【新連載】池上彰・総理の秘密<2>
早くも大反響の連載「総理の秘密」の2回目。韓国の朴槿恵政権の動向や、アメリカのトランプ政権スタートに向けての動きなどに世界中の注目が集まる中、日本の総理大臣の動静からも目が離せない。そこで、総理にまつわる豆知識を、ジャーナリストの池上彰がわかりやすく解説! ニュースでよく耳にしていながらも、正確な意味が曖昧な、「総理官邸」と「総理公邸」の違いとは? 知っておくとニュースがもっと良くわかるようになる、必見のコラム。

「総理官邸」と「総理公邸」の違いは?
毎日のようにテレビニュースで流れる総理の動静。総理官邸に出勤する光景の映像が流れます。ここが総理の仕事場だからです。
では、総理はどこに住んでいるのか。それが「総理公邸」(首相公邸とも)です。
ここは特別公務員である総理大臣の宿舎ですから、正式には「総理大臣官舎」。国家公務員宿舎法という法律にもとづいています。
2005年(平成17)4月、新しい総理官邸と総理公邸が完成しました。総理公邸と総理官邸は廊下でつながれ、総理大臣は、雨に濡れることなく出勤できます。仕事場と宿舎を分けているのですね。ちなみにアメリカのホワイトハウスは、同じ建物の中に大統領執務室と大統領の居住区があります。
新しい総理公邸は、それ以前に使われていた総理官邸を移動させて改築・改修し、外国からのお客さんをもてなす部屋などが新設されました。太陽光発電、風力発電なども導入されています。
古い官邸と公邸があった時代は、総理に就任しても公邸に入らず、都内の自宅から毎日出勤する人もいましたが、「公邸に住むと政権が長続きする」というゲンをかついで公邸暮らしをする人が増えました。でも、現・安倍政権以前は長続きしない総理が相次いでいるのは、ご承知の通りです。
古い総理公邸は、五・一五事件や二・二六事件の舞台となり、死傷者も出ていることから、「幽霊が出る」と言われていました。実際に、それらしきものを見た総理や総理の家族もいました。私は、「見た」という人から直接話を聞いたことがあります。このため、入居するときには神主を呼んで御祓いする総理もいました。
古い公邸時代は、女子トイレの床下から伸びる緊急脱出用トンネルがありましたが、現在はなくなりました(そのはずです)。
池上彰 プロフィール
いけがみ・あきら
ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。報道記者として事件や事故、教育問題などを取材。「週刊こどもニュース」キャスターを経て、2005年に独立。著書に『そうだったのか! 現代史』『伝える力』『1テーマ5分でわかる世界のニュースの基礎知識』ほか多数。
現在の総理官邸
東京都千代田区永田町2丁目にあり、国会議事堂のはす向かいに位置する。この地に総理官邸が建設されたのは、関東大震災後の昭和初期から。
写真提供/内閣広報室

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