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文学に学ぶ、「遠距離恋愛」の成就の秘訣【文学恋愛講座#16】

すぐに好きな人に会いに行くことができない、というもどかしさが悩みの種である“遠距離恋愛”。カップルが遠距離でも仲良くし続けるための3つの秘訣を、さまざまな文学作品を参考にご紹介します。

結果発表

パートナーや好きな人に会いたくても、簡単には会いに行けないというもどかしさが募る“遠距離恋愛”。これまでに遠距離恋愛を経験したことのある男女は77%にも上るというデータ(※DeNAトラベル調べ)もあるほど、“遠距離”は恋愛とは切っても切り離せない、とても身近なトピックです。

しかし、遠距離恋愛中のカップルは会えないことによるすれ違いを起こしやすく、残念ながら破局に至ることも少なくありません。今回の文学恋愛講座では、そんな遠距離恋愛を長続きさせ成就させるための3つの「秘訣」を、さまざまな文学作品をヒントに紹介していきます。

【秘訣1】LINEや電話だけに頼らず、あえての“文通”をしてみる

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遠距離恋愛中、LINEや電話を使って日常的にパートナーとのコミュニケーションをとっている、という人がほとんどのはず。簡単に会うことのできない遠距離恋愛において、文字や声だけでも頻繁にコミュニケーションをとるようにする、というのはもちろん大切なことです。

交際を長続きさせるために、忙しいときでも「おはよう」「おやすみ」のLINEは送るようにする、週に数回程度は短くてもいいから電話をして直接声を聞く──といった小さなルールを設けているカップルも多いのではないでしょうか。

そんなカップルにあと一歩進んでおすすめしたいのが、“文通”。手紙を送り合うなんて古風だしちょっと面倒臭い……、と感じる方もいるかもしれませんが、封筒と便箋を買い、文字をしたため、宛先を書いて送るという行為にはたしかにちょっとした労力が必要になります。しかし、その労力を注いでいる時間こそが、パートナーのことを想うための時間になるのです。

時を1300年ほど遡った奈良時代、遠距離恋愛をしている恋人たちの連絡手段は和歌を送り合うことでした。たとえば、中臣宅守なかとみのやかもりという男性と狭野弟上娘子さののおとかみのおとめという女性のカップルは、宅守が田舎に流されることになり遠距離恋愛を強いられてしまうのですが、情熱的な歌を頻繁に送り合うことで恋の炎を消さないようにしていました。

弟上娘子は、旅立ってしまう宅守にこんな過激な歌を送り、

君が行く 道の長手を繰り畳ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも
(現代語訳:あなたが行く長い道のりをたぐり畳んで焼き滅ぼすような、天の火があったらいいのに)
──万葉集 巻十五より

宅守はこの歌に対し、

畏みと 告らずありしをみ越道の 手向けに立ちて 妹が名告りつ
(現代語訳:ずっと恐れ多くて口に出さなかったが、越前へと向かうこの道の頂上に立ち、とうとう愛しい人の名を口に出してしまった)
──万葉集 巻十五より

と、いじらしい歌を返しています。心細いときに恋人が遠く離れた場所で自分の名前を呼んでくれているという事実を嬉しく思わない人は、おそらくいないのではないでしょうか。

もちろん、現代に生きる私たちが和歌を送るとなると非常にハードルが高いですが、LINEやメールでは書けないようなちょっと照れ臭くロマンティックな言葉も、“手紙”という非日常の場であれば綴るハードルが低くなります。さらに、インターネットを介したメッセージは(通信障害が起こらない限り)送ったその瞬間に相手に届きますが、文通では相手がいつその手紙を読むかわからない、というハラハラ感も味わえるのです。

相手のために手紙という“ひと手間”をかけ、ちょっと気取った言葉で愛を伝えてみる──というのは、遠距離恋愛中のカップルに非常におすすめのコミュニケーション方法のひとつです。

【秘訣2】“交通費問題”を、ふたりで歩み寄って解決する

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会話が不足してしまう、相手の近況や人間関係がわかりづらくなってしまう──といったコミュニケーションの問題ももちろん重要ですが、遠距離恋愛中のふたりにとって現実的に大きな課題となるのは、“会いに行く際の交通費がかさむ”ことではないでしょうか。

この“交通費問題”の裏には、単にお金が不足しがちになってしまうというデメリットだけでなく、歳上の相手や男性側がつい見栄を張って「自分が出す」と宣言してしまったり、交通手段や宿泊施設を調べて確保する作業がふたりのうちのどちらかに偏りがちになって不満が溜まったり──といった、細かいながらも見逃せない問題が隠れています。ベストなのは、会いに行くための交通費について一度ふたりできちんと話し合い、一定のルールを設けることです。

十四歳の遠距離恋愛
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4087713296/

嶽本野ばらによる長編小説『十四歳の遠距離恋愛』の中では、仲葦なかよしと藤森という14歳のカップルが、この“交通費問題”を解消すべく葛藤する様子が描かれています。親の転勤で名古屋から東京に引っ越すことを余儀なくされた藤森は、名古屋にいる仲葦に「いつでも会いに来られる」と言いますが、現実主義者の仲葦はその言葉を聞いてこう返します。

東京と名古屋なんて大した距離じゃないっていったよね。確かに新幹線なら約一時間半だよ。でも、新幹線なら片道、一万五八〇円もするんだよ。(中略)そんなお金、何処から調達するの?

そして、仲葦はいろいろとリサーチをした結果、青春18きっぷであれば5枚綴り1万円強であること、さらに金券ショップでは5枚をバラ売りしてくれていること──を知ったと告げます。藤森はそれを聞いても「俺が何とかする」と見栄を張りますが、仲葦は毅然と言うのです。

あのね、男として女のコにお金を出させるのはカッコ悪いっていう藤森君の気持ちは嬉しいし今まで甘えてきたよ。だけど、藤森君、毎回、二〇〇〇円用意出来る? 出来ないでしょ。藤森君がお金は自分が全て負担するって言い張って、その結果、共同で出せば二ヶ月に一度逢えるのに、四ヶ月に一度しか逢えないなんて嫌だよ

藤森はこの言葉の真剣さに胸を打たれ、結果的にふたりは共同でお金を出して東京と名古屋を行き来するルールを作ります。

見栄を張ったり面倒がったりしてうやむやなままにしていると、ふたりのうちどちらかに負荷がかかり、破局の原因にもなりかねない交通費問題。一度腹を割って交通費の負担について話し合うことは、ふたりの共通の課題を解決したという記憶になり、カップルの絆をさらに深めることにもつながるのです。

【秘訣3】“想像の中ではいつでも会いに行ける”という発想を持つ

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遠距離恋愛をしていて、わけもなく寂しくなったり悲しくなったりしたとき、パートナーにいますぐ会いたいと感じるのは自然なことです。しかし、思い立ったときに会うことができないのが遠距離恋愛の辛いところ。会えないがゆえの寂しさに耐えられず、破局を迎えてしまうカップルは少なくありません。

会いたいと思ったとき、パートナーに「会いたい!」とストレートに伝えるのも大切ですが、相手が忙しくしていて気持ちに余裕がないときには、その言葉が負担になってしまう可能性もあります。そんなときのために心に留めておきたいのが、“会えるイメージを膨らます”という方法です。

ショートカット
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4309408362/

柴崎友香による短編小説集『ショートカット』の中には、大好きな人に会いたいと強く願った瞬間に大阪から表参道までワープしたことがある、という不思議な体験を語る男・なかちゃんが登場します。

おれは、その人に会いたいと思った。心から会いたいと思った。それ以外の気持ちはなくて、ただその人をもう一度見たいって思ったんや。ほんで、チョコレートのパッケージを見たら、赤い色が目に飛び込んで、目が痛くなったから、おれはゆっくり目を閉じてん。それで、閉じたんと同じスピードでゆっくり目を開けてん。そしたらな、そこはもう表参道やったというわけや。

最初はそれを不審がって聞いていた“わたし”も、なかちゃんの迫真の語りに気持ちを突き動かされ、東京にいる好きな人に会いたい、と強く念じます。すると、“わたし”は本当にその直後、東京にワープしてしまうのです。

奇想天外なストーリーの本作ですが、(実際には)相手の住む街にすぐに行けなくても、いつでも相手のそばに行くことができるというやさしい想像をすることは誰にでもできます。前述したように「会いたい」という言葉は相手の負担になりえますが、「会いたいから、すぐ近くにいるって想像してるね」という言葉なら、嬉しく感じない相手はいないことでしょう。

おわりに

遠距離恋愛を成就させるためには、丁寧なコミュニケーションと相手への思いやりを欠かさないことが、近距離の恋愛以上に重要です。手紙を送り合う、交通費について話し合いの場を設ける──といったことは少し面倒ではありますが、自分が相手のために費やした時間の分だけ、相手への気持ちも大きくなるのは事実です。

今回ご紹介した万葉集の和歌と2冊の小説は、どれも遠距離恋愛をしている人なら共感を覚えること間違いなしの作品です。ひとりの夜に耐えきれなくなったとき、ぜひそのページをめくってみてください。

 
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