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文学的「今日は何の日?」【9/7~9/13】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
9月7日から始まる1週間を見てみましょう。

9月7日

関東大震災で大打撃を受けた生糸貿易業者が横浜公園で集会――永井沙耶子『横濱王』

生糸貿易で巨万の富を築き、「横浜のキング」と呼ばれた実業家・原三渓を、青年実業家・瀬田修司の目を通して描く永井沙耶子『横濱王』。大正12年9月1日の関東大震災は、当時、生糸貿易の拠点として栄えていた横浜にも壊滅的な打撃を与えました。店や倉庫、工場が焼けて在庫を失い、業者たちは途方に暮れます。そのうちのひとり、坂崎に、9月7日、生糸貿易業者で「貿易復興会」を始めようとの誘いがきます。指定された横浜公園に出向いた彼の前に現れた原三渓は「輸送路の確保と資金、大手の協力が必要だ」と言い、2日後には東京に出向いて政界、財界の協力を取り付けてきました。現代にも求められる真のリーダー像を描く一作です。


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『繭と絆』

 

9月8日

キム・ジヨンに初めて異常な症状が見られる――チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』

1982年生まれで、ごく平均的な人生を歩んできた女性キム・ジヨンを通し、女性が負う重圧や生きづらさを赤裸々に描いて絶大な支持を集めた、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』。結婚3年めで1女の母であるキム・ジヨンは、2015年9月8日の朝、突然、実母そっくりの口調と表情で喋り出し、夫デヒョンを驚かせます。さらに何日か経つと、自分は前年亡くなった友人だと言い出しました。その後も、デヒョンにはジヨンが他人と思えるような、奇妙な出来事が続きます。カウンセリングを通して明らかになるのは、制度的な性差別は解消されても残り続ける見えない差別、ガラスの天井の存在でした。国は違えど、ジヨンの思いに共感する女性は多いのではないでしょうか。


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9月9日

歌舞伎役者・中村仲蔵が工夫を凝らした『忠臣蔵・五段目』の初日の幕が開く

浪人の子として生まれながら美貌を見込まれて梨園に引き取られ、やがて大看板となった江戸の歌舞伎役者・初代中村仲蔵の生涯を、松井今朝子が鮮やかに描く『仲蔵狂乱』。明和3年9月の市村座の演目は『仮名手本忠臣蔵』の通し上演ですが、仲蔵に与えられたのは「五段目」の斧定九郎ただ一役でした。山賊のような野暮な扮装で現れ、あっという間に殺されてしまう端役です。しかし元をただせば、定九郎は家老の息子。お家断絶で浪人となり、物取りに成り下がった人物です。そこで仲蔵は、かつて見かけた荒んだ浪人者に似せて定九郎の服装や髪型を大胆に変え、役作りにも工夫を凝らしました。9月9日、幕内と観客の度肝を抜き、その後の「五段目」を一変させることになる初日の幕が開きます!


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9月10日

内閣総理大臣・田辺靖の辞任を受け、民政党が総裁選を告示――池井戸潤『民王』

参議院で憲民党に第一党を奪われ、国会のねじれ構造に苦しむ民政党政権。池井戸潤『民王』は、党首にして内閣総理大臣の田辺靖の辞意表明から始まります。党選挙管理委員会が決定した選挙日程は、9月10日告示、22日投開票。3人の有力議員が立候補しますが、党の長老・城山和彦の働きかけで前幹事長の武藤泰山が選出されます。内閣総理大臣に就任し、上々のスタートを切る武藤。しかし、衆議院での答弁のさなかに突然歯が痛み出し、気づくと大学生のバカ息子・翔と中身が入れ替わっているではありませんか。首相自ら、答弁用に用意された原稿の漢字を何度も読み間違えたうえ、閣僚の舌禍事件や醜聞に次々見舞われる難局を、入れ替わった父子は乗り切ることができるのでしょうか!?


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9月11日

夏目漱石『三四郎』の主人公・小川三四郎が入学した大学で新学期が始まる

日露戦争後の日本社会を一青年の目を通して描く『三四郎』は、文豪・夏目漱石代表作であると同時に、『それから』『門』へと続く前期三部作の最初の作品です。熊本の高校を出て、東京帝国大学に入るために汽車で上京した、23歳の小川三四郎。大都会・東京の賑わしさに翻弄されながらも、同郷の先輩で理科大学(現在の東京大学理工学部)で教鞭を執る野々宮宗八の知遇を得るなどして、新生活に踏み出していきます。その三四郎が入った大学の新学年が始まるのが、9月11日。2011年に当時の東京大学総長・濱田純一が秋入学構想を提唱して話題となりましたが、三四郎の時代は9月入学だったのです。会計年度に合わせるなどの理由で東京大学が4月入学に変わるのは、大正10年のことです。


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9月12日

アン・シャーリー、ギルバート・ブライスに手紙を書く――モンゴメリ『アンの幸福』

1908年に発表されるや、夢見がちで明るくおしゃべりな主人公アン・シャーリーが多くの読者の心をとらえた『赤毛のアン』。かのマーク・トウェインが作者L・M・モンゴメリに宛てて、アンを絶賛する手紙を出したほどでした。『アンの青春』など数多くの続編もあり、少女から孫を持つ年齢に至るまでを描く大河小説となっています。このうち『アンの幸福』は、中学校の校長を務めるアンと、大学で医学を勉強中の婚約者ギルバートの3年間を描いたもの。9月12日にアンがギルバートに送った長い手紙から始まります。第1作での最悪の出会いから10年あまりを経た、愛を育む2人の心温まる物語です。


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9月13日

道尾秀介『龍神の雨』で台風による激しい雨のなか、溝田兄弟が万引きで捕まる

継父と暮らすそえ木田ぎだれんと妹・楓、継母と暮らす溝田辰也と弟・圭介の、兄弟2組の運命が交錯する5日間を描く、道尾秀介大藪春彦賞受賞作『龍神の雨』9月13日、関東地方は台風の影響で、龍神が降らせるかのような激しい雨に見舞われていました。蓮が勤めるさいたま市内の酒屋「レッド・タン」で万引きをし、店主・半沢の留守を預かる蓮に捕らえられた溝田兄弟。2人の複雑な家庭事情を察した蓮は一度は見逃そうとしますが、ふてくされた態度の辰也はあくまで継母・里江への通報を求めます。ちょうどその頃、楓の身の上にもとんでもない事件が起きていました。それを知った蓮は……。


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