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【先取りベストセラーランキング】麻薬組織に狙われ、アメリカに不法入国するメキシコ人の母子を描いたサスペンス ブックレビューfromNY<第53回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの53回目。今回は、現代の合衆国における移民・難民にまつわる格差問題を掘り下げ、レビューが炎上したことも話題となった小説を紹介します。

<第53回>麻薬組織に狙われたメキシコ人の母と息子、難民としてアメリカ合衆国に不法入国


American Dirt/ by Jeanine Cummins
Flatiron, 2020.400ページ. US$27.99

今月のベストセラー事情

今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2020 年4月5日の週)[1]を紹介する。

1.Where the Crawdads Sing

By Delia Owens
Putnam

1969年、ノースカロライナ州の静かな町でチェース・アンドリュースの死体が発見された時、地元の人たちは、湿地帯で一人暮らしをし、「湿地帯の娘」と呼ばれていた若い女性を犯人だと思った。
(ベストセラー81週目)


2.The Boy from the Woods

By Harlan Coben
Grand Central

ワイルドという名の男は、人々にとっても彼自身にとっても謎だった。30年前、森の中で野生化している少年として発見された時、彼は既に以前の記憶を失っていた。警察は少年の家族を探したが、手掛かりは何もなく、少年は森の中に戻っていった。そして今でも彼は森の中で、1人で暮らすことを好み、少数の町の人としか交わらなかった。 地元の少女が行方不明になった時、彼は、そのユニークなスキルを使って、少女を探すことを頼まれた……。
(ベストセラー初登場)


3.American Dirt

By Jeanine Cummins
Flatiron

メキシコのアカプルコで書店を経営していたリディアは、夫と一人息子ルカと幸せに暮らしていた。しかし、ジャーナリストの夫が地元の麻薬組織(カルテル)の首領、ハビエルについての記事を書いたため、夫を含む親族16人を殺害された。生き残ったリディアとルカは、ハビエルの魔の手を逃れて、中南米難民たちと共にメキシコを北上し、国境を越えてアメリカ合衆国に不法入国した。
(ベストセラー9週目)


4. The Mirror & the Light

By Hilary Mantel
Holt

イギリスのチューダー王朝、ヘンリー8世の時代、鍛冶屋の息子だったトーマス・クロムウェルは有力な後ろ盾もなく、自分1人の力で競争相手を倒し、王の側近にのし上がっていったが……。「トーマス・クロムウェル」3部作、最後の作品。
(ベストセラー2週目)


5.Star Wars: The Rise of Skywalker

By Rae Carson
Del Rey

スカイウォーカーの物語の最後の章となる。「スター・ウォーズ ディズニー正史(カノン)小説」シリーズ9作目。
(ベストセラー初登場)


6.Smoke Bitten

By Patricia Briggs
Ace

マーシー・トンプソンは腕の良い自動車修理工だが、同時にコヨーテに変身することができるシェイプ・シフターでもある。狼人間の友達もいる。最近、長い間閉じ込められていた邪悪な生き物が逃げ出し、悪事をはたらき始めた。この生き物に噛まれると人間は、その生き物の思いのままに殺人をも犯すようになる。「マーシー・トンプソン」シリーズ12作目。
(ベストセラー初登場)


7.In Five Years

By Rebecca Serle
Atria

マンハッタンの弁護士ダニー・コーハンは、綿密な人生設計を立て、5年後の自分に関してはっきりとしたビジョンを持っていた。恋人からのプロポーズを受けた時、彼女は着々と5年後の自分に向かって人生の駒を進めていると満足な思いで眠りについた。しかしその夜、突然目覚めたダニーは見知らぬ部屋の見知らぬベッドに、見知らぬ男と寝ていた。左手の薬指には見覚えのない指輪がはまっていた。時は2025年12月15日、5年後だった。パニックに陥ったダニーだったが、また突然目覚め、2020年12月15日に戻っていた……。
(ベストセラー2週目)


8.Blindside

By James Patterson and James O. Born
Little, Brown

マイケル・ベネットはニューヨーク市長とは常に緊張関係にあった。しかし、市長の娘が行方不明になった時、市長はベネットに助けを求め、息子が刑務所に入っているベネットと取引をした……。 「マイケル・ベネット」シリーズ12作目。
(ベストセラー4週目)


9.Journey of the Pharaohs

By Clive Cussler and Graham Brown
Putnam

紀元前1074年、エジプトのファラオの墓から莫大な財宝が消えた。1927年、大陸間飛行中の命知らずのアメリカ人飛行士が消息を絶った。そして今日、一隻のトロール船が謎の積み荷とともにスコットランド沖で沈没した。この3つの謎めいた出来事は、どのような繋がりがあるのだろうか? そしてこのことは、カート・オースティンとNUMAチームにとってどんな意味があるのだろうか? 「NUMAファイル」シリーズ17作目。
(ベストセラー2週目)


10.My Dark Vanessa

By Kate Elizabeth Russell
Morrow

2000年、15歳のヴァネッサは42歳の英語教師に魅せられ、関係を持った。2017年、この教師からセクハラを受けたと訴えている元生徒から連絡を受けたヴァネッサは、17年前の自分と教師との関係について考え直さざるを得ない立場に陥った。
(ベストセラー2週目)


ベストセラー81週目になる“Where the Crawdads Sing”は相変わらず1位の座を保っている。3位の”American Dirt”は9週目に入っている。あと4週目になる“Blindside”以外は、すべてここ1-2週間にベストセラー入りした新しい作品ばかりだ。今月は、ジャニーン・カミンズの“American Dirt”を紹介したい。

[1]“A version of this list appears in the April 5, 2020 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending March 21 2020.” (このベストセラー・リストは2020年4月5日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2020年3月21日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)

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