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萩谷麻衣子の「幸せになれる離婚の作法」 ~“お金と子ども”の不安を解消します!~【第4回】

夫婦で軽く口論していると、何も知らないのに夫の肩を持ち、料理にも文句をつけて、これ見よがしに店屋物をとる高圧的な義両親とマザコン夫。もう耐えられそうにないのだけれど、義両親との不仲が原因で離婚ってできるの?

萩谷麻衣子(はぎや・まいこ)
1988年、慶応義塾大学法学部卒業。2004年に萩谷麻衣子法律事務所を設立。とくに家族問題など生活に密着した法的問題や人権問題、刑事事件に力を入れて取り組んでいる。
テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、TBS「Nスタ」などでレギュラーコメンテーターを務めるほか、「ビートたけしのTVタックル」「朝まで生テレビ!」などにも出演。
わかりやすい法律解説や、その知見に基づく社会評論が幅広い支持を集めている。

■相談file4

パワハラ体質の義両親と
頼りにならないマザコン夫

(滋賀県在住 K・Kさん)

 45歳の女性です。5歳年上の夫と2人の子ども(上が18歳の男の子、下が14歳の女の子)、そして夫の両親の6人家族です。
 結婚したのは20年前ですが、当初から夫のマザコンぶりというか、義両親の言いなりになっているところが不満でした。私たち夫婦が、軽く言い争いをしているとき、義両親が飛んできて、こちらの事情もよく知らないまま夫の肩を持ちます。
 夫婦のことなのだから放っておいてほしい、というと、「あなたがそんな態度だから、ケンカになるんだよ」と決めつけられます。
 また、家族の食べ物は基本的に私が料理していますが、夫はともかく、義両親のクレームが絶えません味付けやいろどり、栄養などについてネチネチと文句を言ってきます。私はアルバイトをしており、ときには手抜き料理をすることもありますが、私がつくったものを気に入らないときには、料理ができているにもかかわらず、これ見よがしに店屋物を頼んだり、外食に行ってしまったりします。

 こんな環境にがまんができないので、両親と別居してくれるよう夫に頼んでいますが、「80歳近い両親を放り出すなんて、お前には人の心がない!」の一点張りです。最近では病院で処方してもらった精神安定剤が手放せなくなっています。
 私はこのままがまんし続けなければいけないのでしょうか? いっそ、離婚した方が幸せになれるのではないかと思っています。 

■萩谷弁護士のスッキリ回答!

離婚を認められる可能性はあるけど
子どもを交えて話し合ってみて

義両親が原因で離婚できる条件は?

 配偶者の親とそりが合わず家庭生活がぎくしゃくしてしまうケースは案外多くあります。あなたの言い分を見ると、夫婦二人だったらもしかしたらうまくいっていたかもしれないですね。
 同居している義両親から日常的にクレームを言われたり人格を傷つけるような行為をされるのはとてもつらいことでしょう。本来は、夫と共に義両親と話し合いをするべきだと思いますが、このようなご相談をされるということは、それも難しい状況なのだとお察しします。また、夫に「どうにかしてほしい」と相談しても、あなたが責められる状態ではなかなか改善も見込めません。
 夫の親の言動が原因で精神安定剤を処方してもらわざるを得ない状況とのことですので、あなたが離婚を考えるのも理解できます。

 問題は、夫の両親のあなたへのいじめや嫌がらせを理由に、夫と離婚できるか、ということです。
 あなたから夫に対して離婚の申し入れをした場合、夫が離婚に応じてくれれば協議離婚をすればいいですが、夫のほうはあなたが我慢していることを重くみておらず、離婚などまったく考えていないということも考えられます。あなたは離婚しなければ耐えられないけれど夫が離婚に応じてくれない、ということなら、最終的には離婚裁判をして裁判所に離婚を認めてもらうしかありません。
 裁判所に離婚を認めてもらうには、民法第770条第1項の1号から5号に列挙された事由に該当する必要があります。あらためて確認しておきましょう。

民法第770条【裁判上の離婚】
第1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
①配偶者に不貞な行為があったとき。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

 夫の親との不和については、⑤の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが問題となります。
 この点、古い判決ですが、義両親との不和に夫が協力しないことが婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとして離婚を認めた裁判例があります(名古屋地裁 1968年1月29日判決)。
 あなたのケースと同じく、夫の両親が妻に対し日常的に小言を言うようになるなどして不和が生じた案件ですが、夫は妻に対して積極的に冷遇するようなことはしなかったものの、家庭内のことにはまったく無関心。妻と夫の両親との度重なる不和にもかかわらず、一度も両親との仲を取り持って、家庭の円満を取り戻すような努力をしたことはありませんでした。そこで婚姻関係を維持するための誠意を示さなかったと認定され、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」として、裁判所が妻からの離婚の請求を認めたものです。
 また、夫婦関係が破綻したのは夫の非協力的な態度に原因があるとして、夫から妻に対して慰謝料を支払うように命じました
 もうひとつ、これも古い判決ですが、夫の両親がいわゆる「嫁いびり」を続け、それに対し夫は積極的に妻と両親との間に立ってその調整を図ろうとしなかったばかりか、不相当な方法で妻のもとから子を連れ去ったことなどが夫婦関係を継続し難い重大な事由に当たるとして、妻からの離婚請求を認めたケースがあります(盛岡地方裁判所 1977年1月26日判決)。こちらも、夫から妻に対する慰謝料が認められました。
 このように、夫の親から妻に対し日常的に小言、クレーム、人格を否定するような言動などのハラスメント行為がありそれが悪質である場合、夫がそれを解消すべく努力する姿勢を見せなければ夫に責任が認められますし、その結果、夫婦関係が破綻して妻から離婚請求をした場合には、民法770条第1項5号の婚姻関係を継続し難い重大な事由があるものとして離婚が認められます。夫や夫の親の行為は、妻に対する不法行為として、慰謝料の支払いも認められる場合があります

夫婦関係が破綻しているかがカギに

 さて、あなたの場合ですが、あなたがどうしても離婚したい場合、裁判所は離婚を認めてくれるかを検討してみます。
 まず、夫の親からあなたに対する悪質なハラスメント行為があったか、が問題になります。夫と喧嘩をしていると必ず夫の肩を持つ、あなたの料理にネチネチ文句を言ったり、気に入らないとこれみよがしにデリバリーを頼んだり外食したりする、ということが数年に及んで日常的になされている状態で、文句の言い方もあなたの人格を傷つけるような言葉遣いであるような場合は、耐えがたい悪質なハラスメント行為があったと言えるでしょう。
 ただし、そのようなハラスメント行為があった証拠をあなたのほうで裁判所に提出する必要があります。録音、LINEやメールなど記録も証拠になりますし、それらの行為を目撃していた知人が複数人いることなども証拠になり得ます
 さらに、夫が親とあなたの不和を解消するべく努力をしなかったという事実も必要です。あなたが夫に対し、夫の親と別居をすることなど何度も対処方法を相談したのに、夫がまったく意に介してくれなかった、あるいはかえってあなたが悪い、我慢が足りないなどと夫から責められたということを、録音などで証明する必要があります。

 そして、夫の両親のハラスメント行為と、夫のひどい態度によって、夫婦関係が破綻しているかどうかも問題となります。
 この点、夫と同居している状態だと「夫婦関係が破綻した」と認定してもらうのは一般的には難しくなります。先に挙げた離婚が認められた裁判例は2件とも、妻は夫とすでに別居をしているケースでした。同居をしていても、たとえば二世帯住宅で、夫は両親と生活し、妻は夫と寝食をまったく別にしているような場合には家庭内「別居」が認められるでしょう。
 なお、経済的事情や子どものことでどうしても別居ができず、耐え難い状態で同居を継続しているが、そのために精神安定剤に頼らざるを得ない状況だということが医師の診断書やカルテの記載などで証明できれば、「夫婦関係は破綻している」と認定される可能性もあります。夫側の責任で夫婦関係が破綻している状態だと裁判所が判断すれば、あなたの離婚請求は認められますし、夫に対しあなたへ慰謝料を支払うよう認める判決になると思います。

 気になるのはお子さまのことです。14歳と18歳なので祖父母とあなたとの関係もわかっていると思いますし、子どもなりに思うところがあるはずです。夫婦の問題に子どもを巻き込むのはよくありませんが、あなたが義父母との関係さえ解決すれば、まだ家庭を維持していけるかもしれない、と少しでも思っているなら、お子さまも交えて家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
 たとえば、「家族のために、祖父母と少し距離を取ろう」とお子さまから言ってもらえたら、夫が目を覚ましてくれるかもしれませんので……。

※この連載では、なかなか相談しにくい離婚に関する悩みや相談をお受けしております。
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