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文学的「今日は何の日?」【3/2~3/8】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
3月2日から始まる1週間を見てみましょう。

3月2日

島原の乱を鎮圧した細川軍が熊本に引き上げる

文藝春秋の創設者としてもその名を遺す、作家・菊池寛。島原の乱鎮圧に向かった細川軍を描く『恩を返す話』において、寛永15年3月2日、役目を終えた細川軍が熊本に引き上げました。この戦いのさなか、神山甚兵衛は危ういところを同輩の佐原惣八郎に救われています。かねてから惣八郎を嫌っていた甚兵衛は、よりにもよって彼に命を助けられたことを屈辱と感じ、なるべく早いうちにその恩を返してしまおうとはやりますが……。武士の心得、戦場でのありようを、淡々とそしてユーモラスに描く短編です。

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3月3日

暦の刷新に命を賭けた渋川春海の半生を描く『天地明察』

2010年の本屋大賞受賞作、冲方丁『天地明察』は、貞享(じょうきょう)元年3月3日、勅命により採用が決した大和暦(元号から名をとって「貞享暦」と呼ばれる)の誕生までを描く歴史小説です。この暦を作製したのは幕府碁所の棋士で、天文暦学者としても名高い渋川春海(はるみ)(棋士としての名は安井算哲(さんてつ))。中国から輸入された(せん)(みょう)暦は、800年にわたって使われるうちにズレが生じ、農耕や祭祀に支障が出ることもあって、国産の正確な暦の登場が待たれていました。天文と数学にオタク的な情熱を燃やす春海の、改暦にかける生き様を描く冲方丁の代表作です。

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3月4日

これで出来なきゃ、日本は暗夜(やみ)だわ――お孝の啖呵が胸を打つ

明治から昭和初期にかけて活躍した小説家、泉鏡花の代表作のひとつ『日本橋』。医学生の葛木晋三は、雛祭りの翌日である3月4日の晩、栄螺と蛤を一石橋から日本橋川に放します。そこを巡査に見咎められ、「嬰児(あかご)を棄てたか」と執拗に問い詰められているところを救ったのは、葛木に思いを寄せる芸者・稲葉家お孝でした。お孝と、その葛木が恋する瀧の家清葉の名妓2人に、お孝の馴染み客・赤熊、妹分の半玉・お千世をからめ、花柳界ならではの人情を描きます。小説として発表されますが、のちに脚色されて劇団新派の代表作ともなりました。

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3月5日

古文書に思わず落涙。歴史学者が書いた感動秘話

テレビでも人気の歴史学者・磯田道史の小説『無私の日本人』において、明和3年の3月5日(こく)田屋(だや)(じゅう)三郎(ざぶろう)菅原(すがわら)()篤平(とくへい)()を訪ねました。ところは奥州街道沿いにある仙台藩の宿場町・吉岡宿。折からの不景気で町を離れる者が増え、残された者には重税がのしかかり……このままでは吉岡は潰れる、と危機感を抱いた2人が考えついたのは、なんとかして千両の金を用意し、藩主に貸し付けて毎年利息を受け取るという奇策。はたしてお金は集まるのか? 殿様は利息を払ってくれるのか? 史料の古文書を読んだ著者が思わず泣いたという、無私の心が町を救う感動の物語です。

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3月6日

「オルレアンの少女」ジャンヌ・ダルク、フランス国王太子に謁見

1429年のこの日、イギリスとの百年戦争に苦戦していたフランス国王太子シャルルのもとに、神の啓示を受けたという少女ジャンヌ・ダルクが現れます。ジャンヌは王太子の信を得て軍を任されるや攻勢に出てオルレアンの戦いに勝利、王太子は国王シャルル7世として即位します。しかし翌年5月、戦闘中にブルゴーニュ軍に捕らえられたジャンヌはイギリスに売り渡され、異端審問を経て、1431年5月30日に異端の罪で火刑に処されました。フリードリヒ・シラーの戯曲『オルレアンの少女』、ドミニク・アングルの絵画『シャルル7世戴冠式のジャンヌ・ダルク』など、数多くの芸術作品を生んだ乙女の伝説は、およそ600年前の今日、始まったのです。

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3月7日

謎につつまれた祖先の正体に迫った男が陥る狂気

クトゥルフ神話の創始者、H・P・ラヴクラフトの長編小説『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』において、1763年3月7日、ジョゼフ・カーウィンがイライザ・ティリンガストと盛大な結婚式を行いました。カーウィンは100歳超の年齢に見合わぬ若々しい風貌と、所有する農場で繰り返す奇怪な実験のため、人々から疎まれていました。彼の5代後の子孫にあたるチャールズ・ウォードは、ふとしたことからカーウィンの存在を知り、古い新聞記事や手紙を元に探り始めますが、次第に狂気に陥っていき……。著者の死後発見された作品ですが、現在では最高傑作のひとつに数えられています。

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3月8日

川端康成が無名の新人作家・三島由紀夫に礼状を送る

昭和20年のこの日、のちに日本で最初のノーベル文学賞受賞者となる川端康成が、当時まだ東京帝国大学の学生であった三島由紀夫に、彼の著作「花ざかりの森」を送られたことへの礼状を出しています。三島もこれに葉書を返し、日本を代表する2人の文学者の親交が始まりました。川端からは常に「三島由紀夫様」の宛名で送られますが、三島からの手紙の署名は本名「平岡公威(きみたけ)」。川端の推挙で文芸誌「人間」に短編「煙草」を発表したころから「三島由紀夫」の署名を使うようになります。2人の魂の対話は『川端康成・三島由紀夫 往復書簡』としてまとめられています。

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