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【クイズ】自由律俳句・一句を完成させろ!

自由なテーマ・リズムの中で些細な感情の動きや情景を表現することができる「自由律俳句」。今回は、尾崎放哉や河東碧梧桐といった俳人たちが詠んだ名句をクイズ形式でご紹介します! あなたは何問正解できるでしょうか?

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突然ですが、まずは次の一句を読んでみてください。

足のうら洗へば白くなる(尾崎放哉)

「そりゃそうだ」「夜中のツイート?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかしこの句をよくよく鑑賞してみると、“足のうら”という、自分が普段なかなか目を向けない体の部位に改めて着目してみたときの、新鮮な驚きが伝わってきませんか?
この句を詠んだ人物は、夜、ひと息ついて風呂に入ろうとしたとき、「日に焼けた自分の体にまだこんなに白く美しい部分があったのか」とハッとしたのかもしれないし、あるいは、「足のうらがこんなに白く頼りなく見えるなんて、自分も歳をとったなあ」と考え込んでしまったのかもしれません。

……さまざまな解釈が考えられますが、この句のように、自由なテーマ・リズムの中で些細な感情の動きや情景を表現することができるのが、季語や定型(5/7/5といった文字数の縛り)にとらわれない自由律俳句の魅力です。

今回は、そんな自由律俳句の名句を4つ、クイズ形式でご紹介します。空欄部分に入る言葉を自由な発想で想像しながら、古今東西の名句を鑑賞してみてください!

 
 
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【第1問】

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次の空欄「〇〇」に入る言葉を考え、自由律俳句を完成させよ。

〇〇の日記どうしても五行で足りるのであって

 
 

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答え:正月

正月の日記どうしても五行で足りるのであって(河東碧梧桐)

 
【解説】
碧梧桐句集
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4003116623

夏休みの絵日記の宿題で、どうしても書くことがない日が出てきてしまって困った……、という経験を、誰しもしたことがあるのではないでしょうか。
正月と言えば、親戚一同が集まって毎年賑やかに楽しむという人もいる一方で、誰にも会わず、“五行で足りる”ほどの出来事しか起きないという人も、少なからずいらっしゃることでしょう。河東碧梧桐かわひがしへきごとうのこの自由律俳句は、そんなさみしさ、物足りなさを自虐的に詠んだ一句です。

この句の作者である河東碧梧桐は、俳人・正岡子規の弟子として定型俳句を学んだのち、従来の5/7/5のリズムにとらわれない新傾向俳句を明治の世に広め、新傾向俳句をさらに発展させた自由律俳句誕生への道を切り拓いた人物。
碧梧桐のほかの代表句には、

火燵の上の履歴書の四五通

弟を裏切る兄それが私である師走

など、静かなさみしさが際立つ句が多く見られます。

【第2問】

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次の空欄「〇〇〇〇〇〇」に入る言葉を考え、自由律俳句を完成させよ。

〇〇〇〇〇〇空の方が町だよ

 
 

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答え:花火があがる

花火があがる空の方が町だよ(尾崎放哉)

 
【解説】
尾崎放哉句集
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4480424180

この空欄を埋めろと言われて、皆さんはどんな言葉を想像したでしょうか。もしかすると、「町」という言葉の都会的なイメージから、「ビルが並ぶ空」とか、「飛行機が飛ぶ空」といったフレーズを入れてみた方もいらっしゃるかもしれません。

この一句を詠んだのは、冒頭の“足のうら洗へば白くなる”という自由律俳句の作者と同じ、俳人の尾崎放哉おざきほうさい。放哉は明治の世に生まれ、東京帝国大学から保険会社に就職……、というエリート街道をひた走っていたにも関わらず、俳句との出会いをきっかけにそれまでの生活をすべて捨ててしまったという大胆な人物です。

放哉の句からは、一切の人付き合いを放棄してしまった彼だからこそ書けたであろう、自然の中に人間がひとりでいることの力強さや心細さが感じられます。
「花火があがる空の方が町だよ」という一句からも、町の方にかすかに見える花火を山奥から眺めているような、えも言われぬ喜びと少しのさみしさが感じられはしないでしょうか。

【第3問】

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次の空欄「〇〇」に入る言葉を考え、自由律俳句を完成させよ。

降り始めた雨が夜の〇〇

 
 

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答え:心音

降り始めた雨が夜の心音(住宅顕信)

 
【解説】
住宅顕信句集
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4093874182

一読して胸を打たれるような一句です。この句を詠んだのは、1961年生まれの俳人・住宅顕信すみたくけんしん。彼は20代のときに白血病を発病し25歳で夭折した俳人で、自由律俳句の創作期間は、晩年のわずか3年あまりでした。しかし、いまでも老若男女に根強いファンを持つカリスマ的な俳人です。
顕信の作品には、「降り始めた雨が夜の心音」のほかにも、

レントゲンに淋しい胸のうちのぞかれた

夜が淋しくて誰かが笑いはじめた

など、闘病生活の心もとなさを詠んだ句が多く見られます。「淋しい」という直接的な表現は一見陳腐なようにも思えますが、彼が詠む俳句の中では、非常に切実な気持ちの発露のように感じられます。

【第4問】

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次の空欄「〇〇〇」に入る言葉を考え、自由律俳句を完成させよ。

〇〇〇をそこまでしか食べないのか

 
 

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答え:手羽先

手羽先をそこまでしか食べないのか(せきしろ)

 
【解説】
カキフライがないなら
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4344420934

手羽先やスイカのような齧る必要のある食べ物を人と食べるとき、「意外と大胆に残すんだな」「あ、そこまで食べるんだな」といった印象を相手に密かに抱くことは“あるある”ではないでしょうか。せきしろのこの一句は、そんな日常の中のワンシーンの驚き・面白さを詠んでいます。

“俳句”と聞くと明治・大正期のもの……というイメージが強い方も少なくないかもしれませんが、現代にも自由律俳句を詠む俳人は数多く存在します。
現代的な自由律俳句を鑑賞してみたいという方には、芸人・小説家の又吉直樹とコラムニストのせきしろが共著で発表した『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』の2冊が入門編としておすすめ。

座った分だけ高くなる空(せきしろ)

せえので潜った耳鳴りがした(又吉直樹)

といったふたりの自由律俳句は、一見ごく当たり前の出来事を描写しているようでいて、日常の中に不意に訪れる詩のような瞬間の美しさ、ユニークさを逃さずにとらえています。

合わせて読みたい:せきしろが語る、「自由律俳句」入門

おわりに

自由律俳句クイズ、みなさんは何問正解できたでしょうか?
複数の俳人の作品を鑑賞していると、一句の中で徹底的にさみしさを表現する人やクスッと笑えるような表現を使う人など、自由律俳句という枠組みの中にもさまざまなスタイルがあることがお分かりいただけるのではないか、と思います。

このクイズをきっかけに気になる俳人が見つかったら、ぜひ新旧の自由律俳句の句集にも、手を伸ばしてみてください。

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