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ジャルジャル・福徳秀介小説デビュー作『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』でさらけ出した裸の心

11月11日に、ジャルジャル・福徳秀介の小説デビュー作が発売に。切なさが胸に迫る、恋愛と、友情、そして生きることに向き合ったストーリーに、心を掴まれること必至です。執筆の苦労や創作裏話、そして恋愛についても語っていただきました。

4年の歳月をかけて書き上げた力作

――キングオブコント2020で優勝するなど、芸人活動が大変忙しい中で、いつ頃から長編の作品を書きたい、という想いはあったのでしょうか?

福徳:ある人から、「書いてみたら?」とポンといわれて。それで個人的に3か月くらいかけて書いてみたんです、自分で直してみたりしながら。そうやって改稿していって気ぃついたら2年くらい経っていて。その後ご縁があって、出版社(小学館)とつながって。そこからまたもう2年かかって、結果4年かかって……、という感じです。

――苦労した点が多かったのでしょうか。

福徳:そうですね、自分が書きたいものをばーっと書いていっていたんですが、編集の方を交えて2年間、何回も何十回もやりとりした中で、ある時、半分の6万字を没収されて。その時は一瞬、「2年半かけて書いたん半分も削除された!」と。とても丁寧に控えめにですけど「これ削除しませんか。そのほうが絶対いい小説になると思います」と言われて。そこで半分になってしまって。「やっべ」、と思ったんですけど、結局それで自分の中でエンジンがかかって、盛り返せましたね。

――書きたい思いが溢れていると感じました、読み手を感動させようという意図的なものではなく、ご自身の本気が詰まっているのでは、と感じたんですが。

福徳:自分の経験とか体験を元に、そのまま書くのではなく、自分が体験したからこそわかることを「この登場人物ならこんな状況だったらこうだろう」と、自分の体験を憑依させたみたいな感じで書きました。部分部分によってはぶわーっと書けるところもありましたね。その時は、書きたい気持ちが強かったです。

――伝わってきました。私小説的な一面もありますが、ご自身の体験もあるのでしょうか。

福徳:実際に通っていた関西大学が舞台なので、そういう意味では私小説的ですが、中身はまるまるこんなことはなく、ゼロから考えさしてもろたんですけど。

――(福徳さんが書いたという)先入観を持たずに、素で感動しました。すべてをさらけ出したとのことですが、「表現したかったもの」とはなんですか?

福徳:最初書き始めたときは、ゴリゴリの恋愛小説で、恋愛ってすごいんだぞ、というのを書きたかったんですが、蓋を開けたらそんなことはなく。何が書きたかったのかと言われたら正直自分でもわからないくらい。ただただ、「みんな頑張っていきましょうね」、みたいなメッセージですね、最終的には。

恋愛小説が大好き

――勝手なイメージながら恋愛小説を書かれたのは意外でした。

福徳:僕、基本恋愛小説しか読まないです。ジブリの作品では「耳をすませば」が一番好きなんです。
好きな作家も、言い出せばきりがないくらい、恋愛小説が好きで。やっぱり、恋愛って十人十色。みんないろんな恋愛してて。僕の根本にあるのが、例えば上の怖い人とか、先輩の怖い人とかを見ても、誰かが会社で上司に怒られてるのとか見ても、そんな怒ってる上司ですら、実は燃えるような恋したことあるねんぞ、と思うと、どんだけ怒ってる人にでもクスっと笑えちゃうというか。満員電車とか乗ってても、全員がみんな胸がポッとしたことあるんや、と思うと、笑けてくるので。そういう意味でも、恋愛というのが好きですね。

――言葉のひとつひとつが福徳さんの現在を作っているのかなと思う部分がありますが。

福徳:全部ゼロから考えました。僕が実際に言われた言葉ではなく、この場面で必要な言葉はどんな言葉かというのを考えて書いたので、結果、自分が書いた言葉に自分が励まされることもありましたね。

――どんな風に浮かんできた言葉なのでしょうか。

福徳:書いていて、今この登場人物を救う言葉はなんだろう。と考えて。例えば、「嫌いな人が困っていたら、ざまあみろと思うな、嫌いな人を助けてあげて、私に助けてもらってざまあみろって思え」という言葉。あれは振り絞りました。

煮詰まってみてこそ書けた作品

――さらけ出すという部分においては、お笑いの仕事と小説を書く時で通じるものはあるのでしょうか。

福徳:
全然違いましたね、脳の使い方が。コント作りはジャルジャル2人でネタを書くけど、本を書くのは1人で、まったく1人の世界なので。
例えばバラエティ番組などだと、色んな出演者がいて、色んな人の笑いがあって、空気も読まなあかん、自分の世界だけじゃ通用しない世界なので。コントづくりは2人の世界=ジャルジャルの世界なので、ある意味なんでもあり。それぞれが相方に気を遣って作っていくんです。でも本については完全に1人なので、ほんまのほんまのなんでもありやな、という感じがしました。これはほんまに。

――書いていて煮詰まったときはどうしましたか。

福徳:そうですね、煮詰まったことが何度かあって。煮詰まりすぎて、「煮詰まる」って言葉ってほんまは悪い言葉じゃなかったら嬉しいな、と思ってしまって。「煮詰まる」っていう単語を調べたんですよ。そしたら実はいい言葉やって。やっぱいい言葉や、ってわかって、煮詰まった時にテンションあがって。そこからまたぶわーって書いたりとか。

――スピード感、リアリティ、胸に迫るものがありました。

福徳:改稿する度に最初から読み直すんですけど、何度も読んでいて、ほんまスロースタートやな、といつも思う。前半部分は「早く後半きてくれ」と思いながら読みます。後半は早いですね。

――後半、まさかの展開でしたが……。

福徳:プロットみたいなものを書いた方がいいと言われたりもしましたが、それがあまり性に合わず。自分なりに書き進めたので、最初は矛盾点が山ほどありましたね。

――恋愛もそうですが友情も柱としてあるのかなと思いましたが。

福徳:僕の場合、友情はなぜか、いつもどの場面でもだいたい1人なんですよね、相手が。仲良くなるのが1人。いつも。小学校のときも、クラスで1人、塾で1人、とか。必ず1人誰か見つかる。2人はおらん。だいたいひとりなんです。
その分関係性が密になる、という言葉で逃げるような「1人」なんですけど。本当はもっとたくさんの友達が欲しいけど、俺は1人で十分や、そのほうが濃くなれるから、という逃げ道の1人ではあるんですけどね。

執筆のスタイルについて

――執筆する時の頭の切り替えは大変ですか?

福徳:全然、そんなことはないです。シンプルな脳みそなので。言葉が湧いては来ないですけど、考えるモードになれば大丈夫です。

――いつ書く、とか決めていますか。

福徳:朝と仕事の合間と夜に書きます。1回パソコンで書くことに挑んだんですけど、なかなか慣れないので、基本スマホ、タブレットで書くようにしてます。僕自身、高校の時に初めて携帯持って。恋愛するときってメールやないですか。メールで色々な言葉を送ってきたんで、「やっぱスマホでいくか」思って。場所がないときはスマホ、喫茶店ではタブレットです。

――(担当編集)大変でしたよね、途中まで。
福徳:
大変でした……!

――(担当編集)だんだん福徳さんが、書いていくうちに進化していったんです。なぜ6万字削除したのかというと、当初はラブコメ要素が強かったんです。でもきっと、人の心をうつ小説はそっちではなくて。福徳さんが「本当に本気で書きたい」って思っているものと違うんじゃないかなと感じたんですよね。何回も話したり、打ち合わせや改稿を重ねていくうちに福徳さんの心が叫んでいるものにたどり着きました。

――6万字削除された時はどうでしたか?

福徳:「わかりましたわかりました!」と軽く言ったけど、そのあと喫茶店で頭抱えて。2日間1文字も進まず。最初やっべえ、と思って。何も思い浮かばず、3日目のときにちょっと書いてみたら、一気に書けたんです。

――(担当編集)凄いと思いました。ドラマや、うねりが必要ですと言ったら、すごくいいものになったんです。改稿をお願いする度に、死ぬ気で頑張ってくれて、物凄いパワーを感じましたね。

福徳:そうそう、うねりや。思い出しました。そして、ちょいちょいおいしい和食連れてってくれるんですよ。和食屋のカウンターで、和食の話せず、原稿の話するんですよ。板前さんにもどうしようかなとか思うんですよ、きれーに盛り付けた和食を端っこの方に置いて、「え、食べへんの、冷めてしまうやろ」と思いながら。仕事人間すぎるやろと(笑)。ほんまに。

――芸人さんで本を出されている方もいますが参考にしたりしましたか。

福徳:結構読んでますね。スタイルとかは、参考にしました。書くのに4年かかったんで、何十回も書き直したわけなんですけど、「千本ノックだと思っといてくださいね」、と言われたんです。にっこりしながら。怖かったー。過去に本を出した芸人さんに、何回書き直したか聞いたんですけど、だいたい1回2回、誤字を直されるくらいやで、と。えーっと思ったけど……、結果良かったです。

――今後書きたいものはありますか。

福徳:書きたいテーマはあります。それを形にできるかはわからないですけど。

<了>

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<プロフィール>

福徳秀介(ふくとくしゅうすけ)
1983年生まれ、兵庫県出身。関西大学文学部卒。同じ高校のラグビー部だった後藤淳平と2003年にお笑いコンビ「ジャルジャル」を結成。TV・ラジオ・舞台・YouTube等で活躍。キングオブコント2020優勝、第13代目キングに。福徳単独の活動として絵本『まくらのまーくん』は第14回タリーズピクチャーブックアワード大賞を受賞。絵本『なかよしっぱな』(2019)刊行。本作品『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』が、小説デビュー作となる。

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