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文学的「今日は何の日?」【10/12~10/18】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
10月12日から始まる1週間を見てみましょう。

10月12日

イングランド王の世継ぎエドワード王子と、貧民の子トムが生まれる

マーク・トウェイン『王子と乞食』は、奇しくも同じ日に生まれた2人の男の子の物語。1537年10月12日、イングランド王ヘンリー8世の第一王子エドワードが誕生します。同じ日に貧民街ではトムという男の子が生まれました。一度でいいから本物の王子を見たいと願っていたトムは、ある日、宮殿の庭にいる王子を見かけます。もっと近くで見ようと宮殿の柵に駆け寄り、兵隊に突き飛ばされるトム。王子は兵隊を叱ると、トムを宮殿に招き入れました。トムが語る市井の暮らしに興味を覚えた王子の提案で衣服を交換した2人ですが、思わぬなりゆきで王子は宮殿から放り出され、トムは王子の服を着たまま残されてしまうのでした。トウェインの痛烈な風刺が光る、永遠の名作です。


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B00XIZN4E8/

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10月13日

トレードマークは帽子とダッフルコート――『くまのパディントン』が刊行される

「暗黒の地ペルー」からロンドンにやってきたくまが大活躍する物語『くまのパディントン』(マイケル・ボンド作)は、1958年10月13日にイギリスで刊行されました。彼を家族として迎えるブラウン夫妻と出会った駅の名にちなんで、くまはパディントンと名づけられます。トレードマークはいつもかぶっている帽子と、ダッフルコート。お風呂に地下鉄、百貨店、芝居見物、誕生パーティーなど、大都会ロンドンでの暮らしはパディントンにとって初めての経験ばかりです。何事にも真剣に取り組むパディントンですが、不器用ゆえに失敗しては大騒動に……。小説から絵本、アニメ、映画まで、世界中で愛されるパディントンの物語を、この機に読み返してみませんか?


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4834018024/

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10月14日

谷崎潤一郎『春琴抄』のヒロイン春琴と、彼女に尽くした佐助の命日

美しい盲目の三味線師匠・春琴と、彼女に仕える佐助の愛と献身を描いた、谷崎潤一郎『春琴抄』。物語は伝記「鵙屋春琴伝」で春琴を知った「私」が彼女の墓へ参るところから始まります。明治19年10月14日に没したことが刻まれた春琴の墓の傍らには、21年後の同じ日に亡くなった佐助の小さな墓石がありました。春琴が9歳で失明して以来、佐助は常に傍らにあって彼女を支えてきました。しかしある夜、家に押し入った何者かに春琴は熱湯を浴びせられ、顔に火傷を負ってしまいます。美しい面影を永遠に脳裏に焼き付けるため、佐助は自らの目を針で突き……。マゾヒズムをつきぬけた唯美の世界を描き切る、谷崎文学の代表作です。


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4101005044/

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10月15日

「悪徳の栄え事件」で上告棄却、澁澤龍彦の有罪が確定する

澁澤龍彦が翻訳し、昭和34年に刊行されたマルキ・ド・サド『悪徳の栄え』がわいせつ物頒布等の罪に問われた、いわゆる「悪徳の栄え事件」。埴谷雄高や大江健三郎、遠藤周作を始め、多くの文学者が特別弁護人や弁護側証人として法廷に立ち、サドの「文学性」について熱弁をふるいました。しかし昭和44年10月15日、最高裁大法廷は被告の澁澤ならびに版元の現代思潮社社長・石井恭二の上告を棄却。これにより被告2名の有罪が確定し、澁澤に罰金7万円、石井には同10万円が科せられました。澁澤は「たった7万円、人を馬鹿にしてますよ。3年くらいは(懲役刑を)食うと思ってたんだ。7万円くらいだったら、何回だってまた(本を)出しますよ」と発言しています。


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出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09352202

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10月16日

藤原道長「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」の歌を詠む

寛仁2年10月16日藤原道長の娘・威子が後一条天皇の中宮に冊立されました。後一条帝は威子の姉・彰子の子で、威子の甥にあたります。これにより道長は、三后(皇后・皇太后・太皇太后)を自分の娘で占めるという異例の快挙を達成。これに気をよくしたのか、この日開かれた祝宴で道長は、有名な「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」の歌を藤原実資さねすけに詠みかけました。実資は返歌すべきところを「素晴らしい歌なので皆で吟じましょう」とかわし、皆で唱和したことが、実資の日記『小右記』に綴られています。道長も省みるところがあったのか、自身の日記『御堂関白記』にはこの歌を残しておらず、また歴史物語の『栄花物語』『大鏡』にも記載がありません。


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4642018247/

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10月17日

人間国宝・安東喜左衛門の屋敷で殺人事件が起きる――栗本薫『いとの聖域』

栗本薫が生んだ名探偵・伊集院大介のデビュー作『絃の聖域』。昭和5X年10月17日、三味線の安藤流家元で人間国宝の安東喜左衛門の屋敷で、稽古に来ていた弟子が刺殺されます。安東家は喜左衛門と内妻、娘夫婦と子供たち、女婿・喜之助の愛人とその子が同居する、複雑な環境にありました。翌日、警視庁の山科警部補ら捜査陣でごった返す安東家に、喜左衛門の孫・由紀夫が通う進学塾の教師だという、ひょろひょろと背の高い男がやって来ます。伊集院大介と名乗るその男は、「この事件――これっきりっていうことは、たぶんないでしょうね」と、連続殺人事件の可能性を示唆するのでした。幼少期から長唄の稽古を続けてきた作者の、邦楽、そして芸術への思いが刻まれた傑作ミステリーです。



出典:https://www.shogakukan.co.jp/digital/09D044580000d0000000

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10月18日

東京と京都で起きた連続射殺事件が広域重要指定事件に指定される――佐木隆三『死刑囚 永山則夫』

1968年10月11日に東京・港区の東京プリンスホテル、14日には京都の八坂神社で、いずれも警備員の男性が銃で撃たれて死亡しました。2つの事件で使われた銃弾が同じ銃から発射されたものと判明し、10月18日、警視庁はこの連続射殺事件を「広域重要指定事件108号」に指定します。その後も函館、名古屋と事件は続き、4名が犠牲に……。翌年4月に逮捕されたのは、まだ19歳の永山則夫でした。それから21年に及んだ裁判の間、永山は獄中から小説の発表を続け、1983年には『木橋』で新日本文学賞を受賞します。日本中を震撼させた連続射殺魔・永山の全貌を、ノンフィクション作家・佐木隆三『死刑囚 永山則夫』に描きました。「犯罪を主題とする文学」を追究し続けた佐木の意欲作です。


出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09352325


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B00MTL346K/

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