本との偶然の出会いをWEB上でも

ネットを通じた男女が出会う方法を、文学作品から学ぶ【文学恋愛講座 #13】

インターネットを通したメッセージのやりとりは、現代において、立派な恋愛のきっかけのひとつです。今回の文学恋愛講座では、そんな“インターネット上の出会い”を恋愛に発展させるためのポイントを、4つの文学作品を通じて解説します!

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交際や結婚のきっかけが、SNSやマッチングアプリ上でのメッセージのやりとりだった──というカップルは、いまや珍しくありません。インターネットを通した文字だけのやりとりは、現代において、立派な恋愛のきっかけのひとつです。

今回の文学恋愛講座では、そんな“ネットを通じた出会い”から素敵な恋愛をスタートさせるために必要なポイントを、4つの文学作品をヒントに解説します。いまSNS上に気になる相手がいる方や、マッチングアプリでのメッセージの送り方に悩んでいるという方は、ぜひ参考になさってください!

【ケース1】初めて送るメッセージはどんなものがいい? ──『レインツリーの国』

レインツリーの国
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4101276315/

SNS上やインターネットの掲示板上、あるいはマッチングアプリ上などで、気になる相手やもっと仲良くなりたい相手を見つけたとき、最初に送るメッセージはどんなものがいいか、悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。自分のプロフィールやキャラクターをどの程度出すべきか、なかなかわからないという方も少なくないかもしれません。

有川浩の長編小説『レインツリーの国』では、ネットでのやりとりを通じて出会い、互いに惹かれ合ってゆく、伸行とひとみという男女の恋愛が描かれます。
伸行は、ひとみがWeb上に載せていた『フェアリーゲーム』というライトノベルの感想文に共感したことがきっかけで彼女にメッセージを送りますが、彼が最初に打ち込んだのは、こんな内容でした。

ひとみさんへ
はじめまして。昔好きだった『フェアリーゲーム』の感想を探していて、『レインツリーの国』にたどり着きました。(中略)
僕もあのラストで『突き放された感』を味わいましたが、それはひとみさんのように「好きだという気持ちを拒否された」感じじゃなくて、「ままならなさ」を初めて突きつけられたからだったと思います。
めっちゃショックやったけど、そのとき同時に「ああ、世界は自分の思い通りにはならんのやなぁ」と思ったんです(すみません、出身が関西なんでシャベリは関西弁のほうが楽なんです。読みにくかったらごめんなさい)。

ひとみさんの感想は、僕にはすごく面白かったです。僕はあの頃、周囲にこの本を読んでいる友達がいなかったので、ずっと誰かとあのラストのことを話したかったのです。一方的に話してしまったけど、ありがとうございました。

ひとみの文章への感謝と感想を踏まえた上で、最初から関西弁を全開にする伸行。このメッセージに対するひとみからの返信は、こんな内容でした。

メールありがとうございました。(中略)伸さんのご感想は私からも大変興味深く、また嬉しかったです。

「関西弁」とか、私は全然気にしませんよ。むしろ、あれが出てきた辺りから伸さんのテンションが上がってるのが分かって面白かったです。

伸行からのメッセージの内容を読んだら、おそらく多くの方がひとみと同じ感想を抱くのではないでしょうか? つまり、メッセージはきちんと礼儀を踏まえてさえいれば、その人の個性が伝わる方言などはむしろ喜ばれる、ということ。
最初はとにかく丁寧に、当たり障りのないメッセージを送ろうと思ってしまう方もいるかもしれませんが、言葉遣いは個性そのものです。あまりかしこまりすぎず、自分らしい普段の言葉でメッセージを送るのがよいでしょう。

【ケース2】ネットでついてしまった「嘘」をどうカバーするか? ──『REVERSE』

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出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4087450686/

年齢や容姿についてなど、自分が言いたくないことは必要以上に明かさなくてもよいというのがインターネット上のやりとりのメリット。しかしその分、“嘘”をつきやすいという側面も見逃すことはできません。
では、仮に、ネット上でやりとりをしている相手に出来心で“嘘”をついてしまったとき、それをどうカバーすればよいのでしょうか?

ひとつのヒントになりそうなのが、石田衣良の長編小説『REVERSE』。本書は、ネットで出会った千晶と秀紀という男女が、お互いの本当の性別を隠しながらメールの交換を通じて親しくなってゆく……、という物語です。

メールの上では、千晶はアキヒトという男性秀紀はキリコという女性としてふるまい、日々の些細な出来事や仕事の愚痴を報告しあっていたふたり。しかし、お互いに代役を立ててオフラインでデートを決行した日、その場に秀紀に片思いをしている同僚が来て事実をばらしてしまったことで、ふたりの嘘は白日の下に晒されてしまいます。

そこで恋が終わるのか──と思いきや、ふたりはその場で真摯に謝り合い、さらには秀紀が数日後、アキヒト(千晶)にこんなメールを送るのです。

アキヒトさん、キリコです。
わたしはキリコではないし、アキヒトがアキヒトでないことは、
おたがいにわかってしまいましたね。
長いあいだ女性の振りをして、アキヒトをだましていたこと、
すみませんでした。謝ります。
でも、わたしはアキヒトを利用しようとも、欲望の道具(なんて硬い言葉!)にしようとも思わなかった。ただアキヒトという素敵な人と
メッセージを交換できるだけで、十分に報われていたのです。
もう直接会うことがかなわなくてもいいです。
ねじれた関係だけど、ネットのなかで見つけた大切な人を失いたくない。

千晶はこの切実なメールに心を打たれ、ネット上でキリコとアキヒトとしてやりとりを続けることを快諾します。そして、ふたりはもとのように仲良くなり、やがて現実でも互いの男性的な部分・女性的な部分のねじれを個性と認めて、交際するようになりました。

この作品から学べるのは、ネット上で一度ついてしまった嘘をカバーするには、一切の言い訳をせずに率直に謝り続けることが大事、ということ。謝り方が最も重要だというのは、TwitterなどのSNSでの“炎上”に対する対応とまったく同じです(なんらかの問題を起こした人が炎上しているとき、本人が言い訳を述べたり逆ギレをしたせいで、さらに事態が深刻になってしまったケースをみなさんもご覧になったことがあるのではないでしょうか)。
ネット上ではとにかく、嘘をついてしまった場合、事態が大きくならないうちにすぐに謝る、というのが基本なのです。

【ケース3】過激なメッセージを送りたくなったらどうするか? ──『インストール』

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出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4309407587/

SNS上などで気になる相手とのやりとりに熱が入ってきたとき、ちょっとセクシーなメッセージを送りたい──という気持ちが湧いて、送ってよいものか葛藤したことがある方もいるのではないでしょうか。結論から言うと、それは絶対にやめておくべきです。

きちんと交際しているか、お互いに好意を持っていることがはっきりわかっている状態の男女でない限り、相手に送ったちょっとエッチなメッセージは、ほぼ100%、冷めた目で読まれています

たとえば、綿矢りさの長編小説『インストール』の中では、風俗チャットでアルバイトしている高校生・朝子が依頼主に「チャットは順調ですか?」と聞かれた際、こんな風に答えるシーンが描かれています。

「順調。チャットのコツ、分かってきた。あんたが初めに教えてくれたように、やっぱ会話のリズムとか画面に文字を乗せるタイミングとかが一番大事だね。特にチャットセックスする時にはね。長い文を作ろうとせず、きゃっとか、ああんとかそういう短い返事をどれだけテンポ良く画面に乗せるか、そこがミソだな。あと『そんな大きいの入らない』とか『ここ噛んでーっ』なんていうあまりにも本物のセックスに近づきすぎている台詞はウケないということも学んだよ。」

「エッチな内容のやりとりをしてるのに、さすがにここまで冷静な人なんかいないでしょ……。」と思った方もいるかもしれませんが、まず間違いなく、セクシーな内容のメッセージは相手の心をこのくらい“無”にします。
メッセージ上でのじゃれ合いにあまりマジメに応えすぎないことは、「こんな気持ち悪いメッセージ来たんだけど(笑)」と相手の友人たちに自分のメッセージが晒されるリスクを避ける、という意味でも大切です。

【ケース4】急に相手から返信が途絶えたとき、絶対にやってはいけないこととは? ──『妖僧記』

妖僧記
『妖僧記』収録/出典:https://www.amazon.co.jp/dp/448003174X/

ネット上のメッセージのやりとりの中で、なによりも重要なことがあります。それは、もし相手からの返信が急に途絶えた場合は、あまり相手を追いかけすぎず、潔く諦めるべきということ。
文字だけでのやりとりは、きちんと真剣に相手と向き合う人もいる一方で、「気が合わなかったらブロックするか返事をしなければいい」と軽い気持ちでメッセージを送っている人が多いのも事実なのです。

相手からの返信が途絶えたとき、いちばんしてはいけないのが、ストーカーのように何度もメッセージを送り続けることです。
現代と時代背景は大きく異なりますが、泉鏡花の短編小説『妖僧記』の中には、美しい女性のことを一心に慕うあまり、拒否されているにもかかわらず、彼女に一方的に話しかけ続ける蝦蟇法師がまほうし(通称「鼻」)という乞食僧が登場します。

蝦蟇法師はあやまりて、歓心をあがなえりとや思いけむ、悦気満面に満ち溢れて、うな、うな、と笑いつつ、しきりにものを言い懸けたり。
お通はかねて忌嫌える鼻がものいうことなれば、冷然として見も返らず。(中略)鼻はなおもずうずうしく、役にも立たぬことばかり句切もなさで饒舌しゃべり散らす。(中略)老媼はじれてやっきとなり、手にしたる針の尖を鼻の天窓あたまに突立てぬ。

蝦蟇法師は呆れられ、女性の召使いである老女に針で鼻を刺されるという報復に遭います。しかしそれでも彼は諦めず、最終的にはこの女性の母親の墓の前で亡き母に結婚を請おうとするという恐ろしい行動に出るのです。

日本のストーカー小説の元祖とも言うべきこの作品。蝦蟇法師の行動を「怖い」と笑うことは簡単ですが、人は意中の相手に拒否されたとき、冷静さを欠いて普段なら絶対にしないような行為に走りがちです。
たとえ相手から思ったような反応が返ってこなくても、相手のSNSを常に監視し続けたり、相手に会えそうな場所に足を伸ばす──といったストーカー行為には、絶対に踏み切らないようにしましょう。

おわりに

インターネット上でのメッセージのやりとりはいまや、そこから本格的な恋愛や結婚にも発展する可能性が高い、重要なアプローチ法のひとつです。だからこそ、「たかがネット」と思わず、現実での異性とのやりとりと同じかそれ以上に、送るメッセージや態度には気を配るべき。
今回ご紹介した4つの文学作品の登場人物のふるまいも参考に、“ネットの出会い”をぜひ、素敵な恋愛に発展させてください。

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