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J・グリシャムの新作小説は裁判官汚職の内部告発がテーマ・今アメリカで一番売れている本は?|ブックレビューfromNY【第14回】

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの14回目。今回は、ヒットメーカー、ジョン・グリシャムによる新作小説に注目します。

アメリカ先住民族とカジノ

グレッグによれば、すべての不正は1990年代前半、タパコラ・ネイティブアメリカン居留地のカジノ建設計画から始まった。

実際に米国では、多くの先住部族の居留地で部族によるカジノ・賭博場の運営が行われ、先住民族にとって主要な産業、収入源になっている。居留地では自治権が認められているため、たとえ州法でギャンブルが禁止されていてもカジノ運営ができる[2]

マフィアのヴォン・ドゥボーズはタパコラ居留地にカジノ建設を計画、タパコラ部族のなかでは経済的メリットを重視する賛成派とキリスト教の倫理観に基づきギャンブルに反対する反対派が激しく対立した。1993年、部族投票が行われた結果、反対派が54%の得票で勝利した。ところが、2年後、反対派のリーダーのサン・ラズコが、同じく反対派のリーダー格のジュニア・メイスの妻と一緒にメイスの自宅の寝室で射殺されているのが発見された。ジュニア・メイスが容疑者として逮捕され、無罪を主張したものの死刑判決を受け、現在でも刑の執行を待っている。カジノ反対派はリーダー2人を失って急速に勢力を弱め、再び行なわれた部族投票ではカジノ賛成派が勝利した。建設されたカジノは大盛況で、マフィアのヴォン・ドゥボーズは隣接する広大な土地にゴルフ場や豪華なコンドミニアムを次々と建設、大きな利益を上げている。しかし、ヴォンは名前も顔も一切表には出さず、カジノ周辺の大型開発にマフィアが絡んでいることはほとんど一般には知られていなかった。

グレッグは、判事クローディア・マックドーバーがカジノや周辺の開発事業に関連する各種の訴訟でヴォンが関係する会社(ほとんどがオフショア・カンパニー)に有利な判決を下し、その見返りとしてコンドミニアムの4室を受け取り、そのうえ毎月一定額の賄賂を取っていると主張、いくつかの証拠も提示した。しかし、コンドミニアムの部屋の所有者登録はクローディアの名前ではなくオフショア会社名だし、月1回クローディアがヴォンと思われる人物と会っている写真があるものの、それが金の受け渡しのためとは断定できないなど、訴えを立証するための証拠を集めるのは大変だった。確かに、カジノ建設に絡んではすでに何人かが行方不明になるか殺されていた。グレッグは17年前に殺されたサン・ラズコとジュニア・メイスの妻は、ジュニアに殺されたのではなくヴォンの手下に殺されたと信じていたし、裁判でジュニアに不利な証言をした2人の元囚人は裁判直後に行方不明になり、マフィアに殺されたと考えられた。身の安全に関しては内部告発者もグレッグも非常に用心深かった。事実、内部告発者の名前や裁判所でどんな仕事をしているかはグレッグも知らされていないという。内部告発者とグレッグをつなぐ仲介者がいて、告発者からの情報をグレッグに伝えていた。内部告発者のことをレイシー、ヒューゴ、グレッグは《モグラ》と呼ぶことにした。

[2]Indian Gambling Regulatory Act (インディアン賭博規制法)

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