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【ランキング】涙なしには読めない愛と感動の物語に注目!ブックレビューfromNY<第36回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの36回目。今回は、著書が世界中で3900万部以上売れているベストセラー作家、ミッチ・アルボムの感動作を解説します!

ミッチ・アルボム[3]

ミッチ・アルボムはベストセラー作家であると同時に、ジャーナリスト、脚本家、シナリオライター、音楽家でもある。彼の本は世界中で3900万部以上売れている。

1958年5月23日ニュージャージー州パサイク生まれ。ニュージャージー州とペンシルベニア州で音楽に熱中した高校生活を送り、マサチューセッツ州ウォルサムのブランダイス大学に進学した。大学卒業後しばらく演奏活動をしていたが、次第にジャーナリズムに興味を持ち、パートタイムでローカル紙に記事を書くようになっていた。コロンビア大学ジャーナリズム大学院で学んだあと、フリーランスで、主にスポーツ分野でのジャーナリストとして活動した。1983年にフロリダの新聞社に記者として採用され、1985年には、AP通信のスポーツ編集者賞(Associated Press Sports Editors Award)を受賞した。その後、Detroit Free Press紙、Los Angeles Times紙などでスポーツ・コラムニストに。スポーツ・ジャーナリストとして名声を得て、数々のジャーナリズム賞に輝いたアルボムだったが、一方で、難病(ALS:筋萎縮性側索硬化症)を患っていた大学時代の恩師モリー・シュワルツ教授との交流を綴った『モリー先生との火曜日』(Tuesdays with Morrie)を1997年に出版した。初版2万部のこの作品は、次第に口コミで売れ行きを伸ばし、同年10月には、ニューヨーク・タイムズのベストセラー・リスト入りを果たし、その6か月後にはベストセラー1位となって、その後もロングセラーを続けた。

2003年9月、アルボムは初めてのフィクション『天国の五人』(The Five People You Meet In Heaven)を出版した。8歳の少女アニーを救うために遊園地のタワーから落下してきたカートの下敷きになって死んだ83歳の機械点検係のエディが、死後、生前かかわりのあった5人と天国で会い、自分のつまらないと思っていた人生に意味があったことを知ったという内容の小説はたちまちベストセラーとなり、35か国語に翻訳されて世界中で1400万部を売り上げた。そして15年後の今年10月、『天国の五人』の後日物語として“The Next Person You Meet in Heaven”を出版した。

遊園地の事故で命の助かった少女アニーのその後

機械点検係のエディに助けられた8歳の少女アニーは、命は助かったものの落下してきた金属破片で左手を切断されてしまった。幸いなことに、切断された左手とアニー本人はすぐに病院に運びこまれ、復元手術が行われた。そして手の機能は徐々に回復していったが、アニーは事故のショックで当時のことは何も思い出せなかった。

アニーは今や30歳になり、看護師として働いている。幼馴染のパウロとの結婚式を迎え、幸せをかみしめていた。

パウロと再会するまで、アニーは決して幸せではなかった。時々痛む醜い手術跡のある左手を隠しながら、母一人子一人の孤独で貧しい少女時代を過ごした。母のロレインの過保護に反発し、学校では仲間外れだった。ただ一人アニーに優しく味方してくれたのは同級生のパウロだったが、14歳の時、家族とともにイタリアに引っ越していってしまった。高校の卒業式の日、アニーはそれまで付き合っていた1年先輩のウォルトと同棲生活を始め、その日以来、母親と一切連絡を取らなくなった。そして1年ほどたったある日、母の兄で医者のデニスからロレインが癌で死にそうだと知らされ、ほどなくして母は病院で亡くなった。そして、アニーは妊娠したことに気付いた。アニーとウォルトは裁判所に行き婚姻届けにサインをした。しかし、早産で生まれた男児は3日間しか生きることができず、2人の結婚は破綻した。母を亡くし、赤ん坊を亡くしたアニーを、伯父のデニスは優しく受け入れた。そして、自宅でも電話で親身に患者に接している伯父の姿を目の当たりにしたアニーは、自分も患者に寄り添える看護師になりたいと強く思った。伯父の経済的援助もあり、アニーは専門学校に通って看護師になった。相変わらず孤独で、恋愛にも興味を持てなくなっていたアニーは看護師の仕事に専念した。自分が生んだ赤ん坊の死を引きずっていたので小児科は苦手だったが、大人の患者、特に年を取った患者に対してはとても丁寧に接した。そんなある時、勤務する病院の増築工事現場で、アニーはパウロと再会した。イタリアから戻ったパウロは大工になっていた。再会の1か月後には2人は一緒に住み始め、10か月後には婚約して、今日の結婚式を迎えたのだった。

結婚式の翌朝、アニーのたっての希望で2人は熱気球フライトを体験することになった。しかし、天候があまりよくないなか、未熟なパイロットの操縦で飛行を始めた熱気球は、間もなく風にあおられてコントロールを失い墜落した。

病院で目覚めたアニーに伯父のデニス医師は、パウロは瀕死の状態で、特に肺の損傷がひどく、移植をしなければじきに呼吸ができなくなると告げた。アニーは自分の肺を一つパウロに移植するよう強く伯父に頼んだ。ひどい怪我をしているアニーの肺を切り取ることを躊躇するデニスに対し、アニーは自分が熱気球に乗ると言い張らなければこんなことにはならなかったので、自分のせいなのだから、パウロを救うためにはどうしても自分の肺を提供すると言い張った。どう説得しても無駄と悟ったデニスは移植手術を承知した。

手術室で「パウロを生かしてください」と神に祈りながら、アニーは麻酔薬で意識がだんだん薄れていった。

アニーが天国で会った5人

そして意識が戻った次の瞬間、アニーは天国にいた。「自分が天国にいるということは死んだのだろう。でも肺を移植されたパウロは助かったのだろうか?」とアニーは思った。そして天国で、生前かかわりのあった5人と次々に会った。

最初に会った少年が誰だかわからなかったアニーだったが、次第に、事故で切断されたアニーの手の復元手術をしたサミーア医師の少年時代の姿だと知る。手術の前後のことはアニーの記憶から抜け落ちていたが、天国のアニーは、病院で手術の後、サミーア医師と会話をする幼い自分と同化していた。そして、今までいやだと思っていた醜い手術跡と痛みは、自分が幸いにも一流の外科医だったサミーアに助けられたことの証であることを悟ったのだった。

次に会った見知らぬ上品な老女は、実はアニーが孤独な学校時代の唯一の慰めで、心を許したペットの犬のクレオだった。事故のケガから回復してアニーが退院した数日後、母のロレインは夜逃げのようにアニーを連れて身の回りの物を車に詰め込み、東部の住み慣れた家を出て、アリゾナに向かった。母子はそこで生活を始め、アニーは学校に通い始めたものの、仲間外れにされ、家では母の過保護ぶりにうんざりし、孤独だった。そんな時、動物保護施設で銃弾の傷から回復しつつある子犬を見て一目で気に入り、クレオと名付けて、老衰で死ぬまで一緒に暮らしたのだった。老女の姿をしたクレオは、アニーに「犬は共感することができるのよ。私たちが会った時、傷ついた者同士が共感し、お互いを必要としたのよ」と言った。アニーは、誰かが自分を必要としていることを知れば、もはや孤独など感じなくなるものだと悟ったのだった。

3人目に会ったのは、母のロレインだった。母親には母親の秘密があり、子には子の秘密があるものだ。ロレインはアニーに、今まで秘密にしていたことを話し始めた。まだ19歳だったロレインは26歳のトラック運転手ジェリーと知り合い、3か月後に結婚した。しかし、アニーを妊娠したころには、ジェリーは運転手という職業柄、不在がちで、女性関係にも問題があった。そして、ロレインはそんな夫と結婚生活を続けていくことは困難だと思い始めていた。暴力が子供のアニーにも及ぶようになった時、ロレインは離婚を決意し、ジェリーを家から追い出した。離婚後、子供となるべく一緒にいたかったロレインは、タイピストとして家で仕事をしていたが、それだけでは経済的に苦しくなり、外に働きに出るようになった。そして、職場で同僚にデートに誘われるようになっていた。アニーの事故の日、ロレインは交際中のボブと一緒にアニーを遊園地に連れて行った。そしてボブとしばらく2人きりになっている間に、アニーは事故に巻き込まれたのだった。事故の後、元夫のジェリーは手紙で、ロレインを母親失格だと批判、養育権を要求してきた。ジェリーは遊園地を訴えて慰謝料を取るつもりで、そのためにはアニーの養育権が必要だった。ロレインが荷物をまとめ、アニーとともにアリゾナに逃れたのは、ジェリーからの手紙を受け取った次の日のことだった。アリゾナで心機一転、アニーと新しい生活を始めようと思ったロレインだったが、意地悪な同級生がネットでアニーの事故を知り、「アニーを助けるために死んだ人がいる」ことを言いふらしたため、何も覚えていないアニーは、「いったい自分に何が起こって、なぜ自分の左手に醜い傷跡があり、自分のために誰かが死んだのか?」と母親を問い詰めた。心機一転のつもりだったロレインは、過去の影から逃れることができなかった。

一方アニーは、何を聞いても答えてくれず、ただひたすら過保護な母に反発し、高校卒業の日にウォルトと同棲生活を始めた。母とは音信不通で気持ちがすれ違ったまま、母が不治の病に倒れたことを伯父から聞かされることになった。入院している母に付き添ったが、ほどなくして母は亡くなった。そして今、天国でアニーは母の秘密を聞かされ、自分の秘密である妊娠、結婚、早産と赤ん坊の死、結婚の破綻について母に打ち明けた。そして、人は秘密を隠そうとするが、本当は人が秘密に支配されているのだと気付いたのだった。遊園地の事故の時、「アニーのそばにいなかったことが母にとって取り返しのつかないほどの後悔となり、そのことを生前、打ち明けることができなかった母を理解し、許すことができた。そして事故の前も後も、母がどんなに娘のために自分を犠牲にしてきたかを知り、アニーは母に対する感謝の気持ちでいっぱいになったのだった。

そしてアニーは4人目の人物、エディと会った。エディの指に触れた時、アニーは自分が安全に守られていると感じた。そしてエディと話すうちに、アニーはエディに命を助けられた事実に向き合うことができ、すべてを思い出した。「私があなたを殺したのだ」と嘆くアニーに、エディは、自分はアニーの命を助けることで過去に犯した間違いを償うことができ、救われたのだから、アニーが自分を責める必要は全然ないと言った。せっかく助けられたけれど、自分の人生に良いことはあまりなかったと話すアニーに、エディは赤ん坊を抱かせた。生まれてすぐに死んでしまった自分の子供であると気づいたアニーは、赤ん坊を抱きながら、短い間だったけれど確かに自分の子供が存在したことを確信し、エディによって生かされたことは、自分にとって意味のあることであったと実感した。

アニーは赤ん坊を抱いた時、自分は天国でこの子と一緒に永遠の休息が与えられると思った。しかし次の瞬間、アニーは冷たい土の上に落下した。「誰か、私がどこにいるのか教えてくれませんか?」「誰か私を知っている人はいませんか?」とアニーは大声で叫んだ。すると「私が知ってるよ」とパウロが答えた。アニーが天国で会う5人目の人物はパウロだった。アニーはパウロの命を助けることができなかったことを思い知った。今までいろいろなものを失ってきたけれど、最後に夫まで失ってしまった、とアニーは嘆いた。しかし、パウロはアニーに「ありがとう。君は僕に肺を提供してくれた。1分間、僕は君と同じように呼吸することができたのだ。すばらしかった」と言った。「一緒にいたい」とアニーが言うと、「僕はここにずっとここにいるけど、今、君は生きなくてはならない。別の誰かを生かすためにね」と言った。

そして、アニーは病院で目覚めた。

命の繋がり

ところで、この本のタイトル“The Next Person You Meet In Heaven”の「天国で会う次の人」とは誰のことなのか? この本によれば、あなたが天国に行くと生前かかわりのあった5人に会い、自分が間違いを犯したと思っていたことの真の意味、自分が忘れていたこと、知らなかったことやわからなかったことの真実を知ることになる。そしてそのあと、あなたはその「次の人」、つまり6人目の人に会う。この6人目の人にとって、あなたは生前かかわりのあった5人の一人になる。アニーが天国で会った5人はすでに、それぞれが自分と生前かかわりのあった5人に会っている。そして6人目=「次の人」であるアニーに会ってアニーが自分の人生の意味を理解する手助けをした。人の命はそうして繋がり、すべての「終わり」は「始まり」に繋がっていく……。

アニーは天国で6人目の人に会うことなく、この世に戻ってきた。「別の誰かを生かすため」に生かされたのだった。誰を生かすため?
ぜひ作品を読んでください。読者は最後にダメ押しの、感動の涙を流すことになるでしょう。

[3]ミッチ・アルボムのオフィシャル・サイト(https://www.mitchalbom.com/about/)参照

佐藤則男のプロフィール

早稲田大学卒。米コロンビア大学経営大学院卒(MBA取得)。1971年、朝日新聞英字紙Asahi Evening News入社。その後、TDK本社およびニューヨーク勤務。1983年、国際連合予算局に勤務し、のちに国連事務総長となるコフィ・アナン氏の下で働く。 1985年、ニューヨーク州法人Strategic Planners International, Inc.を設立し、日米企業の国際ビジネス・コンサルティングを長く手掛ける。この間もジャーナリズム活動を続け、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官、ズビグニュー・ブレジンスキー元大統領補佐官らと親交を結ぶ。『文藝春秋』『SAPIO』などに寄稿し、9.11テロ、イラク戦争ほかアメリカ情勢、世界情勢をリポート。著書に『ニューヨークからのメール』『なぜヒラリー・クリントンを大統領にしないのか?』など。 佐藤則男ブログ、「New Yorkからの緊急リポート」もチェック!

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