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文学的「今日は何の日?」【5/11~5/17】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
5月11日から始まる1週間を見てみましょう。

5月11日

「イタリア統一運動」でガリバルディ率いる赤シャツ隊がシチリア島に上陸する

巨匠ルキノ・ヴィスコンティの名作映画『山猫』。リソルジメント(イタリア統一運動)真っただ中のシチリアを舞台に、貴族社会の落日を描いたトマージ・ディ・ランペドゥーサの同名小説を映像化したものです。1860年5月11日、ジュゼッペ・ガリバルディ率いる義勇軍・赤シャツ隊が、シチリア島西端の港町マルサラに上陸しました。主人公・サリーナ公爵の甥タンクレーディはガリバルディ軍に参加、まもなく首都パレルモは解放されます。新体制への参加を拒む公爵と、身分の違いを越えて村長の娘を妻に迎え、新しい世に出ていこうとするタンクレーディ。映画では描かれない「その後」にも注目です。


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5月12日

三島由紀夫「詩を書く少年」で主人公が「一週間詩集」を書き始める

学習院に通う15歳の少年は、病気で1週間寝ていたときに「一週間詩集」を編みます。表紙に「12th.→18th. MAY 1940」と記した、学習院の校名入り雑記帳がすぐに埋まってしまったほど、すらすらと詩が浮かびます。彼は自身を天才と確信し、また先輩たちからも一目置かれるようになります。なかでも5年先輩で文芸部委員長のRとは、毎日手紙のやり取りをしているほどでした。ある日、そのRから若い人妻との恋の悩みを打ち明けられた少年が感じたこととは……。若き日の三島の、美意識の目覚めの瞬間を描いた小品。のちに自選短編集にも入れたほど、大切にした作品です。


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5月13日

平野啓一郎『ドーン』でJ・ダニエルの謎の死が、闇に葬られたスキャンダルに光を当てる

2009年にBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した、平野啓一郎の小説『ドーン』。2033年、佐野明日人あすとは宇宙船「DAWNドーン」で人類初の火星探査に成功し、一躍英雄となります。クルー仲間のリリアンは、父が共和党の副大統領候補に。民主党陣営の選挙参謀ウォーレンは、1996年5月13日生まれのID難民ジャック・ダニエルの不審死を追ううち、闇に葬られていた火星でのある出来事に気づきます。それはアメリカ大統領選挙を揺るがすスキャンダルへと発展し、明日人は否応なしに巻き込まれていくのでした。本当の自分とは何かを問う、「分人主義ディヴィジュアリズム」という概念を提唱し、人間の真の希望を問う感動長編です。


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5月14日

芥川龍之介「お富の貞操」で、官軍が上野の彰義隊への攻撃を予告、避難を呼びかける

明治元年5月3日の江戸城開城後、彰義隊は上野寛永寺に立てこもり、官軍に反抗する姿勢を見せていました。芥川龍之介の短編「お富の貞操」は、5月14日の昼過ぎに官軍が「明日夜の明け次第、東叡山彰義隊を攻撃する」と予告し、上野界隈の町人に避難するよう呼びかけるところから始まります。無人となった下谷町の小間物屋で、雨宿りをしていた乞食の新公。そこへ店の女主の命で、下女のお富が飼い猫・三毛を探しにやってきました。いくさ前の張りつめた空気のなか、人気のない店で向き合う男と女。新公は猫を渡す代わりに、お富の肉体を要求しますが……。


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5月15日

世界遺産・ランスの大聖堂のステンドグラス前で死体が発見される

深水黎一郎の「芸術探偵」シリーズ第3弾花窗玻璃はなまどはりは、フランスの古都ランスが舞台です。歴代フランス国王の戴冠式が行われてきたことで知られる、ランスの大聖堂を訪れた遊学中の神泉寺瞬一郎は、地元の老歴史学者ローランから、この大聖堂の小礼拝堂で半年の間に2人の死者が出たことを聞きます。1人は塔の屋上からの転落死。その半年後の5月15日には有名なシャガールのステンドグラスの前で、浮浪者が死んでいました。小礼拝堂は呪われていて危険だから近づくなというローランの言葉に、かえって興味をかき立てられた瞬一郎は……。19歳の瞬一郎が記した実験的な文体に酔わされる一編です。


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5月16日

「国民詩人」として親しまれた北原白秋が春の蝉を歌に詠む

明治、大正、昭和の3つの時代において、詩、短歌、歌謡、民謡など、幅広い分野で活躍し、「国民詩人」として親しまれた北原白秋。晩年には糖尿病と腎臓病により眼底出血を引き起こして視力が衰えますが、精力的に創作活動を続けました。1940年に発表した黒檜くろひには、研ぎ澄まされた聴覚や皮膚感覚で詠み上げた歌が収められています。「春蝉 五月十六日」と題した2首「春蝉の早や鳴きそむる我が山を向ひにもこの日じじと声立つ」「激しかる我がさがをしもことめて堪へ堪へて居れ蝉の鳴きいづ」は、晩春から鳴き始める蝉の声が響くような歌いぶりが心に残る作品です。


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5月17日

ヒッチコックでおなじみの『レベッカ』で、前妻が夫マックスに詩集を送った日

ヒッチコックの映画でおなじみの『レベッカ』ダフネ・デュ・モーリア作)。主人公の「わたし」は、富豪夫人の付き添い役として訪れたモンテ・カルロで、妻を海難事故で亡くしたイギリス貴族マキシムと出会います。あるときマキシムの車でホテルに送ってもらった「わたし」は、車にあった詩集を借りますが、本の扉には「マックスへ――レベッカより。五月十七日」の文字が。詩集は亡くなった妻レベッカからの贈り物だったのです。やがて後妻となる「わたし」は、屋敷のそこかしこに色濃く残るレベッカの影に、徐々に追い詰められていき……。繊細な心理描写が恐怖をかき立てる、ゴシック・ロマンの傑作です。


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