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大ヒット最新作! 『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』を深掘り解説

グリンデルバルドが脱走、クリーデンスを追ってパリへ――賢者の石のニコラス・フラメル、あのナギニも登場!

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2016年に第1作が大ヒットした、J.K.ローリングの新シリーズ『ファンタスティック・ビースト』。パリを舞台に、黒い魔法使いことゲラート・グリンデルバルドの台頭が描かれる第2作が大ヒット中です。今回もニフラー、ボウトラックルをはじめとする魔法動物たちが大活躍。懐かしのホグワーツ魔法魔術学校、ジュード・ロウ演じる若き日のダンブルドアなど、『ハリー・ポッター』ファンには嬉しい場面も!

予告編動画

幕開きはニューヨーク。前作でアメリカ魔法省(マクーザ)に捕らえられ、収監されていたグリンデルバルドがヨーロッパへ移送される途中で監視役の闇払いたちを殺害し、まんまと逃げおおせる大脱走劇から始まります。前作で死んだと思われていたクリーデンスも逃げのびていました。サーカス団に潜り込んでパリに渡り、生みの母を探し続けていたのです。彼の強大な能力を見込んで手駒にしようと狙うグリンデルバルドと、その魔手から救おうとするニュート・スキャマンダーと仲間たちもパリに向かうのでした。

賢者の石を生み出した伝説の錬金術師ニコラス・フラメルがまさかの登場!

ポッタリアンなら、ニコラス・フラメルの名は記憶にあることでしょう。第1巻『賢者の石』に、アルバス・ダンブルドアと錬金術の共同研究を行ったことがあると書かれていますね。賢者の石の作成に成功した唯一の人物としても載っており、今回の映画の中でも、パリにあるフラメル邸の戸棚にそれらしい赤い石がしまわれている場面がありました。
ところでこのフラメルは実在したとされる人物で、百科事典にも載っています。

Nicolas Flamel
1330ころ-1418
ポントアーズに生まれ,パリに没したフランスの錬金術師。偶然入手した《ユダヤ人アブラハムの書》を頼りに,二十数年の苦心の末,3度にわたって黄金造成に成功したと伝えられる。自伝的な著《象形寓意図の書》(1413)があるが,偽書説も強い。錬金薬の効力で不死の生を得たというほか,各種の伝説を後世に残した。その神話的性格が世人の注目をひき,現代の文学者ではA.ブルトンがとくに関心を寄せた。

『世界大百科事典』(平凡社)

映画の設定である1927年当時、フラメルは御年600歳ほどのはずですが、元気でしかも強い! さすが不老不死の魔術師といえましょう。
映画の中でニュートたちが立ち寄るフラメル邸は、「パリ最古の家」として今もあり、「オーベルジュ・ニコラ・フラメル」というレストランになっているそうです(「ニコラ」は「ニコラス」のフランス語読み)。

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ニコラ・フラメル錬金術師伝説
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いずれは大蛇に――呪われた血をもつ美女・ナギニの運命は!?

今回、最も驚かされた登場人物は、なんといってもナギニでしょう。この名前にも、ポッタリアンは憶えがあるはず。そう、ヴォルデモートが常にそば近くに置いている巨大な蛇、ホグワーツの戦いにおいてセブルス・スネイプを食い殺したあの大蛇です。
今作ではそのナギニが、人間の、美しい女性の姿で登場します。動物への変身を繰り返すうちに、いずれその動物の姿に固定される宿命を負った、マレディクタス(「呪われた血」の意味)の女性です。大蛇に変身する下等生物としてサーカスで見世物にされているナギニは、生みの親を探すクリーデンスと出会い、姉のように、あるいは恋人のように寄り添って彼を支える存在として描かれます。
そのナギニが、この先、いかなる数奇を経てヴォルデモートの忠実な僕となるのか? ヴォルデモートはなぜあれほどまでにこの大蛇を愛でたのか――? クリーデンスこそがのちのヴォルデモートであると考えると辻褄が合いそうですが、ヴォルデモートことトム・リドルは1926年12月31日生まれ。クリーデンスは『〈映画オリジナル脚本版〉ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』によれば1901年に誕生しており、残念ながら完全に別人なのです。
では、クリーデンスは何者なのでしょうか? 映画の中でグリンデルバルドが一つの答えを示しますが、口のうまい彼の言が真実とは限らず、まだまだ予断を許しません。

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『〈映画オリジナル脚本版〉ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
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映画の終盤で、ダンブルドアとグリンデルバルドにまつわる衝撃的な事実が明かされます。ふたりの関係については、これまでも『ハリー・ポッター』シリーズの登場人物リータ・スキーターがその著書『アルバス・ダンブルドアの真っ白な人生と真っ赤な嘘』で

死傷者や行方不明者が続出した大混乱の五年ほどの間、ダンブルドアが、ゲラート・グリンデルバルドへの攻撃を先延ばしにしていたことは疑いがない。ダンブルドアを躊躇させていたのは、グリンデルバルドに対する友情の名残だったのか、それとも、かつては親友だったことが明るみに出るのを恐れたからだったのか?

『ハリー・ポッターと死の秘宝』

と疑問を呈していました。今作中でも魔法省からの「グリンデルバルドと戦ってほしい」という要請に、ダンブルドアはただ一言「できない」と答えるのみ。理由を明かそうとはしません。
その訳を教えてくれるのは、なんとニフラー。彼らお馴染みの魔法動物たちに加えて、今回は河童、すう(ズーウー)など東洋の魔法動物も登場してニュートたちを危機から救い、問題解決のヒントをくれるのです。純血の魔法使いばかりを重んじ、それ以外のすべてを軽視するグリンデルバルドには持ち得ないこの力こそが、ニュートの強みといえるでしょう。

グリンデルバルドの「罪――Crimes」とは何を意味するのか?

邦題は『黒い魔法使いの誕生』ですが、原題は『The Crimes of Grindelwald』(グリンデルバルドの罪)。今回、彼が犯した罪は脱獄と殺人。そしてそれらと同じくらい重いのが、大衆の扇動です。信奉者を集め、扇動し、おのれの手を汚さずして目的――純血族による支配を遂げようとするのです。もしも味方につけるためにクリーデンスの出自を偽っているのであれば、それもまた大罪といえましょう。
1927年といえば、私たち人間の世界は大恐慌前の未曾有の好景気に沸いていましたが、その一方、すでにドイツでナチスの台頭が始まってもいました。純血主義を唱え、ノー・マジ(マグル)支配を目論むグリンデルバルドの優生思想はナチスのドイツ民族至上主義に通じ、ジョニー・デップが演じるグリンデルバルドの巧みな弁舌にもまた、ヒトラーやゲッペルスを思わせるものがあります。
このような魔法界とマグル界の歴史の類似について、2005年にファンサイト、リーキー・コールドロンとマグルネットに掲載されたインタビューで、ローリングはこのように語っています。

(イギリスのテレビで取材を受けた際に)「グリンデルバルドが1945年に死ぬのは偶然ですか?」と聞かれて、「いいえ」と答えました。マグル界での出来事に間接的に触れるのはおもしろいですね。

このインタビューが行われた時点で『ハリー・ポッター』シリーズは第6巻『謎のプリンス』まで出ていました(邦訳は2006年刊)が、グリンデルバルドに関する記述は第1巻『賢者の石』で蛙チョコレートの「アルバス・ダンブルドア」カードに記された「一九四五年、闇の魔法使い、グリンデルバルドを破った」のみ。そのため、「グリンデルバルドはダンブルドアに敗れて死んだ」と受け取られ、このようなやりとりになったのでしょう。実際にはグリンデルバルドはこの敗北によってヌルメンガード城に監禁され、のちにヴォルデモートに殺されます。

この先、魔法界とマグル界はどちらも真っ二つに割れて全面戦争へと突入していきます。グリンデルバルドが敗れることはすでに歴史が示していますが、クリーデンスはどうなるのでしょうか? ナギニの運命は? そしてニュートとティナ、ジェイコブとクイニーの恋の行方は? 興味はつきません。
『ファンタスティック・ビースト』シリーズは全5作と発表されています。毎回違う都市が舞台になるとのことで、次回はドイツの都市では?とも囁かれています。それを裏付けるとされるのが、2016年10月14日のローリング本人による、このツイート。

ファンからの「お願い、はっきりさせて。全部で何作なの?」というツイートに答えたもので、数字の「5」と、それを表す5つの言語の単語が並んでいます。Fiveは英語、Cinqはフランス語、Fünfはドイツ語、Cincoはスペイン語およびポルトガル語、Cinqueはイタリア語。第1作の舞台はニューヨーク(英語)、第2作はパリ(フランス語)と、ここまでツイート通りなのです。ということは、次はドイツ、第4作はスペイン、第5作はイタリアが舞台となるのでは――!? ただし、ドイツといっても、ヌルメンガード城のあるオーストリアや、スイス、リヒテンシュタイン、ルクセンブルクを含むドイツ語圏の可能性もあり、第4作も同様です。また、次作の舞台がナチスの台頭が進むドイツであるならば、「ゴールドスタイン」というユダヤ系の姓をもつティナとクイニーの身の上も気になりますね。
謎とワクワクがいっぱいの『ファンタスティック・ビースト』シリーズ。ますます目が離せません!

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