結んでいるローカル鉄道。久慈川や阿武隈川に沿って走る風光明媚な路線だが、いかんせん雨、風、雪などの自然災害に弱い。のみならず、周囲の竹林が倒れてきては止まり、イノシシが列車に衝突してはストップする。
 2019年の台風19号では橋が流失したりして、いまだに一部区間が運行再開できていない。

 
 
 

■(※4)東京に浸食【地理】

図4 茨城の県南、県西地区の一部、つまり、牛久(常磐線)や古河(宇都宮線)あたりまでと、つくばエクスプレス沿線は東京への通勤圏となっており、周辺住民は「茨城都民」と呼ばれる。さらに、ネイティブ・イバラキアンがより良い労働条件を求めて都心へ通う「第一種茨城都民」と、もともと都内に住んでいた者がより良い(安い)住宅環境を求めて茨城に転居してくる「第二種茨城都民」とに分けられる。
 第一種が単に東京からの「外貨獲得」を目的としていることに対し、第二種はそもそも茨城への帰属意識が低く、元東京人としての「選民思想」を持ったまま茨城に入植する者が大半。いきおい、無垢なネイティブへの影響は避けられず、エリア一帯が第二種に毒されてしまうケースも多い。こうした地域では茨城弁が絶滅しそうだっぺよ(泣)

 

■(※5)「いばらぎ」「いばらき」【国語】

図5 テレビアニメ「美味しんぼ」第1回では「あん肝はフォアグラよりも美味い」という有名なエピソードが登場する。あんこう漁のために船を出した場所は「茨城県・那珂湊沖」。これがわざわざルビ入りで「いばら()けん」と表示されていたのだ。当時いかに茨城が「いばらぎ」であると認知されていたかを示す重要な映像資料となっている。
 この流れを変えたのが2004年に発売された拙著『いばらぎじゃなくていばらき』で、この本は茨城県内で4万部を超えるベストセラーとなった。このヒットを機に「どうやら『いばらぎ』じゃないらしい」という情報が口コミやネットで広まり、テレビのバラエティ番組などでも「いばらぎ」といわれることはほぼなくなった。でも油断してはいけない。放っておくと、またぞろ「いばらぎ」と声高に叫ぶ人が出てくるだろう。
 え? 県民自身が「いばらぎ」って言ってたって? 茨城の人は「か行」と「た行」が濁音化しっちゃーがらよ。しゃーんめよ~。

 

■(※6)真岡鐵道【固有名詞】

図6 茨城県筑西市の下館駅から栃木県茂木町の茂木駅を結ぶ鉄道路線で、週末や祝日にSLが走ることで知られる。社名の「真岡鐵道」は本社の所在地(栃木県真岡市)にちなんでいるが、路線最大の駅は下館駅。真岡鐵道真岡線(といっても真岡線しかない)約42㎞のうち8.5㎞は茨城県を走っている。
 ちなみに下館駅はJR水戸線、関東鉄道常総線、真岡鐵道真岡線の3路線が交わる県西地区最大のターミナル駅。え、「下館」なんか知らないって? 戦国・江戸の世には城が築かれていた由緒ある土地で、あの茨城のなまりの天才マジシャン・マギー司郎を輩出したといえばピンと……こないか。

 

■(※7)なんでそう読むのかわからない【地名】

図7 市町村合併などで古い地名が姿を消しているところもあるが、茨城にはどう読むのか想像もつかない難読地名がまだまだたくさん残っている。一例を挙げると……

木葉下=あぼっけ(水戸市)
つくば市の大角豆(ささぎ)と並んで、茨城で最も有名な難読地名のひとつ。小松左京のベストセラー小説『日本沈没』で最後まで沈まずに残った場所。同書では「妙な読み方をする場所」と紹介されている。

女化=おなばけ(牛久市)
「じょか」「にょか」だと思った人はハズレ。女が化けると書いて「おなばけ」だ。男に命を救われたキツネが女に化け、嫁いで恩返しをする「キツネの嫁入り」伝説が由来らしい。結構、色っぽい地名だな。

七五三場=しめば(結城市)
「しちごさんば」としか読めないが、もちろん違う。「七五三縄」と書けば「しめなわ」で、しめ縄は正式には太い横縄に、藁の束を右から7つ、5つ、3つぶら下げるかたちだった。そこで「七五三」で「しめ」と読ませるらしい。

小浮気=こぶけ(取手市)
小さくても浮気はいけません!……と言いたいところだが、小浮気は浮気とは関係がない。「浮気」と書いて「ふけ」と読ませる。国土交通省のWebサイトによると地名に「カワチ、フカ、フケ」などがつくところは「過去に水害を経験した土地」で、実際に利根川と小貝川に挟まれたこの地も、堤防が築かれるまでは何度も水害を経験しているとか。やっぱり古い地名って、次世代への警鐘の意味も込められているんだなぁ。

 

■(※8)北水海道【固有名詞】

図8 関東鉄道常総線の駅名。ただでさえ「水海道」が北海道っぽいのに、さらに北がついてしまうのだから、その北海道感といったらハンパない。
 ちなみに「水海道」の由来は諸説あるが、坂上田村麻呂がこの場所で馬に水を飲ませたことから、水飼戸(ミツカヘト)と呼ばれるようになったという説が有力。読みが「みつかいどう」になったのがいつからかは定かではないが、明治時代の駅の写真を見ると「みづかいだう」と表記されていた。
 茨城弁は「小遣い→こつかい」「預ける→あつける」など「づ(ず)」が「つ」に変化することが多いため、茨城なまりで「みづ」が「みつ」に変化したのかも。げっ、駅名までなまってんのげ!?

 
 

■(※9)新幹線がない【感嘆詞】

図9 どうか間違えないでほしい。茨城県にも新幹線は通っている。ただ、ハチの言うとおり、止まるべき駅がないため、通過してしまうだけのことである。
 新幹線の線路はあるのに止まらない県は、全国でも茨城のみであるのはいうまでもない。ナンバーワンじゃなくてオンリーワンである。いやどうも!
(いやどうも――「いやそれほどでも」「いや大変だ」「(ちょっと謙遜して)スゴイでしょ」「どうもすみません」「どうもありがとう」「いやそれはちょっと」「どうもこんにちは」などさまざまな意味に変化する魔法の言葉。この場合は……想像してみてください)

 

だっぺ帝国の逆襲は隔週掲載です。
次回は1月20日(月)に公開予定です。

 

プロフィール

 
sato
■漫画:佐藤ダイン(サトウ/ダイン)
1984年、茨城県大子町出身。芸術系の大学在学中から漫画誌に投稿を続ける。サラリーマン生活、漫画家のアシスタントを経て、『桃色な片想い』(『月刊!スピリッツ』)でデビュー。2016年、『僕に彼女が出来るまで』が『ふんわりジャンプ』で連載、単行本化される。
 
aoki
■監修:青木智也(アオキ/トモヤ)
1973年、茨城生まれ。東京でサラリーマン生活を経験するも、茨城にUターン。フリーのライター、コメンテイター、ラッパーとして活動を続ける。WEBサイト「茨城王(イバラキング)」を立ち上げるかたわら、常総ふるさと大使、いばらき統計サポーター、茨城県まちづくりアドバイザーなどとしても活動。ラヂオつくば等でパーソナリティも務める。
著書『いばらぎじゃなくていばらき』(茨城新聞社)が13刷、4万部を超える大ヒット。

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