池上彰・総理の秘密<21>
比較的安定政権だと言われている、安倍内閣。数字で見ると、どのくらいの国民に支持されているのでしょうか? 内閣支持率や政党支持率には、国民の政治への意識がダイレクトに反映されます。社会的に関心の高い時事問題や、日々の政治情勢によって、細かく推移するその数字の見方を、池上彰がわかりやすく解説します。知っているとニュースがより面白くなり、他の人に自慢したくなるコラム。

内閣の今後を占う「50%の方程式」
安倍晋三総理は、いつ解散総選挙に打って出るのか。政界関係者は今後の行方に目を凝らします。ここで注目されるのが「50%の方程式」です。内閣支持率と、その内閣を形成している政党の支持率の合計が50%を割り込むと、政権の運営はむずかしくなり、総理は退陣に追い込まれる可能性が高くなるというものです。
これを提唱したのは自民党の青木幹雄・元参議院議員会長です。さすが選挙に強い竹下登元総理の秘書だったことはあります。50%を切れば不安定になるとすれば、いくらなら政権は安定するのか。それは内閣支持率と政党支持率の合計が100%を超えたときだそうです。これなら安心して選挙に打って出られるというわけです。そんなに高い数字の内閣があったのかと思うと、あったのですね。
1996年(平成8)の小選挙区制度導入以降で見ると、2003年(平成15)の衆議院選挙のときの小泉内閣が、合計で100%を大きく上回っていました。もちろん内閣支持率は調査する新聞社や放送局によって異なりますが、どこも傾向は同じに出ます。
一方、もっとも低かったのは、2009年(平成21)の麻生内閣で合計は50%前後でした。これで任期満了の選挙になったのですから、敗北して政権交代になるわけです。
では、安倍内閣の数字はいかに? 2017年(平成29)3月実施の読売新聞社の全国世論調査によると、安倍内閣の支持率は56%、自民党支持率は40%。合計で96%です。2月の調査からは内閣支持率で10%、政党支持率で3%ダウンしていますが、「50%の方程式」に照らしてほぼ安定水準、解散総選挙にも打って出られる数字です。
政界関係者は、いつ安倍総理が伝家の宝刀を抜くのか、目が離せません。
池上彰 プロフイール
いけがみ・あきら
ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。報道記者として事件や事故、教育問題などを取材。「週刊こどもニュース」キャスターを経て、2005年に独立。著書に『そうだったのか! 現代史』『伝える力』『1テーマ5分でわかる世界のニュースの基礎知識』ほか多数。2012年、東京工業大学教授に就任。16年より名城大学教授、東京工業大学特命教授。
(『池上彰と学ぶ日本の総理21』小学館より)

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