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ジャック・リーチャーが主人公の人気作に注目・今アメリカで一番売れている本は?|ブックレビューfromNY【第13回】

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの13回目。今回は、ジャック・リーチャーシリーズ21作目の話題作に注目します。

先月からリストに残っているのは“Two by Two”だけで、6作品が初登場だ。相変わらずベストセラーの入れ替わりは激しい。

6作品(“Turbo Twenty-Three”, “No Man’s Land”,“Night School”、“Odessa Sea”, “Chaos”, “The Wrong Side of Goodbye”)がシリーズ物、“Catalyst”も今月上映予定のスターウォーズ映画の前編小説なので一種のシリーズ物といえる。人気シリーズは強い。

7作品(シリーズ物の6作品+“Whistler”)がミステリー・サスペンス・スリラー小説のジャンルに入るなかで、季節柄、《クリスマスもの》ともいえる“The Mistletoe Secret”[2] がランク入りしているのが目を引く。

一匹狼のアウトロー

本コラム筆者が選んだ今月の1冊は、リー・チャイルドの最新作で、ジャック・リーチャーが主人公の“Night School”だ。先週ベストセラー1位で初登場、2週目の今週は4位に入っている。

ジャック・リーチャーはイギリス人推理作家リー・チャイルドの小説シリーズの主人公で、架空の人物。元米国陸軍憲兵隊少佐で1997年に陸軍を除隊後、一匹狼のアウトローとして定職に就かず定住せず全米を放浪。悪を絶対許さず、正義のためには手段を選ばず戦ってきた人物として描かれる。

著者のリー・チャイルド(本名ジェームズ・D・グラント)は1954年、英国コヴェントリーで公務員の息子として生まれた。大学では法律を勉強したが、法律の仕事をするつもりはなく、学生時代は劇場のバックステージでアルバイトをしていた。卒業後の1977年に民放のグラナダ・テレビジョンに就職、数々のテレビ・ショーの演出を手掛けた。1995年にリストラされ、小説を書き始めた。1997年に最初の小説“Killing Floor”が出版された。主人公ジャック・リーチャーの誕生だ。それを機に1998年に米国に移住、現在はニューヨークに住む。

リー・チャイルドはシリーズの初めから主人公ジャック・リーチャーを、かつて陸軍憲兵隊(MP:Military Police)に所属した孤独なアウトローとして描いた。しかし、今回の最新作、シリーズ21作目の“Night School” では、初めてリーチャーのMP時代の活躍を描いている。後に一匹狼のアウトローになるリーチャーが、この作品の中では、FBIやCIAと協力してアメリカ大統領からの秘密任務遂行のため、国家安全保障担当大統領補佐官とその副官の指揮の下で奔走することになる。

今年10月、ジャック・リーチャーを主人公にした映画“Jack Reacher: Never Go Back”がトム・クルーズ主演で公開された。2013年出版のシリーズ18作目の映画化だ。それ以前には、2012年にシリーズ9作目の“One Shot”が“Jack Reacher”(邦題「アウトロー」)の題で映画化されている。10月の映画公開は、小説の出版と相乗効果をもたらしていると思われる。

[2] Mistletoesはクリスマスの飾りつけに使われる木で、日本語では“やどりぎ”。

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