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池上彰・総理の秘密<5>

大好評の連載「総理の秘密」の5回目は、「首相と大統領の違い」について解説する「後編」。行政のトップが各国によって異なることは、前回までのコラムで触れた通りだが、では、大統領と首相、果たしてどちらのほうが実力者なのか? 国の憲法によってその運用は異なるが、ロシアを例にとって見てみると……? 知っておくとニュースがより面白くなる、必読のコラム。

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首相と大統領の違いは?(後編)

首相と大統領の違いの3回目です。アメリカは、大統領しか存在しないという特異な国家です。大統領は、国家元首げんしゅであり、同時に行政のトップです。なので、国務長官(外務大臣のこと)や国防長官などを集めた閣議かくぎ主宰しゅさいします。

大統領が連邦議会で演説する際は、大統領は国家元首としてぐうされ、演説に野次やじを飛ばす議員はいません。演説が終わると、与野党議員全員が立ち上がって拍手します。

こうした光景は、イギリス議会でエリザベス女王の挨拶あいさつに野次を飛ばす議員がいないのと同じです。日本の議会でも、天皇の挨拶に野次を飛ばす議員はいませんよね。

しかし、かつてオバマ大統領の演説中に共和党議員が野次を飛ばしたことがあり、これが大問題になりました。議員はその後、謝罪に追いこまれました。

大統領と首相の違いを利用する政治家もいます。ロシアのプーチン首相(大統領?)です。2008年、プーチン大統領は、連続2期計8年までの任期が終わると、自分の後継者にメドベージェフ副首相を指名。選挙でメドベージェフ大統領が選出されると、自分を首相に指名させました。憲法の規定を守りながら、自分の政治的影響力を保持しようとしたのですね。

こうなると、大統領と首相のどちらが実力者かは明らか。首相の方が力が強いという不思議な光景が出現したのです。

メドベージェフ大統領の時代に、大統領の任期は、2012年に選出された人から6年に延長されることが決まりました。プーチン首相は、この選挙に出馬し、ふたたび大統領になり、権力を振るっています。もし2期つとめれば、さらに6年、2024年までトップの座に君臨することになります。憲法の規定がどうであれ、要は運用次第なのですね。

池上彰 プロフイール

いけがみ・あきら
ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。報道記者として事件や事故、教育問題などを取材。「週刊こどもニュース」キャスターを経て、2005年に独立。著書に『そうだったのか! 現代史』『伝える力』『1テーマ5分でわかる世界のニュースの基礎知識』ほか多数。2012年、東京工業大学教授に就任。16年より名城大学教授、東京工業大学特命教授。

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メドベージェフ大統領(左)とプーチン首相
2011年11月27日、プーチンは与党・統一ロシア党の大会で次期大統領候補に指名され、公式に大統領選をスタートした。13歳年下のメドベージェフは、プーチンと同じサンクトペテルブルグの出身。写真/AP、アフロ

(『池上彰と学ぶ日本の総理5』小学館より)

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