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猫好き必見! ヒグチユウコのおすすめ作品5選

画家・絵本作家でありながら、ファッションブランドや画材メーカーなどとのコラボで広く知られ、多くの人気を博している、ヒグチユウコ。活動は2014年の『ふたりのねこ』に始まり、その後4年間で7作もの絵本を、画集なども含めると10冊を超える作品を出版しています。今回はその中でも特におすすめの5作品をご紹介します。

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『せかいいちのねこ』

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絵本作家としてのヒグチユウコの作品で、最も有名なのがこの『せかいいちのねこ』です。主人公のねこ、ニャンコは実は本物のねこではなくぬいぐるみ。持ち主の男の子から愛された、“きっと世界一幸せなぬいぐるみ”なのですが、7歳になりどんどん成長していく男の子に対し、「自分がいつか飽きられてしまうのかもしれない」ということを心配しています。本物のねこになれば大人になっても可愛がってくれると思ったニャンコは、世界一愛されるねこになるために本物のねこを目指すのですが……。

ニャンコは本物のねこになるために、友達のアノマロとともに外の世界に出て、そこで様々なねこたちと出会います。自分に自信がないねこ、頼れる本屋のねこ、犬とともに旅を続けるねこ、意地悪なねこ……。はたして世界一のねことはどんな猫なのか。冒険の中でニャンコはせかいいちのねこになれるのか、数々に出会いの中で成長していくニャンコの姿に心揺さぶられる絵本です。
 

『すきになったら』

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すきになったら しりたくなる あなたがすきなものを
すきになったり あなたにとってだいじなものを りかいしたくなる
(出典 ヒグチユウコ『すきになったら』,ブロンズ新社)

「すき」って、なんでしょうか。相手のことをわかりたいこと、相手のことを知りたいこと。そしてふたりでいたいこと。この絵本に登場するのは、ワニと少女のふたりだけです。モノクロームの線画で描かれたワニと、赤いスカートに赤い靴、快活そうなショートな髪が印象的な少女。ワニは決してデフォルメされた可愛らしいものではなく、ゴツゴツとしたリアルな背中であったりと、絵本然とした少女の姿とはかけ離れています。しかし、だからこそ、その異質な組み合わせによって、一見ロマンチックな文章がより魅力的に映ります。相手が本を読んでいるそばで一緒の本を読んだり、寄り添ったり、見つめたり、見つめられたり。テーマとは裏腹に、ラブロマンスのような情景は一切なく、ただただふたりで傍にいる、ということの幸せが描かれています。

一緒にいることでともに笑い、ともに泣き……。顔、声、性格などが必ず取りざたされる恋愛において、この、少女とワニという異質な組み合わせによって、それらを排した愛という形そのものについて語っているようにも感じられます。「すき」という気持ちを知ったことがある全ての人に贈りたい1冊です。
 

『ほんやのねこ』

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このお話はあるほんやのなぞめいた女主人についてです。
(出典:ヒグチユウコ『ほんやのねこ』,白泉社)

ねこの女主人が切り盛りする小さな書店には毎日ふしぎなお客が訪れます。歌のような言葉で話すいきものであったり、ギュスターヴくんという不思議な姿をしたもの、オカヒトデとツチグリ、そして常連のぬいぐるみのニャンコ。女主人はどのお客に対しても、ぴったりな本を選び、手渡します。そうしてお客を喜ばせたり、時には客同士の喧嘩を解決してあげたりと、そんな本屋のねこの日常が描かれた絵本です。

この本は『せかいいちのねこ』、『いらないねこ』から続くシリーズ第3弾で、主人公の本屋の主人は、前作『いらないねこ』で、ぬいぐるみのニャンコを助けたねこ。前作・前々作で登場したニャンコをはじめ、様々なねこたちが再登場するのも魅力です。この絵本だけでももちろん楽しめますが、他の作品も知っていることでキャラクターたちの様々な成長を見ることができるでしょう。また、各話に女主人がお客さんのために選んであげた本の紹介が、巻末には本屋の見取り図がついていたりと、見ているだけでワクワクしてくる小ネタもたくさん含まれています。本屋で繋がる彼らの日常をぜひ覗いてみませんか?
 

『ギュスターヴくん』

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きみはネコなの? ヘビなの? タコなの?
(ヒグチユウコ『ギュスターヴくん』,白泉社)

ネコの頭にタコの足、腕はヘビ。奇怪な形をしたネコ(?)ギュスターヴくんが、次から次へと不思議ないきものを生み出していきます。様々な絵本からいきものを引っ張り出し、自由気まま。ギュスターヴくんとその不思議ないきものたちによる、カオスな世界が広がります。生み出される不思議ないきものは足の生えた本や翼を持ったバラなど奇妙なものばかり。ギュスターヴくんに振り回されるワニくんは自分のズボンとブーツも変身させられてしまい、辟易します。絵は細部まで描かれたヒグチユウコの鉛筆画スタイル。そのリアルな筆致にもかかわらず、不思議なことが当然のことのように進んでいくという違和感が独特の面白さを生んでいます。まさにヒグチユウコによって描かれる摩訶不思議な世界に吸い込まれるようです。

巻末には今井昌代さんによるフェルト、ギュスターヴくんや作中に登場した不思議ないきものを再現したぬいぐるみが多数登場する絵本も収録。ヒグチユウコの絵とはまた一味違った可愛らしさに思わず見とれてしまいます。「ヒグチユウコらしさ」が詰まった、絵のその先の想像の世界を広げてくれる1冊です。
 

『猫のエルは』

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www.amazon.co.jp/dp/4065129680

作家でミュージシャンでもある町田康の小説に、ヒグチユウコが挿絵をつけた作品。ねこをモチーフにそれぞれ5編の短編で綴られます。収録されているうちの4つは小説。1つめのテーマは、ねこは言葉がわかるのか。ヒトが滅んだ世界で、自由に暴虐の限りを尽くすねこと、それに振り回されるいきものたちの姿を描いた『諧和会議』。そして2つめ、『ねことねずみのともぐらし』。冬を越えるため、ねことねずみの2人で買った油を、猫が全部舐めてしまいました。途方にくれた2人は道行くいきものに恵みを求めます。3つめは、猫の世界に迷い込んだ私の冒険譚、『ココア』。そして4つめの小説が、死後の意識のなかで「元の姿で元の家にもう一度生まれたい」と願った私の、家族を探す旅『とりあえずこのままいこう』です。

そして残る1編は表題作である詩『猫のエルは』。

私の家には猫はいない
猫はいないがエルがいる
エルは猫である
猫ではあるがそれ以前にエルである
(町田康・ヒグチユウコ『猫のエルは』,講談社)

ヒグチユウコは、ねこをモチーフにした作品を多数出しているねこ好きで知られますが、町田康も数多くのねこと暮らす大のねこ好き。そのふたりがタッグを組みました。猫をこよなく愛するふたりだからこそできた本です。

おわりに

ここまでヒグチユウコのオススメ5作品を紹介しました。その優しい世界観とタッチは、自分で楽しむのはもちろんですが、プレゼントとしても最適です。ぜひ、絵そして文章から溢れるねこへの愛情を感じながら、自分なりの味わい方で楽しんでみてください。

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