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師いわく 〜不惑・一之輔の「話だけは聴きます」<第45回> 『オフィス・カジュアルって、なんですか?』

4月からは新しくラジオ番組がスタートし、今月からはいよいよ全国ツアー「春風亭一之輔のドッサりまわるぜ2019」もスタートする一之輔師匠。いったい師匠はどこまで走り続けるのか……

『師いわく』新ヘッダー画像

 

キッチンミノル(以後、キ):『師いわく』のお悩み相談をこうやっておこなうのも久しぶりな気がしますね。このところ単行本の出版記念イベントで、大人数のお客さんの前でライブ実演していたので。

一之輔師匠(以後、師):生きてた?

キ:なんとか…って、ちょくちょく落語会で会っていたじゃないですか! 撮影に入ったり『師いわく』を会場で販売したり。 

師:そうだっけ?

キ:ひどいなぁ。そうやって新しい記憶までどんどん抜け落ちていくのは、きっと仕事しすぎなんですよ。……そういえばニッポン放送で「あなたとハッピー!」が始まりましたね。金曜日だけですけど
【編集部注】あなたとハッピー!…ニッポン放送で、月~金曜日のAM8:00~11:30に放送されている情報バラエティ番組。通常のパーソナリティーは垣花正アナだが、この4月から金曜日のみ一之輔師匠が務めることとなった。

師:いいんだよ金曜日だけで。大変だよ、毎日は。

キ:パートナーの増山さやかさんの声がとても聴きやすく安心感がありますね。ずーっと聴いていたい声です。一之輔さんがどんなことをしても受け止めてくれそうな感じがします。たとえ一之輔さんがいなくても番組が回っていきそうな…

師:そりゃそうだよ。ニッポン放送のトップアナウンサーだぞ。それにオレから年齢を言うのも変だけど、画像を検索してみな、全然その歳には見えないよ。

キ:どれどれ……あ、本当だ! えーッ? 一之輔さんより年下に見えるんですけど!?
【編集部注】増山さやか…ニッポン放送のアナウンサー。生年月日は1966年5月27日。入社30年のベテラン。実年齢よりもずっと若く見えて……気になるお姿は各自で画像の検索お願いします。

師:ねーねーキッチン。それね、増山さんはヨイショしているけど、オレに対してはしくじっているからね。

キ:……でも増山さんは、声だけ聞くとベテランの重みもちゃんとありますよね。

師:…………

キ:……えーと、では気分を変えて。読者からの一問一答形式の質問がきています。ハンドルネーム「視力−7」さんから。

師:はい。

キ:この方は29歳の女性です。

「師匠、みなさま、おつかれさまです。師匠は高座にあがるときの視力はどれほどですか?
ホールでも、前方席だと、師匠と目が合った気がして眼力に射抜かれることがたびたび。」

師:合ってねーし。見てねーし。 

キ:こらこら。疲れてるから、口が悪い。

師:オレは裸眼視力だと0.1あるかないかかなぁ。場所にもよるけど、最前列の人の性別がようやくわかるくらい。

キ:なるほど。

師:長髪のオネーちゃんだなと思っていたら広瀬さんだったってことがあった。
【編集部注】広瀬さん…広瀬和生氏。ヘヴィメタル系洋楽専門誌BURRN!(シンコー・ミュージック・エンタテイメント)の編集長を務める傍ら、落語の評論や落語企画のプロデュースでも活躍。……ほぼ毎日、落語鑑賞をされていて、赤髪ロン毛がどこの会場でもよく目立ちます。

キ:あはは、それはショックだなぁ。それじゃあぼやっとしながらも、お客さんの目を見て話すんですね?

師:そんなことはないよ。全体を俯瞰で見ながら喋ってるかな。枕のときは客席に顔を向けることもあるけど。基本的には俯瞰かなぁ。

キ:将来的にはメガネをして高座に上がりたいとか思っていたりします? 春風亭昇太師匠みたいに。

師:ないない。なんで? イメチェンのために?

キ:いやそういうことではないんですが……。じつは師匠の、メガネをかけているお弟子さんに「メガネをかけて出ないの?」と聞いたことがあって。そうしたら「前座のときはダメだけど、名前が売れたら何してもいいからかけようと思っています」と言ってたんで。

師:売れたらメガネをかけようと思っているって!?

キ:は、はい。売れたら何をしてもいいって。

師:なに図々しいこと言ってんだよ! 売れると思ってんのか。

キ:お、思っちゃダメですか…

師:今から売れるつもりでいるってことだろ。バカなんじゃねーか?

キ:(やばい、なんか言わなくてもいいことを言ってしまったかも。お弟子さんゴメン!)

師:その了見が恐ろしいよ……

キ:そ、そうですね……

 

師に問う:
いつも楽しく読んでます。寄席にも行きたいです。
就活も無事に終え、来年から社会人になる大学生(女子)です。今度、就職が決まった内定者の説明会に呼ばれているのですが、その案内に「オフィス・カジュアルでお越しください」と書いてありました。オフィス・カジュアルってなんですか? どんな服装で行けばよいのかわかりません。クールビズとはちがうんですか? クールビズもわからないんですけど。 
(匿名希望/千葉県)

 
 

キ:……じつはこのお悩み、昨年いただいてまして。今ごろはめでたく社会人になっているハズなんですけど。

師:寄席には来ればいいじゃない。遠慮せずに〜。

キ:いつでもやってますからね。

師:ところで、オフィス…カジュアル? なにそれ?

キ:匿名希望さんも「オフィス・カジュアルってなんですか? 」っていう質問なんです。

師:オレも聞きたいよ。

キ:「どんな服装で行けばよいのかわかりません。クールビズとはちがうんですか? クールビズもわからないんですけど」と。

師:ほんとうだよ。オレもわからないもん。

キ:「オフィス・カジュアル」って単語をいま初めて聞きました…みたいな顔してましたもんね。

師:そんなことはないよ。オフィスのカジュアルでしょ。

キ:たぶん。

師:それは、オーバーオールです。

キ:作業着!?

師:汚れてもいいような。だってオフィス・カジュアルでしょ、働きやすくて動きやすくなきゃ。

キ:そういうことかなぁ?

師:オーバーオールに麦わら帽子じゃダメ!?

キ:え〜と、完全な作業着ですけど? “カジュアル”ではあるかもしれないけど、“オフィス”じゃないですよね? どちらかといえば…

師:まきば!

キ:ですね。

師:でっかいフォーク持って。まきばカジュアルか…

キ:まきばになっちゃうと、今度は逆に“カジュアル”じゃなくて「まきばフォーマル」みたいですけどね。正真正銘の仕事着だから。

編集の高成さん(以後、タ):「オフィス・カジュアル」とは、スーツでなくてもよいけれど仕事で相手に失礼にならない感じの服装のことです。

師:じゃあ、どんなの? それは面接? 説明会?

キ:内定者の説明会ということなので。面接とかではなく、もう少し気楽な会なんだと思われます。

師:目立たなきゃダメだよ、目立たなきゃ。

キ:……目立つ?

師:これが私のオフィス・カジュアルです!…って堂々と行くべきだよ。

キ:バシッと「これが私です!」というのを格好から示していけと?

師:そう。……野球帽をハスにかぶってさ、グローブにバットを差しこんでそれを肩に担いでさ。

キ:明らかに悪目立ち。

師:腰のベルトから手ぬぐいをぶら下げていくといいよ。

キ:それ、誰なんですか!?

タ:そういえば、資生堂は「就職面接にスーツで来ないでください」と数年前から告知しているそうですよ。自分らしさをアピールしてほしいという意図だそうで、それこそ野球をがんばってきた学生が、自分の個性を表現するためにユニフォームで来たという事例もあったみたいです。

キ:本当にいたんだ!

師:泥だらけでね。どうかしてるな。

キ:いやいや(あんただよ!)。

タ:これとは別に、食品会社で同じような指定がされていて、タートルネックを着ていった学生が面接官に「暖かそうだね」って嫌味を言われた…って記事も読んだことあります。

キ:えっ?

タ:言葉にすると同じでも、業種によって言っている意味や基準が違うってことみたいです。

師:「平服でおいでください」って書いてあってもスーツくらいは着てこいよみたいなことなのかね。

タ:そうですね。

キ:そんなところから空気の読み合いが始まってるんですか! ヒ〜ッ!!

師:罠だよ罠。

タ:そもそも「平服」という言葉も、「普段着」ってことではなく「フォーマルではない」って意味ですしね。

キ:???

タ:わざわざ燕尾服やタキシード着てこないでね…ってことだから。
【編集部注】…燕尾服は夜の正装(フォーマル・ウエア)。タキシードは夜のパーティー用で本来はセミ・フォーマル。各々ネクタイの色にちなんで「ホワイト・タイ」「ブラック・タイ」と呼ばれます。また昼の正装モーニングは燕尾服に似ているけれど、ネクタイが白黒の縞か銀色が基本です。

キ:ええ〜ッ? それじゃあ「平服でお越しください」って書いてあったら、気楽に構えてちゃいけないんだ。私はスーツを持ってないから、スーツを買ってからその会に参加しないといけないのか!!

タ:そうなりますね。「平服」とは「スーツにネクタイ」の意味です。

師:キッチンにはどうせそんな機会ねーって。だからスーツ持ってねーんだろ。バーカ!

キ:いやいや、スーツ持っていないだけで「バーカ」って…

師:だけどオレだって燕尾服までは持ってねーなぁ。

キ:いらないでしょ。

師:違うんだよ。先輩の噺家はみんな燕尾服を持ってんだよ。

キ:へ〜、いつ着るんですか?

師:昔は結婚式の司会とかの営業がいっぱいあったから、二ツ目になったらみんな作ったんだよ。

キ:和服を着ればいいじゃないですか。

師:そうだけど、船とかの仕事もあるからさ……

キ:船。はぁ…

師:船に何時間か乗ってさ。正装しないといけないときもあるじゃない。

キ:屋形船で…?

師:違うよ! クルーズ船だよ!! にっぽん丸とか飛鳥Ⅱとか、そういう。

キ:ああ、豪華客船ですか!! まったく違う船をイメージしていました…

師:屋形船に燕尾服で行ったらおかしいだろ!

キ:そうでしょう。私もなんかおかしいなぁと思って…

師:クルーズ船とかだとダンスパーティーがあるんだって。そういうときはタキシードを着ないといけないの。

キ:ダンスパーティー会場でタキシードを着て落語をやるんですか?

師:なんでだよ! 船内のイベントとして「ダンスの日」ってのがあるんだよ。そこではドレスコードがあって、その会場に入るためにはタキシードを着ていかなきゃいけないんだよ。

キ:なんだかめんどくさいッスね。

師:ほんとに。……それで匿名希望にバシッと答えを言わないといけないわけ?

キ:えーと……いや、いいみたいです。

師:答え、いらないの?

キ:はい。「師匠やキッチンさんに聞いてもしょうがないかと思ったのですが、質問してみました(≧∇≦)♪」って書いてあるんで。

師:なんだよ! 絵文字で「キャハッ!」じゃないよ。

キ:あはは。ナメられてますね〜。

師:くそ〜……決めたッ!

キ:はい。

師:オフィス・カジュアルはオーバーオール! 必ず着ていくべし。

キ:おお〜、鼻の穴を大きくして言い切りましたね。

師:おうよ。

キ:お給料が入ったら、ぜひ寄席にも来てほしいですね。そのときはもちろんオーバーオールで。

師:待ってんぞ(≧∇≦)♪

 

師いわく:
師いわく 第45回〆の画像 文字修正版

(師の教えの書き文字/春風亭一之輔 写真・構成/キッチンミノル)※複製・転載を禁じます。

 

いよいよ書籍化! 『春風亭一之輔 師いわく』好評発売中!

 

プロフィール

一之輔プロフィル写真

春風亭一之輔:落語家

『師いわく』の師。
1978年、千葉県野田市生まれ。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。前座名は「朝左久」。2004年、二ツ目昇進、「一之輔」に改名。2012年、異例の21人抜きで真打昇進。年間900席を超える高座はもちろん、雑誌連載やラジオのパーソナリティーなどさまざまなジャンルで活躍中。
 
 
キッチンプロフィル写真

キッチンミノル:写真家

『師いわく』の聞き手。
1979年、テキサス州フォートワース生まれ。18歳で噺家を志すも挫折。その後、法政大学に入学しカメラ部に入部。卒業後は就職したものの、写真家・杵島隆に褒められて、すっかりその気になり2005年、プロの写真家になる。現在は、雑誌や広告などで人物や料理の撮影を中心に活躍中。

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『師いわく』では、不惑を迎えた春風亭一之輔師匠に相談したいあなたのお悩みや愚痴をお待ちしています。下記のメールアドレスに、①あなたのお名前(匿名・ハンドルネームOK)②お悩み・愚痴など…を書いてお送りください。③性別④年齢⑤お住まい…なども書いていただくと、師匠も相談にのりやすそうです。採用された方には、春風亭一之輔&キッチンミノルのサイン入り特製クリアファイルを差し上げます!

iwakuichinosuke@shogakukan.co.jp

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