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【NYのベストセラーランキングを先取り!】否応なく「家庭内暴力」「性的マイノリティ」などの社会的弱者について考えさせられる小説 ブックレビューfromNY<第84回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの84回目。ベストセラー作家のジョディ・ピコーと、性的マイノリティの人権擁護の活動家ジェニファー・フィニィ・ボイランがタッグを組んで、重いテーマを描いた作品を紹介します。

<第84回>家庭内暴力から逃れた先で、息子がトランスジェンダーの女子高生殺人事件の容疑者となり、母は……


Mad Honey/ by Jodi Picoult and Jennifer Finney Boylan
Ballantine, 2022.453ページ. US$29.99

今月のベストセラー事情

今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2022年12月4日の週)[1]を紹介する。

1.The Boys from Biloxi

By John Grisham
Doubleday

美しいビーチ、リゾート、水産業で知られたビロクシは、同時にギャンブル、売春、薬物など不正と堕落の町としても悪名高かった。そんな町で仲の良い幼馴染として育ったキースとヒューは、それぞれの父親と同じ道を歩むようになった。この町の悪の根絶を目指した検事である父親を持つキースはロースクールへ進み、犯罪組織のボスとなった父を持つヒューは、父のクラブを手伝って夜の世界に入っていった。
(ベストセラー5週目)


2.The Lost Metal

By Brandon Sanderson
Tor

スカドリアル星とそこに住む何百万人もの人びとの運命は、辺境地の元保安官で今は大都市の上院議員となっているワクシリウム(ワックス)・ラドリアンの決断にかかっていた。Mistborn Sagaシリーズ7作目。
(ベストセラー初登場)


3.Fairy Tale

By Stephen King
Scribner

チャーリー・リードは野球とフットボールが得意な普通の高校生だった。しかし17歳の時、丘の上の大きな家に住む孤独な老人ハワード・バウディッチと知り合ったことで、ハワードの死後、その大きな家と裏庭の小屋、そして大量の金と信じがたい話を物語るカセットテープを引き継ぐ羽目に陥った。そして、この小屋は善と悪が戦っている別世界への入り口だった。
(ベストセラー11週目)


4.Desert Star

By Michael Connelly
Little, Brown

ロス市警に新設された未解決事件捜査課に移ったルネ・バラードは、ハリー・ボッシュが個人的に長年追いかけている一家殺人事件の犯人の捜査に協力するという条件で、彼が未解決事件捜査課の捜査員になることを承諾させた。「ハリー・ボッシュ」シリーズ24作目。
(ベストセラー2週目)


5.Dreamland

By Nicholas Sparks
Random House

音楽家を目指していたが、今は家族の小さな農場を経営し、時々気が向くとバーで演奏しているコルビーと、ナッシュビルでスターになることを夢見ているシカゴの裕福な医者の娘モーガンは一目で惹かれ合った。一方、6歳の息子を連れて夫の暴力から逃れたビバリーは、一大決心をした。愛し合う若い二人と何百マイル離れた場所にいるビバリーの運命は絡み合い、思わぬ方向へ……。
(ベストセラー9週目)


6.Going Rogue

By Janet Evanovich
Atria

《賞金稼ぎ》のステファニー・プラムが働く保釈保証書を扱う事務所のマネージャーのコニーが誘拐された。誘拐犯は、保釈金の形として事務所が預かっていた謎のコインと引き換えにコニーを解放すると言った。「ステファニー・プラム」シリーズ29作目。
(ベストセラー3週目)


7.No Plan B

By Lee Child and Andrew Child
Delacorte

男が女性を車道に押し出し、バスに轢かれたその女性のハンドバッグを奪って立ち去るのを目撃したジャック・リーチャーは、その男の後を追ったが……。「ジャック・リーチャー」シリーズ27作目。
(ベストセラー4週目)


8.Lessons in Chemistry

By Bonnie Garmus
Doubleday

1950年代の終わり、まだ男性優位の時代に、 エリザベス・ゾットは唯一の女性化学者として研究所内で難しい立場にあった。そして、シングルマザーになることが明らかになると解雇された。その彼女は1960年代の初め、なんとテレビの料理番組のスターになっていた。
(ベストセラー28週目)


9.Mad Honey

By Judi Picoult and Jennifer Finney Boylan
Ballantine

ボストンに住んでいたオリヴィアは心臓外科医の夫と別れ、一人息子のアシャーを連れてニューハンプシャーの実家に戻り、父の養蜂業を引き継いだ。数年後、高校生のアシャーは、転校してきたリリーに一目ぼれし、リリーもアシャーに好意を持った。しかしある日、アシャーはリリー殺人の容疑で逮捕され、裁判にかけられた。
(ベストセラー7週目)


10.Triple Cross

By James Patterson
Little, Brown

刑事アレックス・クロスと犯罪ノンフィクション作家トーマス・タルは、《ファミリー・マン》と呼ばれている連続殺人犯を追った。「アレックス・クロス」シリーズ30作目。
(ベストセラー3週目)


今月は、4作品が先月のベストテンから引き続きランクされている。先月14位だったLessons in Chemistryは8位となり、10位以内復帰を果たした。

12月になり、例年通り、今年のGoodreads Choice Awardsの発表があり、このコラムで取り上げた作品が次のように、受賞したり、候補作品となったりした。
⚫︎ フィクション部門
受賞:Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow(8月)
候補作品:This Time Tomorrow(6月);Mad Honey(12月)
⚫︎ ミステリー・スリラー部門
2位:The Paris Apartment(4月)
⚫︎ 歴史小説部門
2位:Lessons in Chemistry(9月)
候補作品:The Marriage Portrait(10月)
⚫︎ デビュー小説部門
受賞:Lessons in Chemistry(9月)

今月は、ジョディ・ピコーとジェニファー・フィニィ・ボイラン共著の小説Mad Honeyを取り上げたい。ジョディ・ピコーについては、2016年11月、このコラムで人種問題をテーマにした小説Small Great Thingsを紹介したことがあるベストセラー作家。ジェニファー・フィニィ・ボイランは、小説家、大学教授であるとともに、社会的弱者、特に性的マイノリティの人権擁護の活動家としても知られている。

[1]“A version of this list appears in the December 4, 2022 issue of The New York Times Book Review. Rankings on weekly lists reflect sales for the week ending November 19, 2022.” (このベストセラー・リストは2022年12月4日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2022年11月19日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)

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