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【ランキング】ダン・ブラウン作「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ新作発売! 主人公のラングドン教授が挑む人類最大の謎とは?ブックレビューfromNY<第24回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの24回目。今回のランキングには、名優トム・ハンクスの短編集が初登場。詳しく取り上げるのは、ベストセラー1位の3週目に入っている、『ダ・ヴィンチ・コード』作者ダン・ブラウンの最新作です。

「ダ・ヴィンチ・コード」作者の最新作

3週続けて1位の“Origin”の作者ダン・ブラウンは1964年米国ニューハンプシャー州生まれのアメリカ人。1986年アマースト大学を卒業後はシンガー・ソング・ライターを目指しハリウッドで活動した。しかし1993年にはニューハンプシャーに戻り、母校であるフィリップ・エクセター・アカデミーの英語教師になった。そのころから小説を書き始め、1996年に教師をやめ本職の作家となった。1998年デビュー作の“Digital Fortress”(パズル・パレス)を出版した。2000年にはハーバード大学の宗教象徴学教授ロバート・ラングドンを主人公にした小説“Angels & Demons”(天使と悪魔)、2001年には“Deception Point”(デセプション・ポイント)を出版した。この最初の3作品の初版はいずれもあまりヒットはしなかった。

しかしブラウンの4作目、2003年出版されたロバート・ラングドンを主人公にした小説の2作目、“The Da Vinci Code” (ダ・ヴィンチ・コード)は世界的な大ベストセラーとなった。その結果、ブラウンの前作3作品も2006年にはベストセラーとなった。[2]2009年出版の“The Lost Symbol”(ロスト・シンボル)、2013年の“Inferno”(インフェルノ)はいずれもロバート・ラングドンが主人公の小説だ。そして彼が主人公の新たな5作目、“Origin” が10月に出版された。

ビルバオ・グッゲンハイム美術館

バーバード大学のロバート・ラングドン教授は昔の教え子でIT富豪のエドモンド・キルシュの招待でスペインのビルバオにあるグッゲンハイム美術館で行われるイベントに来ていた。ネットメディアのConspiracyNet.comはこのイベントで、エドモンド・キルシュは《科学上の重大発見》を公表するらしいと報道したため、ネット上ではこの発表に関し盛り上がっていた。

美術館に到着したラングドンはヘッドセットを装着するように言われ、プレゼンテーションが始まるまでの間ヘッドセットから聞こえてくるイギリス英語を話すウィンストンの声と美術談義をしながら美術館内を散策した。驚いたことにウィンストンは人間ではなくエドモンドが開発した人工知能だった。

エドモンドのこの《科学上の重大発見》に関してはすでにネット上で話題になっていて、プレゼンテーション会場では、始まる前からこのイベントへのアクセス数をスクリーンに表示していた。その数は開始時間が近づくにつれ急上昇し、中継開始直前には300万人に届きそうな数になっていた。美術館長であり、スペインの皇太子の婚約者アンビラ・ヴィダルの挨拶の後、エドモンドが舞台に登場した。彼は生命に関する本質的な謎、ダーウィンの進化論ですら解明できなかった、《生命の起源》と《人類の運命》について遂に科学的に解明することができたと発表、これからそのプレゼンテーションを行うと宣言をした。まさにその時、招待客の目の前で銃弾に額を打ち抜かれて即死した。一部始終はそのままネット中継で世界中に流れた。

防犯カメラの映像からすぐに暗殺犯は退役海軍将官のルイ・アビラであることが判明した。そして招待客の身元チェックは厳重になされていたにもかかわらず、ルイ・アビラの名前はなぜか直前に招待者リストに追加され、身元チェックは行われなかったことが判明した。

皇太子の婚約者の警護のため会場にいた近衛兵のフォンセカは、婚約者の身の安全を心配した皇太子からの電話の指示でアンビラ・ヴィダルをすぐに宮殿に連れて行こうとしたが、アンビラは宮殿に行き皇太子に会うことを拒否した。前日、退役海軍将官の名前を招待者リストに入れることを手配したのはアンビラ自身で、それは宮殿の皇太子からの指示があったからだった。皇太子がこの暗殺に絡んでいるのではないかと、アンビラは皇太子を信じられない気持ちになっていた。

どうやらプレゼンテーションの本番部分に関しては、事前に作ってあり、エドモンドは、あいさつの後その録画を流す予定だったことが、アンビラ・ヴィダルや人工知能のウィンストンの話から分かってきた。エドモンドの携帯電話にパスワードを打ち込むことで録画がネット上に流れることになっていた。ラングドンは、エドモンドの遺志を継いで、《科学上の重大発見》の録画を発信しようと決意した。録画を発信するためのパスワードとは47文字で、エドモンドは自分の大好きな「詩」であり「予言」の一節だと、アンビラに言ったことがあった。その47文字の詩・予言の一節とはラングドンには皆目見当もつかなかったが、 ヒントを見つけることができるかもしれないと、エドモンドの自宅に行ってみることにした。自分が暗殺者の名前を招待者リストに加えたことに責任を感じ、また皇太子に対しても不信感を募らせているアンビラは、ラングドンに自分も一緒にエドモンドの家に行くと言った。近衛兵のフォンセカの目をくらませ、2人はエドモンドの携帯電話を持って、ウィンストンの導きで美術館から空港に向かい、エドモンドの自家用飛行機でバルセロナに向かった。

ネットメディアのConspiracyNet.comは、今まではネット上だけで話題になっていたエドモンド・キルシュのストーリーが新聞、テレビ、ラジオなどの《本流メディア》でも取り上げられるようになり、ネット上では800万以上のアクセスがあると報道した。

カサ・ミラ

カサ・ミラは建築家アントニオ・ガウディが54歳の時、住居用に設計したバルセロナに現存する建物で、エドモンドはこの建物の最上階を借りて住んでいた。エドモンドの自家用機でバルセロナに到着したラングドンとアンビラは何とかカサ・ミラの最上階のエドモンドの住居に入った。ここで47文字の予言・詩の一節を探すため、手分けして本棚の本を探索することにした。本を探す前にバスルームに入ったラングドンはエドモンドの使用していた薬や注射を見て、彼が膵臓癌と戦っていたことを知ったのだった。

エドモンドの膨大な本はほとんどが科学関連で、詩、ましてや予言に関する本など見つかりそうもなかった。しかしほとんどあきらめかけた時、ラングドンは「ウィリアム・ブレーク」の名前を見た。詩人であるブレークは「預言書」を書いている。しかしウィリアム・ブレークの本がおさめられているはずの箱の中には本はなく、一枚のカードが入っているのみだった。

ラングドンとアンビラがエドモンドの本棚を探索している時、ネットメディアのConspiracyNet.comはmonte@iglesia.orgを名乗る者から情報提供を受け、関係者しか知りえないエドモンド・キルシュ関連の情報を流すようになっていた。エドモンドが《科学上の重大発見》を公表する前に、カトリック、ユダヤ教、イスラム教の3人の聖職者に会い、この科学的発見の情報を漏らし、宗教的見地からの意見を求めていたことを、エドモンドは、暗殺される直前のスピーチの中で述べていたが、3人の名前は明かさなかった。しかしConspiracy Net.comはその3人の聖職者の名前を公表し、既に3人のうち2人、イスラム教とユダヤ教の聖職者が不審な死を遂げたことを報道していた。

元海軍将官は単なる暗殺者で、エドモンド暗殺の背景にどのような勢力が存在するのかについて、巷では憶測が飛び交っていた。大勢の意見は、《科学上の重大発見》を公表されたくない勢力、多分伝統的、保守的なキリスト教一派が背景にいるのだろうというものだった。そのため、《発見》の情報を事前に知っていた2人の聖職者も消されたのだろうと。しかし3人目のカトリック司教のアントニオ・ヴァルデスピノは生存していたため、ヴァルデスピノ司教に対し、エドモンド暗殺に関係しているのではないかという憶測が流れた。スペイン王の信頼が厚かった司教だったので、スペイン王家もこの一連の出来事への関与を疑われた。そんなさなかに、ジュリアン皇太子と司教は宮殿から姿を消してしまった。そして高齢で病床にあったスペイン国王も病院から姿を消した。

サグラダ・ファミリア(聖家族教会)

ラングドンがエドモンドの本棚でウィリアム・ブレークの本の代わりに見つけたカードには「ウィリアム・ブレークの全作品はサグラダ・ファミリアに貸し出し中」と書かれていた。ヘリコプターでアンブラ・ヴィダルを追ってきた近衛兵2人をアンブラは説得し、ラングドンとアンブラは近衛兵のヘリコプターでサグラダ・ファミリアへ向かった。

一方ConspiracyNet.comは、エドモンドを暗殺した元海軍将官はローマ法王(バチカン)を否定しているパルメリアン教会の信者で、かつてのスペインの独裁者フランコ将軍の信奉者だったと報じた。

サグラダ・ファミリアに2人の近衛兵とともに入ったラングドンとアンブラは、近衛兵2人を地下室の入り口に残し、神父の案内でブレークの本のおさめられている部屋へ向かった。神父によればエドモンドの指示で、ブレークの予言書の163ページを開いて展示しているという。しかしこの本はイラスト本で、163ページはすべてイラスト、どこにも文章は書かれていなかった。しかし見開きの反対側のページには詩が書かれていた。そして次の一節を発見した。“The dark religions are departed & sweet science reigns.”(暗黒の宗教は立ち去り、甘美な科学が支配する)。46文字しかないが、これはエドモンドの最後のトリックなのだ。“&”マークを“and”に置き換えると48文字になってしまうが、元々はラテン語の “et”から来ているので、“&”を“et”に置き換えれば、47文字のパスワードが完成する。

地下室の外に出てみると、近衛兵2人は忍び込んできた暗殺者の元海軍将官によって既に殺害されていた。ラングドン、アンビラ、神父の3人は暗殺者に追われて教会の螺旋階段を上へ上へと上がっていった。このままでは追い付かれると思った時、ラングドンはアンビラと神父を逃がし、暗殺者と対峙した。狭い階段でもみ合ううちに、ラングドンは階段の途中まで墜落、しかし暗殺者の方は一番下まで墜落して即死した。

エドモンドの携帯電話はここに来るまでの間に落として壊れてしまったので、パスワードはエドモンドのコンピュータに直接打ち込まなければならない。エドモンドのコンピュータは一体どこにあるのか? エドモンドの携帯電話が無くなった今、ウィンストンとの交信もできなくなり、場所を聞くこともできない。しかしラングドンは今までのウィンストンとの会話を思い出し、ウィンストンが自分の居場所(エドモンドのコンピュータ所在地)を示唆していたことに気付いた。死亡した近衛兵2人と一緒に乗ってきたヘリコプターに戻ったラングドンとアンビラは、パイロットに指示し、エドモンドのコンピュータの所在地へと向かった。

バルセロナ・スーパーコンピュ-タ・センター

遂にラングドンとアンビラはエドモンドのスーパーコンピュータが置かれているバルセロナ・スーパーコンピュータ・センターに到着し、ウィンストンの歓迎の声に迎えられた。センターは緑に囲まれた古いカトリック教会の中に作られていた。エドモンドのコンピュータは建物の中に置かれた2階建てのガラス箱だった。1階がいわゆるスーパーコンピュータ、そして2階には小さな《量子コンピュータ》が設置され、エドモンドの書斎もガラス箱の2階にあった。このエドモンドの量子コンピュータは、現在NASAとグーグルが共同開発しているD-Waveコンピュータの上をゆくという事でE-Waveと名づけられたと、ウィンストンは説明した。人間の脳は右脳と左脳のバランスで機能しているように、エドモンドのコンピュータは階下のスーパーコンピュータと2階の量子コンピュータE-Waveという異なったコンピュータが融合して機能している。

ラングドンは、エドモンドの書斎に入り、そこに置かれている数々の古いコンピュータを見つけた。それは年代別に置かれ、ウィンストンはその中の一番古い“Tandy TRS-80” (エドモンドが8歳の時これを使いBASIC[3]を学んだ)のキーボードにパスワードを入力するよう指示した。

ウィンストン、エドモンドの《発見》の配信予告をネット上に流し、ConspiracyNet.comはプレゼンテーションをライブ中継することを発表していた。エドモンドのプレゼンテーション発信1分39秒前にはアクセス数は2億3000万近くになっていた。

そして、ラングドンはパスワードを入力し、《生命の起源》と《人類の運命》に関する《科学上の重大発見》に関するエドモンドのプレゼンテーションは世界中に発信された。

はたして、その《科学上の重大発見》とは?

そしてその他の数々の謎も一気に解明していく。
● エドモンド暗殺の黒幕は誰か?
●ヴァルデスピノ司教とジュリアン皇太子はこの暗殺に絡んでいたのか?
●行方が分からなくなっていたスペイン国王、皇太子、司教の3人はどこにいたのか?そしてこの3人が抱えていた深刻な事情とは?
● 暗殺者の退役海軍将官は誰からの指示でエドモンドを暗殺したのか? 暗殺者の抱えていた悲劇の過去とは?
●パルメリアン教会はこの件に絡んでいたのか? そしてエドモンドとパルメリアン教会の関係は?
●情報提供者monte@iglesia.orgは誰だったのか?
●ジュリアン皇太子とアンビラ・ヴィダルの関係は修復されるのか?
● そしてエドモンドの有能なアシスタントだった人工知能のウィンストンは今後どうなるのか?

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ロバート・ラングドン教授は前4作品同様、この最新作の中でも、キリスト教文化と最先端科学やテクノロジーの真っただ中で大活躍をする。この物語の主要登場人物は主人公ラングドンとグッゲンハイム美術館長でジュリアン皇太子の婚約者のアンビラ・ヴィダルだが、人工知能のウィンストンも、重要なキャラクターとして物語をリードしていく。そして最後に、読者はウィンストンのこの一連の騒動の中で果たした、思いもかけない重要な役割に気づくのだった。
この小説は《生命の起源》と《人類の運命》というキリスト教の創世記を信じる人々と進化論者の間の永遠の論争テーマを取り上げている。しかしそれだけでなくテクノロジーや人工知能がどこまで人間の脳に近づくことが出来るのかという課題にも読者は直面することになるのだ。人工知能や次世代コンピュータの開発が加速化している昨今、まさにタイムリーな一冊と言えよう。

[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Dan_Brown
[3] 初心者向けのプログラミング言語として、1970年代以降のコンピュータ(特にパソコン)で広く使われた。

佐藤則男のプロフィール

早稲田大学卒。米コロンビア大学経営大学院卒(MBA取得)。1971年、朝日新聞英字紙Asahi Evening News入社。その後、TDK本社およびニューヨーク勤務。1983年、国際連合予算局に勤務し、のちに国連事務総長となるコフィ・アナン氏の下で働く。 1985年、ニューヨーク州法人Strategic Planners International, Inc.を設立し、日米企業の国際ビジネス・コンサルティングを長く手掛ける。この間もジャーナリズム活動を続け、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官、ズビグニュー・ブレジンスキー元大統領補佐官らと親交を結ぶ。『文藝春秋』『SAPIO』などに寄稿し、9.11テロ、イラク戦争ほかアメリカ情勢、世界情勢をリポート。著書に『ニューヨークからのメール』『なぜヒラリー・クリントンを大統領にしないのか?』など。 佐藤則男ブログ、「New Yorkからの緊急リポート」もチェック!

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