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ヤマ王とドヤ王 東京山谷をつくった男たち 第十四回 「戦争花嫁」の落とし子

大阪のあいりん地区、横浜の寿町と並んで、日本の「三大ドヤ街」と呼ばれる東京・山谷。戦後日本の高度経済成長を支えた日雇い労働者たちが住み着いたかつての街は、「ヤマ王」と「ドヤ王」と呼ばれた伝説の男たちがいた。特に近年は外国人観光客が増えていたが、新型コロナウイルスの影響でその動きもパタッと止まった。そんな中で、「50年以上暮らした米国から2年前、日本に強制送還された」と話す日系アメリカ移民の宿泊者に出会った。山谷にたどり着いた経緯を聞くと、沖縄の戦後史やトランプ前政権の不法移民政策など、様々な事情が複雑に絡んでいて……。

 

「きょうだいで唯一の厄介者」

     
 鮮やかな黄緑色のシャツを着て、柔和な笑みを浮かべた黒髪の女性の両脇に、ブロンドヘアの少年2人が同じく、白い歯を見せて笑っている。穏やかな時間に包まれた1枚だ。
 米国に住むマイケルの妹(57)からフェイスブックを通じて私に送られてきた、生前の母と息子たちの写真である。
 妹は現在、カリフォルニア州に住み、幼稚園に関わる仕事をしている。山谷から約8500キロ離れたカリフォルニアとこんな形でつながるのも、不思議な縁というほかない。スマホの画面に写る妹は、白髪のマイケルとは異なりブロンドヘアで、やはり日系には見えなかった。そんな彼女は、バーでの暴行事件をはじめ、マイケルのこれまでの経緯についてはおおよそ把握している。
「事件を聞いても特に驚かなかったわ。米国でもそうだったけど、マイケルは酒が入るとトラブルになるの。アル中よ。マイケルとは頻繁に連絡を取る間柄ではないんだけど、何か問題を起こすと電話が掛かってくるの。今回もそうよ」
 それでも妹は関係を維持し、しかも日本へ送金までしていた。
「マイケルは本来、米国市民権を取得できるはずだから、そういう意味では気の毒に感じているの。ただ事件に関して、彼のやったことは看過できない」
 妹によると、マイケル以外のきょうだいはそれぞれ結婚して家庭を持ち、真面目に働いている普通の人だという。
「兄弟の中で、マイケルだけが厄介者よ。でもその原因はやっぱり、実の父のことがあると思うの。私たちの父と違うことが発覚してから、マイケルは非行に走るようになった。その過去が彼の人生に影響を及ぼしたのは間違いないでしょう」
 マイケルの境遇に一定の理解は示すものの、アル中による数々のトラブルで、複雑な心境に陥っていた。

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