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【先取りベストセラーランキング】1969年の夏、その一家に何が起こったか? ブックレビューfromNY<第45回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの45回目。今回は「夏のビーチで読む本の女王」と呼ばれるヒルダ―ブランドの、1960年代のアメリカの夏を舞台にした、ある一家の物語を紹介します。

<第45回>1969年夏、ある白人中産階級の一家に何が起こったか?

Summer of 69 書影
Summer of ’69/ by Elin Hilderbrand
Little, Brown, 2019.424ページ. US$28.00

今月のベストセラー事情

今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2019年8月4日の週)[1]を紹介する。

1.The New Girl

By Daniel Silva
Harper

スイスの私立学校に通っていたサウジアラビア皇太子の娘が誘拐された。イスラエル諜報機関の長であるガブリエル・アロンは皇太子と協力し、誘拐犯に対峙する……。「ガブリエル・アロン」シリーズ19作目。
(ベストセラー初登場)


2.Where the Crawdads Sing

By Delia Owens
Putnam

1969年、ノースカロライナ州の静かな町でチェース・アンドリュースの死体が発見された時、地元の人たちは、湿地帯で一人暮らしをし、「湿地帯の娘」と呼ばれていた若い女性を犯人だと思った。
(ベストセラー45週目)


3.The Nickel Boys

By Colson Whitehead
Doubleday

1960年代初め、両親に捨てられた黒人少年エルウッドはマーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の言葉を信じていた。しかし無実の罪で有罪になり少年更生施設「ニッケル・アカデミー」に送られたエルウッドは、「更生」とは名ばかりで虐待や不正が横行するこの施設で生き抜く手段を友人のターナーとともに模索せざるを得なかった……。
(ベストセラー初登場)


4.Under Currents

By Nora Roberts
St. Martin’s

暴力的な過去から逃げ故郷のノースカロライナ州ブルーリッジマウンテンから遠く離れた大学に入ったゼィンだったが、数年後に故郷に戻る決心をした。そして故郷での生活を始めた時、彼は、才能豊かな造園家のダービィと知り合った。彼女もまた過去の暗い影から逃避していた。そして2人は、暗い過去と向き合うにはどうしたら良いかを話し合い、お互いに助け合うようになった……。
(ベストセラー2週目)


5.Summer of ’69


13歳のジェシーは毎夏、姉や兄とナンタケット島にある母方の祖母の古い別荘で過ごすのが習慣だった。しかし1969年の夏、長姉は双子を妊娠中でボストンから動くことができず、市民権運動にのめり込んでいた独立心の強い次姉は友達の別荘のあるマーサズ・ヴィニヤード島でアルバイトをしながら自活すると宣言、兄は陸軍歩兵としてベトナムに駐屯していたので、ジェシー1人だけが、母ケイトと一緒に気難しい祖母とこの家で過ごすことになった……。
(ベストセラー5週目)


6.Window on the Bay

By Debbie Macomber
Ballantine

ジェンナは20年前に外科医の夫と離婚した後、シングルマザーとして看護師をしながら2人の子供を育ててきた。そして今、子供は2人とも大学生となり家を出ていった。ジェンナの人生に思いもかけない展開が……。
(ベストセラー初登場)


7.Evvie Drake Starts Over

By Linda Homes
Ballantine

メイン州の小さな町に住むエヴィ・ドレイクは最近夫に先立たれた。エヴィの親友、アンディの幼馴染みのディーン・テニィは元メジャー・リーグのピッチャーだったが、スランプに陥っていた。ディーンはアンディの招きでしばらくメイン州のこの町で静養することにし、エヴィの家の離れを間借りすることになった……。
(ベストセラー2週目)


8.City of Girls

By Elizabeth Gilbert
Riverhead

89歳のビビアン・モリスは、第二次世界大戦に米国が参戦する直前の1940年の夏、19歳の時にマンハッタンに出てきて以来の自分の人生を振り返り、酒とセックスで爛熟した参戦直前のマンハッタン、耐乏を強いられた戦時中、そして戦後大変革を遂げたこの街で生き抜く中で、あるがままの自分でいることの自由を見出していったことを、その人生で唯一愛した男の娘に語り掛ける。
(ベストセラー7週目)


9.Backlash

By Brad Thor
Emily Bestler/Atria

2日前、スコット・ハーヴァスは裏切られた。援軍も期待できず家から遠く離れた地で敵に囲まれたスコットは復讐を誓った。「スコット・ハーヴァス」シリーズ19作目。
(ベストセラー4週目)


10.Mrs. Everything

By Jennifer Weiner
Atria

性格の異なる姉妹、ジョーとベシー・カーフマンが1950年代以降の世の中の変貌の中で、それぞれどのような人生を送ってきたかの物語。
(ベストセラー5週目)


“Where the Crawdads Sing” はベストセラー45週目に入り、ロングセラーへの道を進んでいる。いわゆる歴史小説のジャンルに入る3作品 “Summer of ’69”、“City of Girls” 、“Mrs. Everything” が先月のリストから残っていて、近現代史を背景にした小説の根強い人気を示している。

初登場3位の“The Nickel Boys”も1960年代の公民権運動時代を反映した歴史小説と言える。3年前、“The Underground Railroad”で米国の負の歴史ともいえる黒人史における「地下鉄道」というエピソードを小説化した著者コルソン・ホワイトヘッドは、今回は1900年から111年間実在したフロリダの少年更生施設で行われていた虐待、不正、殺人の実話に基づき、この小説を書いた。

今月は、ベストセラー5週目の “Summer of ’69”を取り上げたいと思う。

[1]“A version of this list appears in the August 4, 2019 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending July 20, 2019. Lists are published early online.” (このベストセラー・リストは2019年8月4日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2019年7月20日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)

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