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【実写化、コミック化、受賞作品多数】お笑い芸人が著者の本 おすすめ5選

品川庄司・品川祐著『ドロップ』や麒麟・田村裕著『ホームレス中学生』が刊行された2006~2007年頃から、お笑い芸人が本を書くことが急激に増えました。2015年には、ピース・又吉直樹が『火花』で第153回芥川賞を受賞、お笑いの才能だけでなく文才まで見せ始めたお笑い芸人たち。小説、エッセイ、自由律俳句など、今では幅広いジャンルの本が毎月刊行されています。今回は、数多くあるお笑い芸人たちの作品の中でも、笑いと感動、衝撃を与えてくれる珠玉の5冊を紹介します。

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本日も理不尽な一日に乾杯-『一発屋芸人の不本意な日常』山田ルイ53世

一発屋芸人の不本意な日常
https://www.amazon.co.jp/dp/4022515880

【あらすじ】ルネッサンスのネタで一発当ててしまったがゆえに、それだけの人と思われてしまった髭男爵。「一発屋芸人」と言う称号を自ら名乗る山田ルイ53世が、独特な切り口で理不尽な出来事を描き、多くの人から反響を呼んだ自虐エッセイ。一発屋と呼ばれる芸人たちの悩める日々が世間に暴露されてしまった衝撃の一冊。

「ルネッサンス」で有名な髭男爵は「第1回一発屋オールスターズ選抜総選挙2015」の初代王者です。そんな髭男爵・山田ルイ53世は、独特の表現力を駆使して、不本意な日常を面白おかしく綴っています。
前作『一発屋芸人列伝』は、『新潮45』掲載時に雑誌ジャーナリズム賞の作品賞を受賞し、単行本化してから「Yahoo!ニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞」の最終候補10作にもノミネートされる人気作品となりました。本作はそのシリーズの第2弾となります。

「大学に合格した!」とか「結婚した!」とか「子供が産まれた!」とか、人が人生を振り返るとき、「そういえば、あの年はあの芸人のあのギャグが流行ってたな~!」と人々の記憶に常に寄り添う存在、言うなれば“人生のしおり”-それが、僕達一発屋である。

仕事の多くは地方営業に、出演者が決まらない時のピンチヒッター。殺人現場の死体役をこなし、ご当地B級グルメを売りさばき、見知らぬ新郎新婦の披露宴で乾杯の音頭だけをとり……。もう旬の芸人ではないとけなされることも多い一発屋だけれど、一矢報いる気持ちは今もまだ健在です。自虐ネタや愚痴をユーモラスに織り交ぜてあり、こんな苦労があったのか! という驚きもあります。

「もっと、テレビにいっぱい出てる人に来て欲しかったなー」
毎日テレビで見るような売れっ子を自分の住む町で見てみたい……その気持ちは重々理解できる。しかし、この手の不平不満を抱くのはお門違いも甚だしい。
少し考えれば分かること。
毎日テレビで見るような人は、「毎日テレビ局にいる」のだ。
あなたの町には来ない。
少なくとも売れっ子は、あなたがいつも買い物をするお店で、フランスパンを配ったりはしない。

一発屋と呼ばれる芸人たちが受ける理不尽な対応には、目を丸くしてしまう人も多いはず。引きこもりや大学中退経験を経て、様々な人と関わってきた山田ルイ53世の、笑いと切なさに満ち溢れたお笑い貴族の生活の全てが記されている毒舌エッセイです。

嫉妬の妖怪が書き連ねた怨念の結晶-『天才はあきらめた』山里亮太

【あらすじ】僕はお笑いの天才ではなかった――。燃え滾るほどの悔しい思いを繰り返しながら、この世界にしがみついて死に物狂いの努力をすることに決めた、南海キャンディーズ・山里亮太の闘いを書き殴った、天才になれなかった人間の爆走劇。

天才はあきらめた
https://www.amazon.co.jp/dp/4022619368

山里亮太がツッコミを担当する南海キャンディーズは、2004年にABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞とM-1グランプリ準優勝を勝ち取り、2005年には上方漫才大賞の優秀新人賞とゴールデン・アロー賞の新人賞を受賞した実力派コンビです。しかしM-1グランプリ2005では最下位。相方と不仲の時期を乗り越え、多くの困難を打ち砕いてきた屈強さを武器に、昨年初の単独ライブを行い、大成功を収めました。
そんな山里が売れたい欲望を曝け出し、ノートに書き殴った“復讐”が文庫化された一冊。お腹いっぱいになるほどの劣等感で埋め尽くされた山里の頭の中が丸わかりです。

こう言ったらこう思われるんじゃないか?ここで笑っていたらこう思われるんじゃないか?この話をしたらセンスないと思われるんじゃないか?……と詮索する量が増え、結果、行動が制限されて、人見知りのでき上がり。あれ?お笑い向いてなくない?

天才はあきらめた。だけどその瞬間、醜い感情は一気に自分の味方になった。その感情を燃料に変換させるワザを使うことで、努力というしんどい行動が簡単にできるようになたから。

解説でオードリー・若林正恭は山里のことを、一番の友人にして一番潰したい男と語ります。

それに、ぼくが番組で雑ないじられ方をされていたりするのをテレビで見るとLINEを送って来る。
「俺、あいつ許せない。悪い評判流すから任せといて!」
そんな、よく分からない成敗を提案してくれたりする所があった。

情けないところを包み隠さず、陰湿さを堂々と語る。そして「他の人たちがコンパをしている間に、一つでも新しいワードを生み出す」と掲げるネガティブストイックな山里。成功体験などそっちのけで、1%のミスのことを考えるため、ライブ後の山ちゃんを励ます担当スタッフがいるというから驚きです。
辛酸を舐めながら多岐に渡って活躍する山里の「努力の天才」っぷりには脱帽します。

許せないものを野放しにしていいものか-『月の炎』板倉俊之

月の炎
https://www.amazon.co.jp/dp/4103515910

【あらすじ】皆既日食を見たあの日から、この街では不可解な火事が続いている。過去に自身の父を火事に奪われた経験を持つ、一ノ瀬弦太は、親友の星野涼介と放火魔を探すことに決めた。しかし弦太の周りで連続して発生する火事には、悲しい真実が隠されていた。

2009年と2011年のキングオブコントで4位を受賞しているインパルス。コントの台本と演出の全てを手掛ける板倉俊之は『トリガー』、『蟻地獄』のほか、機動戦士ガンダムシリーズの小説の執筆も行っています。小説家としての才能を開花させた板倉の最新作は、心を震わす青春ミステリー小説です。

黒い影となった月が、白く輝く太陽に重なっていき、やがてその姿を覆い隠した。その様子は、月が、地上から殺到する無数の視線から、太陽を守っているようでもあった。

小学校の授業で皆既日食を見たその日に、クラスメイトの茜の家が火事になります。被害は茜の家だけでは終わらず、後日学校の兎小屋も燃やされてしまいます。こんなにも短期間で同じ地域に火事が発生するなんて、犯人は同一人物だろうと誰もが考えました。

-何かで迷ったときは、まず損得勘定を捨てて、それから、一番正しいと思うことを選ぶんだ。得だからやる、損だからやらないなんていう生き方は間違ってる。正しいと思うなら、たとえどんな代償を払うことになろうとも、そっちを選ぶのが男だ-
-いいか、弦太。嘘にはいくつかある。自分を守るためにつく卑怯な嘘。誰かを守るためにつくやさしい嘘。男が使っていいのは二つ目だけだ-

消防士として殉職した父にそう教えられた正義感の強い弦太は、親友の涼介と探偵小説好きの江崎と共に、犯人探しに乗り出します。夜にパトロールをするには大人がいないと怒られるので、弦太たちの中で流行しているミニ四駆バトルの「師匠」に協力を依頼します。
聞き込み開始と同時に、兎小屋で火事が発生した日、実は担任の時任が朝早くから職員室にいたことを知ります。4人は半信半疑で休日に時任を尾行しますが、向かう先は何とガソリンスタンド。まさか本当に、あの優しい時任が犯人なのでしょうか。

本作は小学生が主人公で、一見ほのぼのとした児童小説のように感じますが、後半の巻き返しのスピード感は圧巻です。登場人物たちのちょっとした会話の中にもミスリードや驚きの伏線が連発しています。登場人物たちの名前に皆既日食に関わる文字が入っているところも面白さの1つで、板倉のこだわりが感じられます。読み終えた時、タイトルと皆既日食のエピソードの秀逸さに、つい唸ってしまうでしょう。

エンターテイナー・千原兄弟誕生秘話-『14歳』千原ジュニア

14歳
https://www.amazon.co.jp/dp/4344413334

【あらすじ】千原浩史、14歳。人と同じことをするのはどうしても苦手だった僕は、学校へ行かず、制服を脱ぎ捨てパジャマで生活していた。非難の目にさらされ、家族を苦しませてしまうとわかっていながらも、自分がリングに上がれる世界を探し続けていた。千原ジュニアがお笑いの道へ辿り着くまでの苦悩を描いた自伝的小説。

1994年のABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞と上方漫才大賞の新人賞を受賞している千原兄弟。あの千原ジュニアにそんな過去があったなんて……、という驚きを隠しきれない本作は、千原兄弟・千原ジュニアが最も知られたくなかったと語る過去を赤裸々に書き連ねた私小説です。2009年にはテレビ東京系列の「開局45周年キャンペーン“絆”」の単発スペシャル企画として、実写化されました。

14歳の「千原浩史」は偏差値が高く優秀な中学校に行ったものの、決められたレールに乗って歩んでいくことができず、学校に行かなくなります。引きこもり生活を始めたことで、両親ともぎくしゃくしていました。家中は落書きや穴だらけ。衝動的になると自分でもよくわからないまま叫んでしまったり、壁を壊してしまいます。
近所の人たちからの評判も悪く、周りから変わり者と思われていることが余計に浩史の精神面を不安定にさせていました。それでもあしたのジョーのように、自分が戦うべきリングがあるはずと、やりたいことを模索します。

苦しみばかりが続く日々の中、浩史を避ける人物ばかりの中学校で、驚くことに友だちと呼べる人物が現れました。さらに幼い頃から浩史のことを理解してくれるおばあちゃんと久しぶりに話すことで、少しずつ変化が現れ、自分の殻を破っていけるようになります。

隣に並んだレールの上を小さな鳥が歩いている。
おばあちゃんはその鳥をじっと見つめながら、
「鳥だってたまには歩きたいもんね」
と言った。
鳥に言ったのか本当は僕に言ったのか解らないけど、僕は泪が出そうになった。

もう少しで何か見つかるんだと思っている矢先、両親によって全寮制の規律の厳しい学校に転校させられそうになります。そんなタイミングで兄の靖史せいじから突然電話がかかってきて、翌日、大阪まで会いに行くと、「吉本の養成所で兄弟コンビを組むことにしたから」といきなり告げられます。突然の宣言に驚きながらもワクワクした気持ちを感じた浩史。

笑いと言う世界。初めて見る世界。奇妙な形をした世界。すごく輝いていて純粋な世界。初めて抱く感情。
誰かを笑顔にしてみたい。
目の前にいる人たちすべてを笑顔にしてみたい。
知らない人を笑顔にして自分に笑顔を取り戻したい。

兄の靖史が導いた、千原ジュニアがお笑いの道へと進むことになったサクセスストーリー。どんなに楽しそうにしている人でも、誰かを笑わせている人でも、苦しまないなんてことはないのだと教えてくれる一冊です。

OL、徒然なるままに-『架空升野日記』バカリズム

架空升野日記
https://www.amazon.co.jp/dp/4777805689

【あらすじ】更衣室でのおしゃべり、仕事帰りの笑笑、ジム帰りのラーメン、ムカつく上司のあだ名はタッチ。OLってきらびやかなことばかりじゃない。むしろ世の中のOLってきっとこんな感じ。バカリズムによるなりきり妄想OL日記。

1995年から2005年まではコンビで活動していたバカリズム。現在はバカリズム名義のままピン芸人として活動する升野英知が、2006年1月からホームページに書き続けてきた妄想日記を書籍化したのが本作です。コンビでもピン芸人としても多くの受賞歴を誇る升野が、番組などの企画ではなく趣味で書いていたという日記なので、好き勝手なことが書かれています。2013年に『架空OL日記』と改題して文庫化、2017年に自身が脚本と主演を務めてドラマ化もされました。

自分自身がOLになりきって送る日々は、平和な中にも笑いや葛藤があり、これは現実の話なのかもしれないと思ってしまうほどリアルです。嫌いな上司にあだ名をつけたり、寝坊してノーメイクの時に憧れていた先輩に遭遇してしまったり、ダイエットをしてはお菓子に手を伸ばしてみたり……。あるあると頷きたくなるような、愛すべき他愛もない日常が綴られています。登場人物たちもとても魅力的で、こんな会社で働いてみたいと思う人も多いでしょう。

ちなみに、ヨーちんはガッツリという表現をしない。
ごっぽりと表現する。
ごっぽりって、なんかかわいい。
私もごっぽりにしようかしら。

それにしても坂木さんの絵はひどい。
何を描いてもそういう形の生姜にしか見えない。
車を描いても生姜。
小峰様を描いても生姜。
本人的に1番いい出来らしき猫も、結局ただの形の整った生姜。
ドリンクバーでジンジャーエールばっかり飲んでるからなのか。

バカリズムが、暇つぶしと身内を笑わすためだけに書き始めた、架空の日常生活を綴った日記。1日の振り返りは長くても3ページ未満なので、少しずつ本を読み進めたい方にもおすすめです。
人の日記をこっそり読んでみたいという方、バカリズムの分身であるOL升野の日常をご覧ください。ほっと一息つきたい時にいかがですか。

おわりに

親との不仲、引きこもり、自信喪失……。多くの人を笑わせてくれるお笑い芸人には、その裏側に様々なバックグラウンドを持つ人が多くいます。軽快なトークや笑えるネタには、売れなかった日々やつらい出来事がその何倍もあるということがわかります。そびえ立つ壁を乗り越えて、輝かしい舞台で芸を披露するお笑い芸人たち。笑い以外にも伝えたいことがたくさんある人の文章は、多くの人の心を惹きつけます。

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