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あなたはどっち派? 対照的なヒロイン2人が織りなす女友達小説5選

対照的なタイプの女性2人が登場し、それぞれの成長を対比して描いた小説は多いものです。あなたはどちらのヒロインに共感できるでしょうか? 正反対のヒロイン2人が主役の小説5選を紹介します。

 

柚木麻子『ナイルパーチの女子会』 ~優等生な女VSヤンキーな女~

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〜プロフィール〜

志村栄利子(30)大手商社勤務。年収1千万円。美貌・学歴・キャリア・育ちの良さと、女が欲しいものを全て兼ね備えている。
丸尾翔子(30)子無し専業主婦。好物はジャンクフード。特技は手抜き家事。ブログ「おひょうのダメ奥さん日記」が人気を博す。

 

 栄利子の最近の日課。それは、あるブログをチェックすることです。

『おひょうのダメ奥さん日記』は、毎日のように読み続けているブログだ。主婦主婦してなくて、絶妙に力が抜けている。等身大で無理していないところが、好きだ。『コンビニの「かりんとうメロンパン」。こういう「アホ食」で昼食を済ませてしまうと、色々楽ですよ。人生なめてる感じにやすらぎます』――人生なめてる、いい言葉だな、と思う。栄利子にとって人生とはずっと真剣に向き合い、取っ組み合うものだったから。

 ずっと優等生として肩肘張って生きてきた栄利子は、「おひょう」の肩の力の抜けた、飄々としたライフスタイルに興味を持った模様です。ところで、栄利子の唯一のコンプレックスは、なぜか同性の友人ができないこと。翔子とお近づきになりたいと切望します。ある日、ひょんなことがきっかけで2人は知り合うことになりました。
 翔子の栄利子への第一印象は、

志村さんって、大企業にお勤めしていて美人じゃん。なんでも持ってるせいかな、ちょっと違うステージに居るっていうか、天然入ってるもんね。すごく楽だな。なんか癒されるよ

 意外にも、2人の相性は上手くいきそうなのですが、栄利子の同僚男性は、警鐘を鳴らします。

バックグラウンドや育った環境が違い過ぎる。お嬢さま育ちで仕事に真摯なお前と、父子家庭でフリーター暮らしから主婦になった彼女。文化の違いが生む悲劇だよ

 果たして、栄利子と翔子のあいだに「女子会」は成立するのでしょうか。続きは本作で確かめてください。

 

唯川恵『肩越しの恋人』~辛口な女VS甘口な女

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〜プロフィール〜

早坂萌(27)輸入代行会社の独身OL。堅実な努力家で、英検1級を取得。サバサバした性格で、言いたいことははっきり言う辛口な女
室野るり子(27)3回目の結婚をしたばかりの新妻。興味があるのはブランド品と男と美容と芸能界の話だけ。恋多きスイーツ女子

 萌とるり子は幼稚園からの幼馴染。タイプが全く違うので、ケンカはしょっちゅうですが、なぜか互いのことが気になって仕方ない、いわゆる腐れ縁の仲
萌はるり子のことを内心こう思っています。

男どもはいったいるり子のどこを見ているのだろう。優しくて、可愛くて、女らしいという皮を一枚めくれば、気紛れで、自惚れ屋で、浅はかでしかない。だいたいるり子は誰よりも自分のことが大好きな女だ。自分が大好きな女ほど、始末に悪いものはない。

 男性にウケのいい女性が、必ずしも女性からも支持されるとは限りません。るり子は、典型的な「女が嫌いな女」です。実際、るり子は異性からはチヤホヤされますが、萌のほかに同性の親友は1人いないようです。けれど、るり子はそんなことは全く気にしていない様子です。一方のるり子は、萌に対してこう思っています。

小さい時から「我慢しなさい」と言われることが苦手だった。母親は「萌ちゃんを見習いなさい」と、るり子を戒めた。けれど、我慢している女はみんな貧乏臭い顔をしている。本当は、わがままを通す方が、我慢するよりずっと難しい。我慢の方を選ぶのは、楽して相手に好かれようと思っているからだ。るり子は常々心に誓っている。どんなに落ちぶれても、我慢強い女にだけはならないでおこうと。

 るり子の言い分は自分勝手ではありますが、ある意味、全ての女性の本音を代弁しているとも言えそうです。萌が、るり子と付き合い続けるのも、おそらく、るり子の臆面のない率直さに惹かれるからでしょう。
 ある日、萌はバイトで会社に派遣されてきた高校生の崇と、突発事故的に一夜を共にし、妊娠してしまいます。崇には打ち明けず、自分ひとりでお腹の子を産み育てようとする萌に、るり子は、ある思いがけない提案をするのでした。
「女の敵は女だ」、「女同士に本当の友情はない」という世間の定説をあっけなく覆し、本当に味方になれるのは女友達だということを教えてくれる、第126回直木賞受賞作です。

 

江國香織『ホリーガーデン』~冷めた女VS熱い女

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〜プロフィール〜

野島果歩(29)眼鏡店店員。かつて手痛い失恋をしてから、職業や付き合う男をフラフラ変えて気ままに暮らしている。「セフレは作っても恋に現は抜かさない」が信条。
甲田静枝(29)高校の美術教師。元は正義感が強い優等生だったが、目下、画廊のオーナーと不倫中。「不倫の恋でも恋は恋」が信条。過去の元カレとは今では全員良き友達。

 果歩と静枝は女子校時代からの気の置けない親友です。食事を共にしたり電話をかけあったりと、その仲は大人になっても続いていますが、お互い、相手の恋愛の仕方を、内心ではイタいと思っています。ある日、ケンカのはずみでそのことが露見して……。

いい加減にしなさい。いつまで津久井さんにこだわってるの。好きでもない男をつぎつぎにまきこんで、復讐みたいに寝るのはやめなさい。ずっと言おうと思ってたのよ。男の人とのつきあい方を、ちょっと考えた方がいいと思うわ

 静枝から果歩への忠告です。津久井に手ひどく振られて以来5年間、恋愛を信じなくなった果歩。無節操にセフレは何人でも作っても、本気で付き合う恋人は持たない冷めた女になっています。そのことが静枝は親友として心配でたまりません。
 対する果歩の言い分は、

とんちんかんなお説教はやめて。そりゃあ静枝はまっすぐよね。芹沢さん以外の男性には、どんなに誘惑されてもびくともしないんでしょ、きっと。無理矢理気持ちを一直線にして奮い立たせて。でも、精神的(﹅﹅﹅)()お友だち(﹅﹅﹅﹅)があんなにいるなんて、すごおく淫らだと思う。それにくらべたら、寝ることなんて全然なんでもないと思う。結局、『精神的』っていうのがいちばんいやらしいわ

 静枝が自分の気持ちをだましながら芹沢との不倫の恋に猪突猛進する、その様が果歩には痛々しく見えるのです。また、元カレと今ではプラトニックないい友達になれるという感覚も、果歩には全く受け付けない。それなら、肉体関係も含んだ友情の方が、即物的な分、かえって清潔だというのが果歩の考えです。
親しき仲にも礼儀あり、と言いますが、他人の恋愛に土足で踏み込んでしまった2人は、仲を修復することが出来るのでしょうか。

 

角田光代『対岸の彼女』~専業主婦VS働く女~

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〜プロフィール〜

田村小夜子(35)3歳の娘を持つ専業主婦。内向的で几帳面な性格。ママ友の閉塞的な世界に疲れ、働きに出たいと考えているが、そのことを夫と姑に反対されている。
楢橋(ならはし)葵(35)社員数人の旅行代理店兼掃除代行会社の女社長。一見、飾り気がなくカラッと明るい性格で、社員にもフレンドリーに接しているが、実は暗い過去を抱えている。

 専業主婦の小夜子は、店で一枚のブラウスに一目ぼれ。値札を確認すると15800円でした。それを買うことに躊躇する自分がみじめで、働くことを決意します。パートの面接に行った小夜子は、社長・楢橋葵が自分と同い年で同じ大学を卒業していたことを知ります。女社長のイメージからはほど遠いくらい気さくな葵に、親しみを覚える小夜子。一方の葵も、清掃業には主婦経験のある小夜子が適任と、採用を即決します。
 葵は、主婦業パート子育てをすべて完璧にこなす小夜子を、「自分とは同い年の人と思えない」と、賞賛しますが、小夜子は、所詮、誰にでもできることをやっているだけの自分に対し、葵が気を遣って褒めてくれただけと、いじけてしまいます。
 ある日、葵は、小夜子を突然の日帰り温泉旅行に誘います。そのまま泊まって帰ろうかと行き当たりばったりの提案する葵に対し、小夜子は、

この人は、自分と違う立場の人間がいるってことを本当に分からないんだな。みんな違う、違うから出会いに意味があると、大上段に構えて言っていたくせに。家庭の主婦が、連絡も入れず外泊することがどんな意味を持つのか、ちらりとでも考えることができないんだろうか

 と苦々しく思うのです。

「楢橋さんも家庭を持てばわかると思うけど、やっぱり前もって決めておかないといろいろ面倒なことになっちゃうのよね」
「そうだね。気安く誘って悪かったわ。私は待っている人もいない気軽な身だから」

 今度は、葵がいじける番です。
 そんな折、小夜子は、他の社員から、葵は同性愛者で、女子高時代、友人と家出の挙句、ビルからその子と手をつないで飛び降りて自殺未遂し、新聞沙汰になったという噂を耳に入れ、葵への思いを複雑にしていくのでした。
「対岸の火事」と言う通り、「対岸の彼女」のことは所詮他人事で、本当に理解しあうことはできないのでしょうか? 第132回直木賞受賞作です。

 

酒井順子『平安ガールフレンズ』~ジットリ紫式部VSパリピな清少納言~

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〜プロフィール〜

紫式部 『源氏物語』の著者。一条天皇の后・中宮彰子に仕えた、奥ゆかしい女性。
清少納言 『枕草子』の著者。一条天皇の后・中宮定子に仕えた、才気煥発な女性。

 元祖・女のライバルといえば、この2人。紫式部は上品で控えめに見えて、実はじっとりと嫉妬深い性格です。彼女は、清少納言ほどいけ好かない女はいないと、目の敵にしているのですが、それを面と向かって本人に言うことが出来ず、悪口をネチネチと『紫式部日記』に書いては憂さ晴らしをしていました。対する清少納言は、カラッと明るく、「紫式部ってどちら様ですか?」といった態度で、彼女のことなど歯牙にもかけていない様子。女の勝負の行方を、当代の清少納言ともいうべきエッセイスト・酒井順子がユーモラスに描きます。

『枕草子』は、清少納言のリア充アピールの舞台でした。自身の知性やウィット、モテっぷりを披露し、「いいね!」と言ってもらうことに無上の快感を見出していました。そんな清少納言をイライラしながら見ていたのが紫式部です。彼女が何にむかついているのかといったら、清少納言の“含羞の無さ”なのです。

「含羞」とは、こんなことをしたり言ったりしたら相手に対して恥ずかしいという、日本人らしい繊細な感情のことですが、清少納言にはそれがまったく欠けていた模様です。

男性の前で、「これも知ってる!あれも書ける!」と自らの教養を振りまいていた清少納言と、「清少納言なんかより私の方が……」と内心はフツフツ思いながら、人前では漢字の「一」すら書けないフリをしていた紫式部。友人としてどちらが付き合いやすいかは、意見が分かれるところでしょう。無邪気な自慢しい・清少納言に対しては、「恥を知れ」と切り捨てる人もいれば、「ちょっとウザいけど、裏表はないし、面白い」と思う人もいる。対して、並みの男性など適わない知性を持ちながら、「一って、何ですか……?」という紫式部は、男性の面子を潰さないが、同性から見るとちょっと怖くもあります。テストの直前、「全然勉強してないの」と言いながら、良い点をとる子がいたものですが、紫式部もそのタイプだったのでは。

 人前では漢字の「一」も書けないブリッ子キャラで通しておいて、密かに『源氏物語』のように複雑に入り組んだラブロマンスを書き上げた紫式部。清少納言がそれを知ったら、「なに、カマトトぶってるのよ?!」と叫んだことでしょう。それにひきかえ、清少納言は作為がない分、憎めない気もします。
さて、あなたは、清少納言と紫式部、どちらと友だちになりたいでしょうか?

 

おわりに

 あわせて10人の女性に登場してもらいましたが、あなたにそっくりなヒロインは見つかったでしょうか。一見、正反対に見える2人のヒロインも、もしかしたら、その両方があなたのなかに同居しているのかもしれません。

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