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文学的「今日は何の日?」【11/2~11/8】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
11月2日から始まる1週間を見てみましょう。

11月2日

同郷の客3人が太宰治を訪ね、深夜まで飲み交わす

酒をめぐるエピソードには事欠かない太宰治ですが、そのイメージにそぐわない「酒ぎらい』と題したエッセイがあるのをご存じでしょうか。ある日、太宰のもとに『日刊工業新聞』が届くようになりました。やがて送り主が太宰の実家のすぐ裏にある登記所所長の息子Wだとわかります。そこで「十一月二日の夜、六時ごろ、やはり青森県出身の旧友が二人、拙宅へ、来るはずですから、どうか、その夜はおいで下さい」と葉書を出しました。貰い物の酒2升に、念のために買い足した1升の計3升を用意して、同郷の客人たちを迎える太宰。しかし、そんな太宰が「酒ぎらい」というそのわけとは? 答えが気になる方は、この機に読んでみてはいかがでしょうか。


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11月3日

第二次世界大戦中、ドイツ軍とソ連軍がセフスク村で激突する

2015年にジャーナリストとして初めてノーベル文学賞を受賞した、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ。彼女の第1作『戦争は女の顔をしていない』は、ソ連では第二次世界大戦中に100万を超える女性が従軍し、看護師や軍医としてだけでなく、兵士として武器を手に戦ったことをまとめた記録です。当時16歳だったオリガは歩兵中隊の衛生指導員として従軍、のちに自ら志願して前線に赴き、数多のむごい死を目撃します。やがて終戦を迎えると、若い男性たちが次々と彼女にアプローチしてきます。戦争で疲れ果て、男たちの気持ちに応えることのできないオリガは、拒絶する代わりに11月3日のセフスク村攻防戦の辛い一日の話をして聞かせるのでした。戦場の悲惨な現実を目の当たりにする一作です。


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11月4日

島崎藤村『新生』において、友人からの手紙にあった初霜が降った日

明治43年、島崎藤村の妻・冬子が4女を出産後に亡くなります。そんな藤村を気遣い、実の姪が身の回りの世話をするようになりました。しかし2年ほどするうちに2人は愛人関係となり、姪は妊娠してしまいます。大正2年、2人の関係を断つため、藤村は妊娠中の姪を残してフランスに渡りました。約3年をヨーロッパで過ごしますが、帰国すると姪との仲が再燃。これを断ち切るために書かれたのが、自身と姪をモデルにした小説『新生』でした。主人公・岸本が友人からもらった「去年の十一月四日初めて霜が降った。それから十一日には二度目の霜が降った」と書かれた手紙を読む「序の章」から始まっています。


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11月5日

ガリバーの乗った船が岩に衝突して沈没――スウィフト『ガリバー旅行記』

幼いころ、船乗りガリバーが小人国や大人国をめぐる不思議な物語『ガリバー旅行記』を読んだ人は多いでしょう。実はガリバーはただの船乗りではなく、船医。開業した診療所がうまくいかず、やむなく船医となって羚羊かもしか号に乗り込んだのです。イギリスのブリストル港を出航した羚羊号ですが、航海の途中で暴風雨に遭い、1699年11月5日に岩にぶつかり沈没してしまいます。乗り込んだ救命ボートも突風にあおられ転覆、仲間とはぐれてしまいました。ただ1人、波に流されるうちに陸地にたどり着き、疲れのあまり眠り込んだガリバー。しかし目を覚ましたとき、彼のからだは地面にくくりつけられ、身動きが取れなくなっていました。ガリバーの奇妙な旅が始まります。


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11月6日

宮内悠介「百匹目の火神」において、物理学者・冴嶋三郎が亡くなる

芥川賞、直木賞の候補にも上り、SFの枠を超えて幅広いファンを持つ宮内悠介。短編「百匹目の火神」は、猿が火を起こす技術を覚えたことから始まる物語です。その技術は土地や世代を超えて伝播、日本各地で猿が火を起こすようになり、「同じ行動を取る者の数が一定数を超えると、仲間すべてに伝播する」という共時性シンクロニシティの概念が人々の心を捉えます。これに危機感を抱いた物理学者・冴嶋三郎は「共時性などない」というメッセージ動画を公開しますが、生物学者の高嵜巌が同じタイミングで同じ趣旨の動画を公開。狙いとは逆に「共時性」を裏付ける結果となった冴嶋は大学をやめ、11月6日、四国を巡礼中に強盗に襲われ亡くなります。その同じ日、1匹の猿の行方がわからなくなっていました……。


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11月7日

ドン・アボンディオが無法者から脅しを受ける――マンゾーニ『いいなづけ』

ダンテ『神曲』と並ぶイタリア文学の最高峰といわれるのが、アレッサンドロ・マンゾーニの代表作『いいなづけ』。スペイン統治時代のミラノを舞台とする歴史小説です。1628年11月7日、レッコ村の司祭ドン・アボンディオは2人の無法者から、翌日執り行われる予定のルチーアとレンツォの結婚式を行わないよう脅しを受けました。領主ドン・ロドリゴが美しいルチーアに横恋慕し、結婚の邪魔をしたのです。ルチーアはモンザの修道院にかくまわれ、レンツォはミラノに脱出しますが、暴動やペストの流行に巻き込まれ……。2020年3月の新型コロナ感染拡大時、ミラノの高等学校長がこの作品を引用して生徒にメッセージを送ったことは、日本でも大きな話題となりました。


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11月8日

広津りゅうろう『今戸心中』において、吉原の娼妓・吉里と情人・平田が別れ話に

明治中期に活躍した作家・広津柳浪の代表作として知られるのが、吉原の娼妓・吉里の悲劇を描く『今戸心中』です。明後日はもう初酉という11月8日、吉里のもとに2人の客がありました。吉里の情人・平田と、毎晩通い詰めながら相手にされない古着屋・善吉です。今宵も善吉を無視して平田の座敷に出る吉里ですが、待っていたのは別れ話。平田の父が亡くなり、郷里に帰って家を継ぐことになったのです。慌ただしく平田が去ったあと、吉里はそれまで袖にしてきた善吉の実意にほだされ、結ばれます。しかし妻子と別れ、店を手放して吉里に入れ揚げていた善吉は、たちまち窮迫していくのでした。遊郭の女たちの孤独や心の機微を見事に描いた一作です。


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