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文学的「今日は何の日?」【3/30~4/5】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
3月30日から始まる1週間を見てみましょう。

3月30日

オオカミ様の“願いの鍵”探しが期限を迎える日

直木賞作家・辻村深月が2018年の本屋大賞を受賞した作品『かがみの孤城』において、この日は大変重要な日です。いじめのために不登校となった安西こころは、鏡の向こうにあるオオカミ様の「城」に、6人の子どもたちとともに集められます。オオカミ様は彼らに、願いを1つだけ叶えられる“願いの鍵”を探すよう命じます。その期限が来年3月30日なのです。しかも誰かが願いを叶えた瞬間、期限を待たずに城は消えてしまう……願いが叶うのは1人だけ。果たして、こころは鍵を見つけることができるのでしょうか? ラストのせりふ「大丈夫だから、大人になって」に号泣必至の、心にしみる名作です。

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3月31日

藤原道綱母が不仲の夫を避け、方違えにことよせて父の家に移る

日記文学の傑作として名高い『蜻蛉日記』。作者である藤原道綱母は、女房として宮仕えをしておらず、いわば専業主婦の日記です。夫・藤原兼家はのちに太政大臣にまで上りつめ人臣の位を極める人物。しかし彼女は正妻ではなく、また兼家にはさらにほかの女性の影もあり、諍いが絶えませんでした。それでも毎年元日には必ず来ていた兼家ですが、天禄2年の正月には訪れがなく、それどころか近所の別の家に通っている様子。たまりかねた道綱母は、3月31日方違かたたがえと言って父の邸に行ってしまいます。ところがそこに兼家から「今夜行く」と文が来て……。1000年の時を経ても変わらぬ男女の愛憎劇が胸に迫ります。

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4月1日

人道主義、理想主義、個人尊重を唱える同人誌「白樺」が創刊される

学習院中等科で親しかった武者小路実篤志賀直哉が中心となってスタートした同人誌「白樺」が、明治43年4月1日、初めて世に出ました。有島武郎や里見とん、柳宗悦むねよしといった学習院出身者らが集まり、やがて「白樺派」として日本近代文学の一流派を築きます。創刊号には武者小路実篤による夏目漱石『それから』の評をはじめ、小説では志賀直哉『網走まで』と正親おおぎまち公和きんかず『萬屋』、翻訳ものとして有島武郎によるシェンキゥウィッチ『西方古傳』、里見弴によるチェホフ『親族會議』が掲載されています。1923年に関東大震災によって途絶えるまで、160号が刊行されました。

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出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4003105044/

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4月2日

古井由吉の「たなごころ」の私が遅い春の訪れに、人生の老境を重ねて物を想う

2020年2月18日、82歳で世を去った芥川賞作家・古井由吉。彼の最後の作品となった連作短編集『この道』所収の「たなごころ」において、2017年4月2日、主人公「私」は自宅に花見の客を招きました。ですが、この年は春の訪れが遅れていて、住まいの南おもてにある桜はちらほらともしません。集まった客に「花のない花見になりましたが、これも一興でしょう」と挨拶する羽目になります。桜の花から、桜の名所・吉野山と和歌へと思いを馳せ、和漢の古典を交えて老境の思いを綴る、私小説的リアリズムの佳品です。

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4月3日

仕事を休んで、北原白秋の新刊を読みふけった石川啄木

1909年の4月3日、東京・本郷区森川町(現在の文京区弥生)に住む石川啄木を北原白秋のおばが訪ねてきて、白秋の新詩集『邪宗門』をもらったことが、啄木の『ローマ字日記』に書かれています。この1月ほど前に東京朝日新聞社の校正係として就業した啄木ですが、この日は「電車賃がないので」仕事を休み、夜の2時まで『邪宗門』に読みふけったとか。翌4日は日曜日ですが、5日に出社したかは不明。6日には出社して、会社から給料の前借をします。そのほか、𠮷原で買った娼妓たちの名前など、あまり人に知られたくないことも生々しく書き綴っているのは、ローマ字なら人には読まれまいという気安さでしょうか。

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4月4日

監視国家オセアニアでウィンストン・スミスが日記を書き始める

3つの超大国が分割統治する核戦争後の世界を描いた、ジョージ・オーウェルのディストピア小説の傑作、『一九八四年』。双方向通信デバイス「テレスクリーン」が常に市民を監視するオセアニアにおいて、1984年の4月4日、主人公ウィンストン・スミスは密かに日記をつけ始め、前の晩観た映画の感想を記しました。オセアニアでは独裁者ビッグ・ブラザーに都合の悪い記録はすべて改竄されているため、「物事の記録」はそれだけで大罪となり得ます。改竄だらけの記憶のなかで今が何年なのか、自分は本当に39歳なのか、確信が持てないことに気づき愕然とするウィンストンは……。

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4月5日

美濃部伊織と妻・るんの、離れて暮らしながらも互いを想いあった40年

明治の文豪・森鴎外の短編『じいさんばあさん』において、文化6年春、江戸の麻布竜土町に小さな空き家を修復した隠居所が作られました。そしてこの4月5日、1人の老人がやってきて暮らし始めます。すぐにあとを追って、老女が一緒に住むようになりました。この2人こそ、美濃部伊織とその妻・るん。夫婦としては遠慮がちな様子だともっぱらの噂でしたが、2人には40年の間、離れて暮らさなくてはならない事情があったのでした。宇野信夫の脚色で歌舞伎化され、1951年7月に東京と大阪の歌舞伎座で同時に初演。2人のこまやかな愛情に思わず涙がこぼれる作品です。

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